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「なんでわたしにばっかりしつこく怒るんですか!」

五条悟に職員室に呼び出されたかと思えば、報告書のダメ出しをされた。書いてあることにいちいち「これはどういうこと?」「なにがあったか説明して」の連続。もうわたしだって恵ほどではないけど、任務こなしてるし、最終的に呪霊を祓えてるんだから問題なくない?と五条悟の机をバンと叩いたのが数秒前。

目隠しを外した五条悟はわたしを見て、「それ本気で言ってる?」とまだ怒る気らしい。ただでさえ二人きりなのに耐えられない、その上10分以上もどうでもいいことを問いただされたら誰でもキレると思う。悠仁はキレないかな、でも野薔薇はキレるな。確実に。


「あのね、僕はなまえの両親からなまえのこと頼まれてるわけよ」
「わたしは頼んでませんけど?」
「なまえに怪我のひとつでもさせてみなよ?責任取ってお嫁さんに〜とかなるけどいいの?」
「それは全力で逃げます」
「でしょ?だからそうならないためにこうして話してるのね」
「ケガするなって無理な話じゃないですか、恵にも同じこと言ってくださいよ」


わたしより恵のほうが呪術師としての等級は上であり、任される呪霊の等級も同時に高くなる。恵が怪我をしているのはいつものことで、だからわたしはここ最近、恵が単独の任務にいくだけで心配になってる。つまり、わたしより怪我の多い恵が放置されていてわたしがこんな風に拘束されるのが納得いかない。だからもう帰りたい。ここから一刻も早く。



「恵は男の子でしょ」
「男女差別ですか?」
「違う違う、なまえは弱いから心配してんの」
「ナチュラルに煽ってんの?」
「悔しいなら強くなれよ」


五条悟のこういうところがやっぱり好きじゃない。でも、最強だからこそ口に出しても恥ずかしくないその言葉にわたしは返す言葉がなかった。


「純粋に五条悟が心配だからって言うなら気を付けようって思えるのに」
「なに言ってんの、そんなの大前提だよ。恵も悠仁も野薔薇も、僕は誰一人怪我なんかさせたくないよ」
「嘘くさい」
「なまえのことは特にね、真綿に包んで閉じ込めておきたいくらいには大事だよ」
「絶対嘘」
「どうやったら信じてくれんの?」


わたしの手を取った五条悟が目を伏せる。今まで散々御託並べておきながら今更そんなこと言われても、「はいそうですか」とはなれない。だって、わたしはそんな素直な人間じゃないから。でも、わたしに触れる手の指先は冷たくて、きっと多分心配してくれてるのは本当だと思う。


「……気を付けます」
「今度怪我したらその次から僕との任務しかないと思っておいてね」
「絶対嫌なんで必死で自分守ります」


なんだかんだ言って、見た目だけじゃなくて性格まで似てるのかもしれないと思った。