02

「ツナマヨ!」

名前を呼ばれると同時に肩を叩かれて振り返る。ほっぺにつんと人差し指が刺さって、悪戯をした人物と目が合った。相手は一応先輩だし、笑顔を見せて対応する。わたしも狗巻先輩も由緒正しきナンタラ仲間だしね。


「狗巻先輩、どうしたんですか」
「高菜!高菜!」
「狗巻先輩も呼ばれてるの?」
「しゃけ」
「めんどくさいけど仕方ないよね」


狗巻先輩の話は、今週末に開かれる五条家の当主の誕生日会の話だった。五条先生とわたしはもちろん強制参加。狗巻先輩にも声が掛かっていることを考えると、そこそこの規模で行われるらしい。


「狗巻先輩は何着ていくんですか?」
「すじこ」
「スーツかぁ。わたしは振袖用意されてるんだって」
「しゃけ」
「似合わないよ。だってこの髪の色と目の色だよ」
「おかかおかか」
「先輩ありがとう」

五条悟と同じこの髪の色と目の色が嫌いだ。狗巻先輩もそれを分かってる。それでも、わたしの髪を一筋掬って、キレイと言って貰えるのに悪い気はしない。純粋にうれしい。


「狗巻先輩の髪もきれいですよね」
「おかか」
「どこかで血が繋がってるんだなぁって感じません?」
「しゃけ」
「ですよねぇ」
「明太子」
「え、狗巻先輩も和装にするんですか?」
「しゃけ」

ぽん、とわたしの頭に手を置いて、狗巻先輩はにこりと微笑んだ。「明太子?」と狗巻先輩が首を傾けた。和装ならわたしの隣にいても変じゃないでしょってことらしい。無遠慮な親類から守ってくれるそうだ。


「狗巻先輩、ありがとう」
「おかか」

優しい優しい狗巻先輩。
どうかあなたは平和な世界で生きていて。