Episode.4


「バカだろ、お前」

開口一番、私を怒鳴ったのはもう一人のお兄ちゃん代わりのドラケンくん。たかちゃんに服を着せて追い出したあと、私もシャワーを浴びてすぐに外を出た。二人でセックスをしたベッドを見るのが辛かったから。


「ドラケンくんにバカって言われたくない」
「そもそも三ツ谷に捨てられる前提なのはなんでだよ」
「……たかちゃんも人間だもの」
「意味わかんねぇ」

呼び出したカフェで頼んだカフェオレが空腹の胃に沁みる。テーブルの上のストローの袋を折りたたみながら、久しぶりに説教されて胃のあたりがきゅっとした。ドラケンくんが怒るのも無理はない。だって、ドラケンくんはエマちゃんに好きって言えなくて、そのままエマちゃん失ってて。そんなドラケンくんから見たら、私は本当にバカに見えるんだろう。


「捨てられる理由なんてたくさんあるじゃん」
「例えばー?」
「私の身体に飽きるとか…」
「オレの知り合いにテクニック教えてもらうか?」
「他にもだらしないとか、他に好きな人が出来るとか」
「くだらねぇ」
「そもそもただの勢いだったかもしれないし」


ぐだぐだと言い訳ばかり並べてるな、と自分でもそう思った。自分でそう思うくらいなんだから、ドラケンくんにとっては本当に怒りしか沸かなかったんだろう。ドラケンくんは、ドン、とカフェのテーブルに脚を乗せて、怒りを表面に出した。グラグラと衝撃で二つのグラスが揺れる。


「お前、あんま三ツ谷ナメんなよ?」
「はぁ?」
「お前は三ツ谷がどんだけ誠実で努力家かしらねぇわけねぇだろ?」
「知ってるよ、だからこそ、呆れられたら距離置かれるって思うんだよ」


私の言葉に、ドラケンくんがはぁ〜〜〜と盛大なため息を吐いた。私が言ってることはそんなにおかしいことだろうか。結論ありきで考えていることは間違っているのだろうか。どんどん分からなくなっていく。

「好きにしろよ」とドラケンくんが言った。「好きにするよ」と言って私はカフェオレを口に含む。また胃がキリと痛んだ。