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「なまえ〜!」

任務帰り、甘いものが食べたいからとコンビニで降ろして貰った。店に入ると、カゴを持った悠仁が現れた。みんな考えることは同じらしい。「何買うの?」とカゴの中を覗き込む。コーラとポテチ。


「もしかして部屋で映画見る?」
「正解〜」
「じゃあ私も一緒に見る〜」
「ホラーでも?」
「ホラーでも!」


ニカっと悠仁が歯を見せて笑って、カゴの中に私の分のコーラを入れる。OKのサイン。「チョコも買っていい?」と声を掛け、了承を得たところでチョコの棚に向かう。新作のチョコが出てて、嬉しくなってそれを選んだ。


「なまえ〜俺ファ〇チキも食いたい」
「わたしはアイス」
「アイスか。アイスもいーな」

そんな話をして、二人アイス売り場へ移動した。ここでも惹かれるのはやっぱり新作アイスで。けど、夏が近い今の時期、新作アイスは一つじゃない。わたしがどれにしようって迷っていると、隣で悠仁も腕を組んでどれにするか迷ってた。こういう時シンクロするのっていつも悠仁なんだよね。気が合うっていうか、思考回路が一緒って言うか。



「どれで迷ってる?」
「ピスタチオとクー〇ッシュの新作」
「一緒〜〜!じゃあシェアしよ?」
「ん〜保留!」


二つの種類のアイスを一つずつ取り出したわたし、珍しく難しい顔をしてシェアに乗り気じゃない悠仁。それなら、と二種類を2つずつカゴの中に放り込んだ。余ったら後から食べればいいし、恵や野薔薇呼んでもいいと思ったから。


「そういえば、野薔薇と恵は呼ばないの?」
「釘崎はホラー見ないだろ」
「恵は?」
「伏黒は、…あー、あれだ」
「なに?」
「多分、忙しい」

悠仁にしては歯切れの悪い返事。多分なんて悠仁の口から聞いたの初めてな気がする。いつもはっきりきっぱり言い切るのに。どこからその自信が来るんだろうってくらいに。アイスのシェアの件といい、今日の悠仁はちょっとおかしい。違和感では片付かないほどの違和感。勘違いじゃない。鈍感なわたしですらそう思う。


「悠仁、大丈夫?」
「あ、あぁ。だいじょーぶ」

またニカっと歯を見せて悠仁は笑って見せた。この時のわたしは何があったか、全然知らなかったんだ。悠仁と恵に何かあったことなんて。そして、その原因が自分にあるなんて。