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実家から連絡が来た。
五条家からの紹介で見合いをしろと言う話だった。五条悟には話を通してあるので、土日には任務が入らないようになっていると。なんでとかどうしてとか思ったところで我が家は五条の分家。逆らうことなどできない。たくさん子供を産んで、有能な遺伝子を残したいというのが親類の本音だった。私には有能な遺伝子なんかないって知ってるくせにね。


「まだ16にもなってないのに」

見上げた空は雲に覆われていた。ミンミンと鳴くセミの声がうっとおしくて、耳を塞いでしまいたいほどだった。なんのために自分が高専に居るのか、わからなくなった。別に嫁ぐだけなら実家で普通に学校に通ってもよかったなぁ。彼氏は作れないけど、友達と学校帰りに買い物行ったりカラオケ行ったりできたかもしれない。

そんなわたしの心の内を映すように雨が降り始めた。初めはポツリポツリと頬に当たる程度だった雨はあっという間にザァザァと音を立てて地面に水たまりを作る。


「なまえ、何してるの」

一番会いたくない人が現れた。その目にわたしはどう映ってるの?自分以外の人間なんてどうでもいいんでしょう?六眼を持たないわたしには、あなたのことなんて何一つ分からない。


「濡れてるよ」
「あんたの傘だけはいらない。雨に濡れるほうがまし」
「何言ってんの。風邪ひくでしょ」
「他人のことなんかどうでもいいくせに心配するのやめてよ」
「心配してるから傘入れって言ってるんでしょうが」
「だから心配されたくないって言ってんの」
「じゃあ傘だけでも入ってよ、僕は別に濡れないし」


飄々と言ってのけるその神経が信じられない。誰のせいでこんな気持ちになってると思ってるの。そんな力があるくせに夏油さんすら救えなかったくせに。


「ねぇ、わたしはどうしたらいいの、先生でしょ。教えてよ」
「なんのこと言ってんの?」
「しらばっくれないで、見合いの話だよ」
「は?見合い?誰が?」
「わたしだよ!」


会話がかみ合わないのはいつものことだけど、ここまで噛みあわないって本当に基本的に合わないんだなぁ。服が体に張り付いて気持ち悪い。この人と同じ空気を吸うのも気持ち悪い。全部全部気持ち悪い。


「めんどくせぇな、風邪ひくからって言ってんだろ」
「めんどくさいのはお互い様でしょ」
「あーもう黙れ」


トン、わたしの額を五条悟が指で突いた。
そこから先は覚えてない。次に目が覚めたのは硝子さんの居る保健室だった。まるで駄々っ子みたいに五条悟に八つ当たりしたことを恥じた。そして、今ここに五条悟が居ないことにホッとした。わたしはいつ大人になれるのかな。本当に大人になれるのかな。