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「なまえ〜〜助けなさいよ〜〜〜」

今日も今日とてパンダ先輩と受け身の特訓をしている野薔薇が振り回されながら叫んでいた。準備体操をしながらそれを眺めていたけれど、狗巻先輩が参戦してそれはそれは子供がお父さんに遊んで貰っているかのようで楽しそうに見えた(だから止めなかった)

準備体操を終えて、パンダ先輩たちの元へ向かう。「わたしもやってください!」と言えば、狗巻先輩を含めたみんなが何言ってんだみたいな表情でわたしを見た。


「重そうだからやだとかそういう話ですか…」
「違う違う。さっきの見ててやって欲しいっておかしいだろ」
「しゃけ」
「代わってもらえるならなんでもいいわ、私」


ぜぇぜぇしている野薔薇を見て、ちょっと怯んだ。遠くで見てるだけならすごく楽しそうに見えたんだけど、もしかしてこれ早まった?????


「なまえがんばれ〜」
「しゃけ」
「いくぞ〜」


三者三様の反応をされて、わたしはパンダ先輩と組み手を始める。小さいころから五条家の一員として鍛えられてきたため肉弾戦が苦手なわけではない。しかし、それは一般?社会においての話。自分より一年も先に高専に入学して、任務をこなしている先輩にとってみれば赤子の手を捻るのと同じようなもの。わたしはあっという間にパンダ先輩の術中にハマり,先ほどの野薔薇と同じように手を掴まれブンブンと振り回される。

瞬間、過去の記憶が蘇った。

わたしがまだ小学生になるかならないかの頃、五条悟に「メリーゴーランド好き?」と聞かれて「すき」と答えた時に同じことをされた。周りの景色が綺麗とか、楽しいなんて思う余裕なんかなくて、あったのはそう、ひどい吐き気と眩暈だったことを。


「まってまって、むりむりむり」
「普段より多く回しております〜」
「吉本かよ!」
「残念!外れだよ〜〜」


笑いながらわたしを回すパンダ先輩は止まらない。見える景色はあの頃と変わらずやっぱり綺麗とは思えなかった。ほんと、そろそろ、ほんきでむり。ってなったところで、パンダ先輩がぽい、とわたしを空中に放り投げた。狗巻先輩がわたしをキャッチしようと落下点あたりにいるのが見える。

死ぬ前に、もう一回宿儺に会いたかった。

そんな思いが頭を巡った。最中、わたしの目に映ったのは五条悟だった。ナイスキャッチといいたくなるほど優しく空中でわたしを受け止めて、「まだメリーゴーランド好きなの?」と問いかける。


「なんで覚えてるの」
「忘れるわけないでしょ、介抱したの誰だと思ってんの」
「…わたしは忘れてたよ」

もうさっさと下ろしてくれればいいのに、わたしはいつまでも五条悟の腕の中だ。不本意。でも、懐かしさも同時に感じた。本当は知ってる。五条悟の優しさも、わたしをずっと守ってくれてることも。ただ、それを安易に受け入れることはできない。

わたしはあまのじゃくだから。