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「は〜〜おなかすいた」
「あんたなに食べる?」
「カツカレーかカツ丼」
「カツはマストなのかよ」
「肉食べないと死ぬ」
「んなわけあるか」

野薔薇とダべりながら食堂に入ると、そこには先客がいた。二年の先輩が揃ってご飯を食べていたのだ。パンダ先輩に手を振られてペコリと頭を下げた。野薔薇も同じように頭を下げていた。食券を買いにその場を立ち去ろうとすると、「ツナマヨ!」と名前を呼ばれた。狗巻先輩が自分の隣の椅子を引いて、トントンとその場を叩いていた。


「ご一緒していいんですか?」
「しゃけ」
「野薔薇もいい?」
「別にいいけど」

そうして、わたしはカツカレーを野薔薇はサンドイッチを受け取って、二年の先輩の元へ向かった。なんで呼ばれたのか分からないわたしは、狗巻先輩の隣へ。野薔薇は真希先輩の隣に座った。


「どうしたんですか?狗巻先輩」
「なまえ、知ってるか」
「なにをです?」
「死んだ一年の亡霊が出るらしい」

真希さんがわたしと野薔薇を呼んだ理由を告げた。真希さんが言葉にオブラートを着せないのは毎回のこと。びっくりして食べていたカツカレーのスプーンを落としてしまう。その音が予想外に大きかったものだから、その場に居たみんなの視線がわたしに集中した。


「高菜?」
「知りません知りません、初耳です」
「事務の人間が見たらしいんだよ、赤いフードの制服姿の男子」
「あぁ、虎杖っぽいね」


野薔薇が興味津々に口を挟んだ。オカルトが苦手な人間はここにはいないだろう。なにしろ全員呪術師なのだから。だが、今回の話はまた別だ。悠仁は生きているのだから。と言っても、ここで安易にそれを暴露することはできない。事情を知っているのは、五条先生とわたし、それと五条先生が信頼する数人だけ。この場は適当に話を聞いて適当にやり過ごすしかない。


「まぁただの見間違いが五条悟のいたずらでしょう?」

そういうと納得したように、みんな「ありえる」と声を出した。五条悟は人の死をそんな風に茶化す人間ではない。けれども、それが絶対とは言い切れないのもまた事実。五条悟という人間はどこまで言っても五条悟なのだ。少し冷めたカツカレーのカツを口に入れ、咀嚼しながら自分自身も納得してしまった。