涼子の荷物は少なかった。
物持ちが良いというか、物欲がないというか。
「欲しい物あったら買ってもいいよ」
とはいつも言ってたけれど、
「ありがとう、欲しくなったら言うね」
と言ってニコニコしてただけだった。
アクセサリーの類も全く持ってなかった。
この先、欲しくなる時があるかもしれないと思い、アクセサリーケースを買ってプレゼントしていたが、二人で撮った写真が入っているだけだった。
涼子の持ち物を整理し、大事に保管しておこうと思ってそのケースを手に取った。
中には写真と、当時流行り始めたプリクラが山のように詰め込まれてた。
どの写真にもキラキラした笑顔で写っており、写真の中の涼子は本当に楽しそうだ。
見ていると思わず微笑んでしまうくらいに。
アクセサリーケースの中には小さな引き出しがついていた。
なんだか後ろめたいような気もしたが、その小さな引き出しを開けてみると、一枚の紙が入っていた。
その紙には
『男の子だったら陽助、女の子だったら香織』
と書かれていた。
『太陽のように明るく、みんなの希望となれるように。そして、誰かを助けてあげられるようなそんな優しい男の子』
『優しい香りを周りの人に感じてもらえるような、そんな女らしい子。織姫のようにロマンスのある出会いができますように。私のように!』
陽助に香織か。いい名前考えてたんだな、あいつ。
写真の何枚かを病室に持っていこうと思い、とびきりの笑顔をしているものを選んで手荷物に加えた。
この頃になると、精神状態も落ち着き、徐々に普通の生活を意識して送るようになっていた。
毎日病院に通って、手を握ってその日あったことを話す。
そんな日課が自分に加わっただけで、後は普通に仕事もこなした。
そろそろタンポポの家にも顔を出そうかと思っていた、そんなある日。
タンポポの家の井川先生から電話がかかってきた。
「岸田くん、見てもらいたいものがあるから、暇ができたら寄ってもらえる?」
寄るつもりの気でいたので、ちょうどいいと思い、すぐ行く旨の返事を返した。
そこで、俺は、涼子のさらなる想いを知ることになる。
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