セーラ・ローラ「フルール!」
必死に走って逃げていると、フルールと再会することが出来た
セーラ「良かった……フルールもローラも無事で……私、2人がいなくなったらって思ったら……ううっ」
ローラ「私も……死んじゃうかと思った……セーラが守ってくれなかったら……うわぁんっ」
フルールと会えたことで緊張の糸が切れたのか、目から大粒の涙を流し泣きじゃくる

フルール「よかった、お二人が生きていて。」
2人をしっかりと抱きしめて、頭を撫でる。
「ここは戦場です。私の迷路の中ですので、有利なのはこちらです。私と一緒にいてください。私が、あなた方を守ります。」
真剣な眼差しだ。 彼は何があっても負けることはないだろう。

2人はフルールの眼差しを見てしっかりと頷く。
大丈夫。フルールならきっと私たちを守ってくれる。
不思議な安心感が2人にはあった。



柊斗「…ごめん、なさい…」

消えたそれを見て、ポツリと呟く、手にさっきまで自分がやった事の感触が残る…
彼女の方へ歩いて行く、彼の顔はパーティーの時のあの笑顔とは比べ物にならないくらい酷く歪んでいた。彼女の言葉が聞こえてないのか、何も言わず
そのまま彼女の頭をゆっくりゆっくり撫でる

柊斗「…痛い、思いさせた…ごめん、ごめんな…」

まるで子供をあやすかのように 永遠と謝罪の言葉を並べる

菜々瀬「怖い……怖いの……!ねぇ……なんで……なんでなの……!あの時……どうして……」

目の下に溜まった水分が一気に溢れ出るのを、ただ止められずにいた。軟弱な女としての醜態を晒し、先程の勇気ある素人の姿はそこになかった。
もはや理性の鎖の拘束からは外れ、本能が代行して身体を動かしている。その本能は理性より記憶の引き出しから重要データを引き出すのに長けているらしく、柊斗の存在を差し置いて、別の人物を思い浮かべているようだった。
頭を撫でられるという行為がトリガーとなったようである。

柊斗「よしよし…そうだよなぁ…怖かったなぁ…もう大丈夫だぞ、もう怖いものは無いからなぁ…大丈夫、大丈夫、よく頑張ったなぁ。いい子、いい子…」

優しく彼女を抱きしめ背中をさすり、落ち着いた声色で話す、かつて、ばあちゃんにしてもらった時のように、言葉を並べる、時折背中をポンポンして、頭を撫でる、ばあちゃんにしてもらって1番嬉しかった事を彼女にも同じように
彼自身も頭の中はぐちゃぐちゃだが、今は、自分のことよりも目の前の泣いている女の子を安心させなくてはという使命感にかられていた

菜々瀬「ぅぅ……ごめん、なさい、取り乱して……」

声にならない悲痛を嘆く。どうして此処に来たのか、どうしてこんな目に遭っているのか、もどかしい程にわからないが、自分にこのように優しくしてくれた人のことを、私は確かに忘れていない。
抱きしめる身体が柊斗であることを忘れていたわけではないが、全面に押し出された絶望を拭えず、処理に困っていた。ついにその必死な励ましに気づいた菜々瀬は、自ら涙を拭って、柊斗の背中をぎゅっと掴む。

@乾拭き
柊斗「初めての体験だもんなぁ…怖かったよなぁ…今まで、よく頑張ったなぁ…お前はいい子だ…」

少し落ち着いた様子の彼女を見て優しく微笑む、手の震えもいつの間にか止まり、撫でたり、さすったりという行為は止めなかった。
背中の感覚に再び笑みがこぼれる。
“守れた”
それが彼にとって今は1番嬉しいことだった。

菜々瀬「ごめん……ごめんね……私が、弱かったから……」

そのようなことを何遍も呟くのは、未だ回想と現実とを精神が行き来しているからなのだろう。

「わたしが……わたしが、あの時……に……」

柊斗とも、名前の思い出せぬ誰かとも付かぬ、優しく抱きしめる温もりの正体を掴めず、とうとう困憊した身体から力が抜け、終いには瞼が落ちていき、彼の背中を握りしめる手の力が弱まっていく。
その睡魔は急激な速力を以て、一人の少女の意識を奪った。抱擁の中に、全身の体重を預け、寝息を立ててしまうのである。

柊斗「…君は、悪くないよ…強い子、だったよ…」

腕の中で眠ってしまった彼女を座ったまま壁に寄りかかるようにして、自分の上着をかけ、隣に座る。

英志「…………っと、こうしてる場合じゃねぇ。他に敵はいないか!?」
部屋を見渡し、周囲を見渡すと、座っている柊斗を見かけた。
英志「おい!大丈夫か!?」
拳銃を持ったまま傍に駆け寄り、状況を確認する。

柊斗「あ…さっきの…人…
あ、こちらの彼女が敵にお腹を1発殴られてしまったようで…でも、そこまで酷くはなさそうです。一応後詳しく見てもらった方がいいと思いますが…」

虚ろな目をしていだが、不意に聞こえる声に顔を上げる。
そして其の姿を視認すると、急いで彼女の事を伝える

英志「……」
菜々瀬の方を一瞥して、辺りを見回す。散弾の弾痕の残ったテーブル、落ちたか何かの衝撃で中折機構が開いたのか、使用済みの薬莢が2つ飛び出した狩猟用の散弾銃。英志の発砲した分とは別に、微妙に硝煙の匂いのする空気。
それは、彼が女性を守るために武器を手に取ったことを確かに証明していた。
英志「…………」
それを見た後に柊斗の顔を見て、しゃがみこんでにっと笑う。
英志「……やるね。ナイス」
そう言って左手で柊斗の肩をポン、と軽く叩いたあと、親指を立てて「グッジョブ」の意を表明した。

柊斗「……!」

目を見開く
その笑顔が、その言葉が、どれほど嬉しかっただろう
彼女に怪我をさせてしまった自己嫌悪から、少し、解放された気がした
また、体が震える、男といえど所詮一般人
俯き、大きく息を吐く

「怖かった…ホントに…死ぬかと思った…」

震える声で、掠れそうな声でボソボソというものの、少し経つと顔を上げ彼女を見て微笑み、笑顔で同じように親指を立てた

英志「よく頑張ったな。……他の参加者の無事を確認してくるから、もう少し待ってられるか?」

柊斗「はい、大丈夫です。
ありがとうございます」

英志はそれを聞いて頷くと、他の参加者の無事を確認するため、もし無事でなかったら一刻も早く助けるために歩き出した。



朝日が昇り、屋敷の中でざわざわと行われていた戦闘の気配も無い。そうか、終わったのだ。
フルール「セーラ様、ローラ様。どうやら戦いは終わったようです。屋敷が大変なことになっているでしょう。そして、その後にまた戦ってくださった皆様をねぎらうパーティをしましょう。」
能力解除、そしてフルールは先に廊下へ走り出す。血、死体を2人に見せるわけにはいかない。その処理のために走り出したのだ。

刹『 小僧もええ子見つけれたらええなぁ…? 』

( 皆が感動の再会,屋敷の復旧作業に追われている頃 彼女は一足先に屋敷の出口付近,所謂正面玄関とやらで皆の様子をうんうんッと頷きながら眺めていた. 腰にはやや大きめの瓢箪が下げられており,彼女が歩みによって揺れるとちゃぷんッと 中の酒が良い響きをしているのが分かる. 貰うものは貰った と言ったところだろう. いやはや,それにしてもぱーてぃとは良いものだ,無償で酒や美味い食物を食べられるとは 何処の慈善団体の所業だ と言いたい.彼女はそんな言葉知らないのだけれど. とはいえ,何もしていない彼女がこれ以上長居するのはあまり宜しく無いだろう. 小僧ともはぐれてしまったし,他に宛がある訳でもない.探せばどこかに居るだろうが,見たくも無いものを態々見に行くのは 徒労というものだ.

『また会えたらええなぁ~ 』

と,別れの変わりにそんな事を呟いた. もう会うことなんて,早々無いだろうに. 数秒間屋敷を眺め,その後くるりと踵を返すと また新たな新天地へ向け歩き始めた. 清々しい朝だった,昨日まで隣にいた彼は居ないけれど,あの燦々たる賞賛の輪には居ないけれど,彼女はきッとあの光景を忘れない,あの温もりを忘れない. )

カイン「.........」
どうやらひと段落ついたようだった。彼は目立った事は何もしてはいないが、少し漏れたゾンビの頭をショットガンで撃ち抜いただけでもどっと疲れたような気がした。それはそうと、はぐれてしまった彼女は大丈夫だろうかとパーティ会場内を見回したが彼女はいない。妙に心配になった彼は、やや不安そうな表情をしながら会場内の人々に行方を尋ねたが帰ってきた答えは“早々に帰っていった”である。彼女はどちらかというとこの展開を面白がっていた節があったはずなのに、自分にすら何も言わずに会場を出ていった。ならばと答えにたどり着くのは簡単だった。自分といたのは余りにも退屈だったのだろう。いや、飽きられた、のかもしれない。力なく壁に寄りかかりながら、まだ無事だったテーブルの上のワインを見れば──あぁ、今日なら酔いつぶれてもいいかもしれない。そう思った。


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