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「野薔薇、日曜日忙しい?」
「急にどうしたのよ。髪のメンテ入れてるけどそれ以外予定ないけど」
「わたしも夏服買いに行きたいから見繕って欲しくて」


そう告げるとなぜか野薔薇はガッツポーズをして、わたしの手を取った。喜んでもらえるのは嬉しいけど、ここまで喜ばれると逆に不気味だ。


「一回なまえのことマネキンにしたかったのよね」
「なんで?」
「なまえさ、可愛いって自覚ある?見た目であんたに勝てる人間は早々いないわよ」
「かわいいとか初めて言われた…」
「うっわ、今あんたのこと初めて殴りたくなったわ」


さっきまでの喜びようから一変、野薔薇は不機嫌を顔に被せてわたしを見た。わたしは自分の顔が嫌いだ。特にこの髪と目が。五条悟を思い出すから。


「あんた自信なさすぎなのよ」
「野薔薇は自信しかないよね」
「言うわね」
「ごめんごめん」
「もっと自信持って生きていいのよ、なまえは」


そう言った野薔薇は片手でわたしの頬を鷲掴みにした。行動と言葉が合ってないような気がするんですが…。「のふぁらいふぁい」と動かない口で精いっぱいの言葉を口にすると、フッと笑って野薔薇は手を放してくれた。


「荷物持ちが必要ね」
「…え?」
「五条家の財力ならデパコス買い放題」
「待って待って何の話」
「どうせならとことん可愛くしてやる」


あ、これわたし選択肢間違えたなって思った時にはもう遅かった。野薔薇はスマホを片手に、ブランド物の化粧品を検索していて、「このカラーに合う服だと、あそことあそこ」と脳内散歩に行ってしまっている。終いには誰かに電話をかけ始めた。自分が言い出したことなのになぜか居心地が悪い。


「あ、もしもし虎杖?」
「日曜暇よね」
「あんたの都合なんか知らん、買い物付き合え」
「なんのためのフィジカルだよ」

まるで脅しのような言葉が聞こえてくる。約一分後、電話を終えた野薔薇は満足そうに「荷物持ちゲットー!」と嬉しそうだった。


「あ、勘違いしないでよ。私は自分の意志でなまえと買い物に行くし、虎杖もなまえのために協力したいって言ってる。だから誰かに申し訳ないとか思ったら許さないから」
「野薔薇かっこいい」
「当たり前だろ。その辺の男どもには負けないわ。真希さんにはちょっと負けるけどね」


最後の一言が本当に野薔薇らしくて、わたしはやっぱり野薔薇が大好きだと思った。ずっとずっと高専卒業しても、一緒に居たいなぁ。そのためにはわたしも強くならなきゃ。野薔薇に背中を預けてもらえるくらい、強く。