幽玄「......面白そうだな...これ」
天から落ちてきたであろうその招待状を広いあげれば、中身を見て薄く笑い。そのまま進路を変えて会場へと足を進めて行った

フヨウ「すぅ…すぅ…」
2人が釣りをしていた湖のほとりで寝ていた。
刹に嫌な思いをさせてしまったことを悔やんでいるうちに寝てしまったのだ

幽玄「......」
そんな彼女の寝顔を覗き込んでおり。なんだってこんな所に寝ているのだろうか。少しの親切心なのか、彼女の腰あたりを足で小突いてみる

フヨウ(びくっ)
腰に小さな衝撃を感じ、起きる
「おや、寝てしまってましたか…」

幽玄「こんな所で寝るな。正直邪魔だ。」
素直になれない性格らしく、親切心から起こしたのではなく邪魔だから、という理由で起こした事にしている。

フヨウ「おっと…それは申し訳ない…」
ゆっくり起き上がり、ここは湖のほとりであることを再認識する

フヨウ「でもここ、ほとんど人が通るところではありませんよ?親切なんですね。」
と微笑して言葉を続ける

幽玄「う、うるさい...ッ......そういえば、お前も見たか?」
思ったよりも、というか相当鋭い相手にどもりながらもあたりにも散らばる紙片を指差しては、話をそらす事を試みたりしてみる

フヨウ「え…?わっなんですか、このたくさんの紙は…」
招待状を手に取り、読む。
読んでいる時、違和感に気づく

フヨウ「この辺の空白…少し違和感がありませんか…?」
見てみてください、という感じに紙を見るように促す

幽玄「......面倒な手法を使うな...恐らく炙り出しだ。俺の国でも昔は使ってたらしい」
ちょうど持っていたライターでその紙を炙れば、浮き上がってきた文字に対し“この枚数を...ご苦労な事だ”なんて言いながらも内容に目を通す。そしてついでにフヨウの分も炙ってやっては

ありがとうございます、と炙ってもらった紙を受け取り読む
フヨウ「これは…なかなか重大なことに巻き込まれてしまっているのかも知れませんね…」

幽玄「......まぁ、でも...面白そうじゃないか。いかない手はない。」
ぽい、と紙を投げ捨てては場所はもう把握しているのでそのままフヨウをほっぽって歩き始める。

フヨウ「あ…私も」
知ってしまった以上、放っておくのも忍びない。
幽玄について行くことにする

幽玄「......ついてくるならちゃんと付いて来いよ」
背後に続いてきた彼女を見ては、仕方ないと言った感じだ。彼女がどう言った人間かはわからないが、直感的に善寄りなのがわかったために警戒もせず

フヨウ「えぇ…ありがとうございます」
歩幅が違うため少し急ぎ足でしっかりと追いつく

フヨウ「先程は起こしていただきありがとうございました。私はフヨウと申します」

幽玄「...別に良い。目に入っただけだから。」
ぶっきらぼうとも取れる言動を発しながらも、彼女の歩幅に黙って合わせてやる。こんなんでも細かい気くばりくらいはできるのだ

フヨウ「…ふふふ」
やっぱり優しい、と言おうとしたが、先刻のこともあるし、なにより黙って気を使ってくれているのだから言うだけ野暮というものだ。
しかし嬉しさのあまり、つい笑ってしまった

幽玄「......もう少しだな。足がもう動かんなら言え。勝手に消えられても困る」
それなりに歩いたからか、ふと上記を述べる。要約すると、疲れたなら休みたいと言って欲しいそうだ。相変わらずの仏頂面で分かりにくいが彼女はきっとこの調子だとわかるだろう

フヨウ「ふふっお気遣いありがとうございます。じゃあそこの大きい石に腰掛けてもいいですか?」
幽玄の心に気づき、(飛べるにもかかわらず)座って休憩することにした

幽玄「......勝手にしろ」
自分は別にまだ疲れてはいないのか、キョロキョロと周囲を見回しながら多少の警戒をしていて。

フヨウ「ふぅ……そういえば、あなたの名前を聞いていませんね
もしよろしければ、教えていただけませんか?」
疲れている感じを醸し出すためのため息もついた後遠慮がちに聞く。

幽玄「...幽玄だ...。この名は別に覚えなくても良い。」
少し間が空いた後に、ボソボソと返事を返しては。どうやらこんな質問をされるとは思ってなかったらしい。そして“...あんたの名前は?いつまでもお前やあんたでは呼びづらい”と続ける

フヨウ「幽玄さん…ですね。覚えさせていただきます」
発言を全て聞いた上でわざと無視する。

フヨウ「私の名前?先程言いましたよ。歩くのと周囲の警戒に夢中で気づきませんでしたか?」
それほど怒ってはいない。
むしろ面白がっているかのように微笑して言う

幽玄「えぇい、煩い。黙って名乗れ」
勿論彼女の言葉は全て的中しているために、言い返せずそんな事を言い出して。しかしながら名前はしっかり覚えたいらしく名乗れというのも忘れない。

フヨウ「ふふふ。では改めて、私の名前はフヨウ。…そしてあなたには教えておきましょう、私は今は亡き者の霊です。この世界を願った時に霊力の一部は失いましたがね」
恩があるし、この短時間で信頼ができてしまうほどの人物だ。
教えてしまってもいいと、いや、知ってもらいたいと思った。
言い終わってから、姿を一瞬消してみせる。

幽玄「...人間じゃなかったのか...
まぁそんな事どうでもいいが。フヨウ...フヨウか。覚えておいてやろう。」
きっと彼は種族など気にしてないと言いたいらしい。そして相手の名前を口の中で反芻すれば、僅かに口角を上げて上記を言う。彼は無意識なのだろうが、友人など今まで殆ど居なかった彼にはその行為自体が嬉しいのだろう

フヨウ「なんか…嬉しいものですね。友達ができたのはいつぶりなのでしょうか……」
昔を思い出し、少ししんみりしつつ言う。

フヨウ「もうそろそろ行きましょうか。お気遣いありがとうございました!……感謝ばかりですね」
と微笑しつつ言う

幽玄「...軟弱そうな見た目をしているからな...仕方ない事だろう」
上記を述べながらも彼女の元肉手が“行くぞ”といって歩き出す。その足取りは、僅かに先ほどよりも遅く歩いている。彼女が無理をしている可能性も考慮したのだろうか

フヨウ(うーむ…これは飛べる事は内緒にした方がよさそうですね…)
幽玄の前ではなるべく飛ばないでおこうと心に誓うことにする

幽玄「...フヨウ。一つ聞きたいことがある......お前、さっき幽霊と言ったが、宙に浮けるのではないか?」
急に彼がふと立ち止まって。どうやら先ほどの会話をよくよく思い出すと、彼女の飛べる可能性というものに気づいたようで。若干ジト目になりながら聞いてみる

フヨウ「えっ…えっと…」
(勘がいい人多すぎますよ!どう答える方がいいのでしょう…)
失った霊力の1つということにしてもいいっちゃいいが………

フヨウ「えぇ…飛べますよ。すみません、黙っていて。
お気遣いいただいたのがあまりに
久しぶりだったので断りたくなくて…」
しどろもどろになりつつも言う彼に対して…嘘などつきたくないという思いがあったからだ

幽玄「......ならば浮いて移動しろたわけ。まだもう少し歩くぞ」
僅かに苦笑するような気配が、振り向かずともしてはそのまままた歩みを始めた。今度は自身のペースで歩み始めた。

フヨウ「…はーい」
いろいろと諦めた様子で、幽玄と肩が並ぶ程度に浮き移動することにする。

幽玄「......」
チラ、ととなりに浮いている彼女を見てはふと何故幽霊になったのだろうかと思って。彼女には何か現世に強い思いがまだ会ったのだろうか。自分の様にただ目的もなく彷徨っている者と違って。ただそれが良い悪い関係なしにだが

フヨウ「どうかしましたか?」
一瞬の視線に気づき、なにか言いたいこと、もしくは聞きたいことがあるんじゃないかと感づく

幽玄「...何でもない。さっさと行くぞ...」
君は何故成仏できなかったんだい?とは聞けるわけがない。そこんところが、デリケートな部分だって事くらいは彼にもわかったから。別にまだ相手は此方を親しいとは思ってないはずなのだ。流石にそこまで踏み込むのは不味いだろう

フヨウ「貴方にはなに聞かれても別に構いませんよ?」
恩もあるし、なんなら信頼の上での発言だ。
聞かれて困るようなことは何もないはず…

幽玄「......君は何故、幽霊に?」
ここまで言われてかえって言わないのも憚られたらしく、素直にそう質問を試みる。しかしながら言った後になって若干の後悔を感じながら

フヨウ「んー…………………
生きてた時の記憶…無いんですよ
霊となってふらふらしてたのに、なぜか死因も、未練などもわからなかったんですよね…
でも霊体化してるんです。不思議でしょう?」
特に重い話をする様子でもなく、サラっと、微笑混じりに答える

幽玄「不思議...だな。確かに...」
そう言っている合間にも、足を進めながらもホッとする。いや、彼女的にはホッとされては困るところなのだろうが、彼的にはホッとする場面だったのだ。

フヨウ「もう生前のことには興味ないんですよ。前いた世界は退屈してしまいましたが、この世界の管理者さんのおかげで私はこうしてまた友人ができたのですしね。今を楽しみます」
そんなことまであっさりと言う
そうして2人で歩い(?)ている内に

フヨウ「あっ…あれがパーティが行われるという屋敷ですか?」
大きな屋敷が目に入り、尋ねる

幽玄「...変な事を聞いてすまなかったな...」
彼女は思ったより前向きに生きているようだ。自分とは違って。何処か羨ましそうな表情で笑っては“あぁ、多分そうだ”と彼女の問いかけに答える

屋敷の入り口の前あたりまで来たところで言う

フヨウ「貴方にもなにか過去にしがらみがあるのなら、忘れてしまうのも手ですよ。
もちろん簡単じゃない、私は何十年とかかりましたから。
まぁ1つの手段として、ね」

幽玄「...そんなにわかりやすいか?俺の心情は。」
少し困った様な表情をしながら、彼女に問いかける。自分と同じくらいの年齢であろう彼女にこうやって気遣ってもらうのはとてもむず痒い。

フヨウ「わりと読みやすいタイプだとは思いますよ?」
と笑って言う

フヨウ「まぁ過去になにかしらあったのだとしても、無理にまで話してほしいとは思いません」

幽玄「......むぅ」
表情筋を手で押し上げたりしながら、ハァとため息を着けば“一先ず入ろう。パーティの時間はもう少し後だからな”なんて彼女に伝えては

フヨウ「ここにはこの世界の管理者さんがいるのですよね…
私、用があるので管理者さんを探してもいいですか?」
管理者であるローラは、退屈な世界から、この世界へ連れ出してくれた恩人だ。
礼を言わなければと思ったのだ

幽玄「...気をつけるんだぞ?逆に例の噂の奴らが乗り込んできていないとは限らないから」
随分と棘も減った様な言い方でそう伝えては、軽く手を振って彼もまたどこかに歩いて行った


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