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「わ、ごめん!」

宿儺が急に消えてしまったから、わたしは悠仁に腰を抱かれてる状況になってしまった。瞬時に状況を把握した悠仁は、すぐにわたしから離れた。もう少しだけ宿儺の余韻を感じていたかったわたしはがっかりして、ちょっとホッとした。


「宿儺となんかあった?」
「…聞きたい?」
「いや、ごめん、見てた」
「…だよね」


悠仁と宿儺の魂?意識?は共有されてるんだろうなって思ってたから、その答え合わせが出来たような気がした。元々、宿儺のほうからは悠仁と同じものが見えているみたいだし、想定してなかったわけじゃない。けど、はっきり見てたと言われてしまうと気恥ずかしい。自分が「女」であったところを見られたわけだから。


「俺、バカだからさ。きっとすぐ忘れるって。気にすんな」
「悠仁…」
「それに可愛いなまえ見れてちょっと役得?みたいなとこあるし」
「もう〜〜」

分かってるよ、それが悠仁の優しさだってこと。わたしが悠仁に申し訳ないって思ってることを気にしないように言ってくれてるんだよね。本当にいい奴。


「そういえば、悠仁さ、頭の中で宿儺が話してるって言ってたよね?何の話してるの?」
「なんだろ?あれはなんだ?とか平成の日本がおもしろいらしい」
「わたしのことは?」
「なまえのこと?」
「なにか言ってたりしないかなぁって」


聞くための言葉を間違えなかっただろうか。悠仁は「う〜ん」と考え込んでしまった。その微妙な間はよくない想像をするのには、充分な時間だった。もしかしたら、うざいとかうっとおしいとか身の程を知れとか言ってるのかもしれない。だって、相手は宿儺だもん。しばらく考え込んだ悠仁は「知ってても言わない」と言った。


「え、なんで?」
「俺だって命惜しいし」
「どういう意味?」
「悪いようには言ってないよ?」
「そうじゃなくて」
「宿儺の気持ちは言わない」


そう言って、そっぽわたしから視線を外す悠仁。宿儺がわたしのことどう思ってたのは知りたかったけど、悠仁を困らせたかったわけじゃないの。わたしに背中を見せてしまった悠仁に「ごめんね」と告げる。わたしは悠仁を困らせてばっかりだ。