フルールはそろそろか…と呟き、セーラ・ローラの元へ歩み寄る。
「そろそろ、お疲れではないですか? 明日もこのパーティの続きができるかもしれませんので、お休みになられるのも良いかな、と。」
優しい声で話しかける。 反感を買わないように、できるだけそおっと。

セーラ「えぇ、もう寝るの?」
ローラ「まだ楽しみたいわ!」
いつもはフルールの言葉に素直な2人が、今日は珍しく不満げな顔をした
今までしたことが無かったパーティーの空気にテンションが上がっているのだろう

フルール「明日、また美味しいご飯を食べましょう?」
フルールにとって、ここから先が本番なのだ。ここで引くわけにはいかない。といつもならば引くところでも負けじと食い下がる。

フルールの真剣な表情に、ムスッとしていた2人も諦めて「はーい」と返事をする
セーラ「また明日も楽しいパーティーしてね?」
ローラ「約束よ?」
そう言って寝室へ向かう

フルール「ええ、ありがとうございます。」
寝室にたどり着くまで、しばしの沈黙。
どれほど長かっただろうか。たった数十秒のはずなのだが、永遠に近いような感覚がした。

「皆様、今夜のパーティに参加していただきありがとうございます。」
再度、挨拶。それはこの大広間全体に響き渡るような声だった。
「皆様、手元に招待状はお持ちでしょうか。そこに記される“意味深な空白”の内容について、皆様はご存知でしょうか。」
招待状を取り出し、空白の部分を指差す。

フヨウ「そろそろ…来るんですね…」
隣にいる幽玄に聞こえるような声で言う

幽玄「...そう、だな。」
気を引き締め直せば、じっとフルールを見つめながら言葉を待っていて。僅かにその表情もこわばっている

柊斗「…やっぱり何かあったんですね…あそこの内容…俺知らないまま来たんだよな…」

やっぱり何かあったのか…と静かに言葉をこぼす

フルール「この噂についてですが、ただの道化師がここらで芸を披露していると言ったものですが、客にこの世界について“必要以上”の情報収集がなされているという事です。小さな単位の世界であるここでは、何かしら悪事を企てることも容易でありますし、そのような人間ですら何かしらの“望み”を持っているのですから、こちらに来ることもあり得ます。彼等が悪である、という確証を得てからで構いません、皆様、どうか彼等が悪であった場合は逃げる、戦うなどのご自身でできる限りの抵抗をなさってください。首を持って来ていただけた方には、私財を以てできる限りのお礼をいたします。どうか、この世界を守るためによろしくお願いいたします。」
深々と頭を下げる。この世界のためならば恥も外聞もない。といった様子である。

フルール「そうして、どうかここの主であるセーラ様・ローラ様のことを守ってください。私も出来る限りの手は尽くしますが。彼女たちはおてんばであられますから、状況を理解せずに動き回る可能性すらございますので。」
頭をあげ、話を続ける。 真剣な眼差しが見て取れるだろう。

刹『・・・? なんか始まるん?』

( 連れの男から離れぱーてぃとやらを満喫しているご様子. )

菜々瀬「よくわからないけど、あの人がディクなんとかって人かな……ちょっとカッコイイかも……?」

話題になっている問題を特に危機とは感じず、単純に音声と一括りにして半ば聞き流してしまう。まだ夢の国の空想に囚われているのである。

ベル「あの〜・・・・・あなたも招待状貰って来た人?」
1人でいるチェリーに対して話をかけてみる
人見知りではないが内気だからかれこれ数分程悩んだ結果
落ち着かない態度のチェリーに声をかける事を決めたようだ

チェリー「ああ、ええそうです。はじめまして」

話しかけられて少しホッとした。声の主の方を振り向いて会釈する。悪意があるようには思えないが、少し影のある雰囲気を感じ取る。さて、どのような人物なのだろうか

ベル「初めまして、昨日ここ・・・・この世界に来たばかりで。貴方は?」
ちゃんと返答がもらえた事がまず嬉しかったのか少し緊張が和らぐ
不思議な雰囲気を感じるなと思いつつ、相手の事を知りたいなとも思っていて

チェリー「私もです…前の世界ではメイドをしていました。チェリーと言います」

名を名乗って思う。自分には、名前とメイドという肩書き以外に紹介するべき自分がない。少し悲しくなった。

夜の帳が降りる。
パーティー会場に集まった人々は、皆この世界に来てしまった人間達との親交を深めていた事だろう。
ここに集まったのは、きっと優しい人間ばかりだ。
だからこそ気付けなかった。
この森の中に、悪意を持った"異物"が紛れ込んでいた事を。

人々の話し声を他所にして。
夜空に、火炎の花々が咲き乱れた。
それは後に、残酷な程に美しい、開戦の合図となる。

窓の外。
四方八方から、音質の悪い無線越しの音声が流れ出す。

ジ、ジー……

『Ladies and gentlemen!
皆さん、パーティーは楽しめていますか?私森の中に住んでおります、ジョン・ドゥと申します。
いやぁ、今日は参加出来なくて申し訳なかったです。お詫びと言ってはなんですが、此方から二つのプレゼントを用意させていただきました。まず一つはこの花火!どうです、綺麗でしょう?皆さんもきっと気に入ってくれたことでしょう!』

『そして忘れちゃいけない本日のメイン、もう一つのプレゼントは────
【スリル満点!命を賭けた肝試しゲ〜ム!】に御座います!』

ぱりーん!がらがらがっしゃん!
愉快な効果音と供に、屋敷のあちこちの窓ガラスが割られ、その中から十幾名もの死霊達が押し寄せる。
どう考えたって、レクリエーションに見せかけた分かりやすい襲撃。
黒い噂とは、この事を指していたのだろうか

ベル「・・・・前の世界は私はあまり良く覚えて無くって・・・私はベル・ニーナって言うの」
友達なんてもの遠い世界の存在と思っていたがきっとこんな感じなのかなっと思うとなんだか嬉しく感じた

すると外から聞こえる嫌な放送が耳に入る。
招待状で既に知っていたのもあってかたったそれだけで柔らかいふにゃっとした雰囲気だった目元が虚ろに近い何かに代わる
ベル「あぁ・・・・言ってたもの本当に来たんですか・・・・」と忌々し気に口にした

チェリー「そうですね…」

ベルの雰囲気が変わると、自分もスっと冷静になる。闖入者…この場を戦場にはしたくないが、致し方ないのだろう。
…それに、こういうのは得意だ。

菜々瀬「ッ!?」

突如、衝撃。
エンターテイメントと呼ぶには派手すぎる、度を超えた何か。
どこのディスコだって、程度は違えど窓をぶち割るような危険行為には至らなかった。ガラスという危険物についてまるでわかっていないような振る舞いである。
一般人はただ身震いも忘れるほどの驚愕に襲われ、硬直するのみであった。それしか許されていないかの如く、身体がいうことを聞かなくなっていた。

フルール「!?」
自らやって来るとは…と驚きの表情を見せる。しかし、軽い、軽すぎる。
まだ何かがある……老いぼれの勘がそう叫んでいる。
「皆さん、戦えますか!この部屋が絶対防衛ラインです。ここから先にはどうか奴らが動き回ることのないよう、戦える人は戦ってください!!!」
壁をドン、と叩く。それまで壁だったものは隠していた複数の猟銃が立てかけられた武器庫になっていた。 一挺の銃に手をかけ、自ら前に出る。

英志「……っ!」
すぐさま拳銃の薬室に弾を込めて撃てる状態にし、ホルスターに収める。能力でAKMを取り出してボルトを引くと、英志は走り出した。

柊斗「え、え?!…これ、ほんもの…?」

何が起きている?目の前にいるものは?これは本物?
いきなり過ぎる展開に頭が追いつかない、経験するはずのないことが今目の前で起こっている。自分に戦闘が務まるかと言えば無理だ

なら自分に待つものは…?

久々に味わった感覚に体が固まる

フヨウ「私、2人を見てきます!」
透明化してセーラ、ローラの
もとへ行く



ガラスの割れる音で2人は目を開けた
セーラ「……なんの音……?」
ローラ「ガラスの割れた音がしたけど……」
セーラ「パーティー会場の方からよね……?」
2人は少し怯えながら、手を繋いでパーティー会場へ向かう


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