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一年生組で任務の反省会をすることになった。そこで、長い映像を見るならコーラとポテチが欲しいと言ったのは悠仁だった。それなら、と野薔薇が「チョコが欲しい」といい、わたしが「梅昆布が欲しい」と言い、恵は無言だった。そこでじゃんけんをして、買い出し係を決めたのだが、不幸なことにわたしと恵が負けてしまった。

「いってらっしゃーい」と笑顔の野薔薇と悠仁に見送られて、少しだけ恨めしく思った。多分恵も同じ気持ちだったと思う。ていうか、恵なにも欲しい物言ってなかったのになんで巻き込まれてんだろう、可哀そうに。



「なまえに聞こうと思ってたことあんだけど」
「なに?」
「宿儺のこと好きって、付き合いたいとかそういうのなのか?」
「ゲスいな、恵。宿儺様って呼べ」
「なんでだよ」

ぺしん、と後頭部を叩かれる。好きって言うより、愛してるの部類だから、恋人になりたいわけじゃないんだ。嫁になりたいんだよ、わたしは。言っても絶対分かってもらえないだろうから言わないけど。恵に愛が分かるとも思えないし。


「今、すげぇ俺のことバカだと思ったろ」
「べっつにー」
「好きっつーから、そういう付き合いたいってことだと思うだろうが」
「や、別に付き合いたくないわけじゃないよ。全然抱いて欲しいし」
「いや、それ中身虎杖だろ」
「だよね、でも抱いて欲しい」
「やっぱ頭おかしいわ」
「恋愛なんてそんなもんだよ。恵もそうなるよ」
「ならねぇよ」
「なれよ」


街まで続く長い長い階段を二人笑いあいながら歩く。恵がちょっと楽しそうにしてるから、わたしもちょっと嬉しくなった。むっつりすけべだと思ってたけど、意外にただの男子なのかもしれない。部屋にエロ本とか隠してるタイプのただの思春期男子なのかもしれない。かわいいなぁ、恵は。タメだけど。


「ならないなら、恵はどんな風に人を好きになるの?」
「や、わからん」
「じゃあやっぱり私みたいになるかもしれないじゃん」
「それはない」
「なったら全力で笑ってあげるね」
「ならねぇから安心しろ」

ケラケラと笑いながらだと買い出しも楽しいね。と思った、ある秋の日の出来事だった。