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高専にも普通の授業はある。
絵を描いたり、歌を歌ったりはしないけれど、家庭科というか生きるための術を学ぶ時間がある。簡単に言えば、裁縫とか、調理実習とか、アイロンがけとかの実技だ。今日は調理実習で餃子を作る日だった。調理室はアイランドキッチンがひとつ真ん中に置いてある配置だ。キッチンの上に材料が置かれていて、一年4人はエプロンと三角巾姿で並ぶ。こんなこと言ったらいけないんだろうけど、本当に全員エプロンが死ぬほど似合わない。制服の上から着てるからかな。そういうことにしておこう。


黒板に書かれた手順は硝子さんが書いたものだった。今日の調理実習を楽しみにしていた五条悟は任務で遠方に行っているらしい。ただ、硝子さんも硝子さんで五条悟の同期であるだけあって、「出来たら呼びに来い」と言って調理室を後にしてしまった。

まずは全員で食材を刻む。恵が「釘崎のみじん切りになってなくないか?」と毒を吐いたり、「フードプロセッサー持ってきなさいよ!」と叫んだりしたけど、何とか問題なく食材は刻み終わった。
次に材料と調味料とを混ぜ合わせる。ここは悠仁が全部やった。というか、悠仁が手慣れていて、その指示にわたしたちが従った。本当にうまくいっていると思った。

次に餃子を包む。ここが問題だった。
恵は「食えればいいだろ」と形もサイズも申し分ないのに、ひだを作らず包むから、「水餃子かよ」とどこからか突っ込みが入る。野薔薇は餃子つつみ器を使って包んでいた。手が汚れるのと匂いがつくのが嫌らしい。わたしは初めてだったけど、悠仁が教えてくれたからそれなりに出来ていると思う。


「ていうか虎杖うまくない?」
「じーちゃんと二人だったから包むのは俺の仕事だったの」
「俺も津美紀と二人だったけど包むのも焼くのも全部津美紀がやってたぞ」
「伏黒は最低」
「じゃあさ、悠仁は他の料理も作れるの?」
「焼いたり炒めたり煮たりするだけの簡単なのだったら作れるかな」


俺の仕事だった、というだけあって、悠仁の手際は本当に良かった。わたしがひとつ包む間に二つ包んでいたし、形もひだの数も同じだった。宿儺の指食べちゃうくらいだからおおざっぱだと思ってたのに意外と丁寧なんだなぁって感心する。


最後に、悠仁がフライパンを二つ並べて餃子を焼いた。出来た餃子は不在の五条悟の分も含めて全部で50個。見た目も味も焼き色も完璧。さすが悠仁と全員が絶賛した。


「でもこんなに手間がかかるならわたしは餃子は冷凍の買うわ」
「俺も」
「ならわたしは餃子が食べたくなったら悠仁に作ってもらお」
「なまえ、それはずるいわよ」
「俺、いくらでも作るよ。みんなで食う飯うまいし」
「なら俺はお前が生きられる未来作る」


恵がポエムみたいなこと言って、悠仁が「伏黒お前いい奴だな」って笑った。でもね、悠仁。みんな同じ気持ちだよ。全員で揃って毎年餃子食べよう。誰一人欠けることなく、ずっと。