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伏黒の話を聞いて、本人に恋愛感情を自覚させてしまった。余計なお節介をしてしまったことを絶妙に後悔した。ただどうしても耐えられなかった。イライラしている伏黒とそれを伺う虎杖となまえに。正直めんどくさい。やるなら他所でやってくれ。それが本音。建前はそれなりに仲良くしててほしい。

余計なお節介を焼いてしまった責任を感じた。別に責任を取るつもりもないけど、なまえが伏黒をどう思ってるかくらいの探りは入れてもいいかもって思えた。だから、学校帰りのなまえを連れ立って街に向かった。買い物をして、カフェで一息ついたところで話を切り出す。


「なまえさ、彼氏いないわよね」
「すく…」
「宿儺って言ったら今はぶっ飛ばす」
「……いません」
「高専の中でいいなって思う人はいないわけ?」
「憂太?」
「その人よく知らないから他で」


眉間に皺を寄せて考え始めるなまえに、質問を間違えたと思った。手元のミルクティーを一口飲んで「居ないかな」となまえは息を吐く。宿儺が好きだから?とも考えたけど、あれは憧れの域を出てないだろうと思っていた。ストローでグラスに残ったフラペチーノを啜る。これ以上どう突っ込んでいったらいいのか考えながら。


「そういえば、狗巻先輩とはお互い相手が見つからなかったら結婚しようねって話はしたかなぁ」
「初耳なんだけど」
「言ってなかったっけ?」
「聞いてないわよ」


友達なのに知らされていなかった事実に私も苛立ちを覚えた。そんな時は甘いものを食べよう。店員を呼んで、チョコチップのたくさん入ったスコーンを注文した。なまえも道連れにするために「あんたも何か食べたら?」とメニューを手渡す。それを受け取って紅茶のスコーンを頼むなまえ。注文したものが届くまで、もう少しなまえのこと聞きたい。本当はなまえが言いたくない五条との話も。でも、それより今は手を出してしまった話を聞こう。


「狗巻先輩のことは分かった。虎杖とか伏黒はどうなのよ」
「えーないない」
「もっとちゃんと考えて」
「野薔薇はどうなの?」
「ねぇな」
「でしょー?」


そう言ってなまえは笑う。けど違うでしょ。私となまえとじゃ。伏黒のなまえに対する態度も、一緒に居る時間も。虎杖はよくわかんないけど。誤魔化されてるわけじゃないから、もうこれ以上は突っ込めない。ごめん、伏黒。あとはがんばれ。


「野薔薇のスコーン一口ちょうだい」
「あんたのもくれるなら」
「あげるあげる。シェアしよ」


まだまだガキなんだな。なまえは。伏黒も。
まぁ、私より先になまえに彼氏が出来たら寂しいから、もう少し4人での微妙な関係でいいんじゃないかなって思った。私もまだまだガキだから。