『イヤーハハハ!愉快愉快!通信機器越しに貴方達の表情がよー……く!見えてますよ!いやもう満足しましたが、アッハッハ!2番、7番、11番、乱射してもっと騒ぎなさい!いやあスリルスリル!ハハハ!』
その音声を流し続ける無線を手に抱えたメイド服の女と、明らかに浮浪者の身なりをした男、西部劇に出て来るようなカウボーイが、それぞれ威嚇するように銃を天井に向けて放つ。早く落ち着かせねば、その弾丸が参加者の胸を貫くかもしれない。

幽玄「...結局こうなるのか」
結局勘は当たってしまったようだ。自前の腰に掛けてあった刀を抜いては周囲の動く屍を見据えて。そのまま絶の力を纏わせれば、ちょんと刀の先でゾンビに触れてはそのままうごかぬ死体になるだろう。この技は相手の能力で作り出したものを全て断つことができる。だから、能力を受けて動いていたゾンビは動かなくなるのだ

英志はまず非戦闘員の安全確保を行う。テーブルを蹴り倒して壁際へと追いやる。
英志「戦えないメンバーはこのテーブルの後ろへ!」
それだけ大声で叫んでから再度走り出した。

柊斗「…!」

男(英志)の声で我に返る
そうだ自分に出来ることは逃げることしか出来ない
近くで固まっている菜々瀬の手を引きテーブルの後ろへ行く

菜々瀬「ぁ……ぁ……」

今見ているのが夢であるならば、すぐ覚めてほしいと思った。これは悪夢であって、訳のわからないカオスである。チェリーが手紙を読み上げる声が脳内で再生され、やっと事情を少々理解できた。そうだ、このまま私は殺されて、そこで目が覚め、いつものベッド、散乱したバイトチラシや衣服、スナック菓子の袋が視界に映るのである。きっとそうであろう、そうでなきゃおかしいと、現実逃避を試みる。誰かから掴まれ引かれるままに、身体は引きずられ動いていく

デイビット「おいおい、パーティの余興にしてはまだまだあんなもの、弱すぎるなぁ!」
♪双頭の鷲の旗の元に
軽快な音楽とともにさらに援軍、3人の男達が割れたガラス窓から現れる。
「余興には、道化を呼べ。俺の軍団の決め事だったんだぜ、これが。」
鉄球ジャグリング。その球はいつ彼等の元へ投げ飛ばされるか分かったものではない。

花火が聞こえ窓が割れたかと思えば、いよいよ己も動く時だろうと、屋敷の扉の前まで来て。
圷「よっ…こいせッ!!」
という声と共に、回し蹴りで屋敷の扉を乱雑に開く。そしてパーティーらしく飾られた屋敷内を見ては、“わぁ、すごいすごい!”と真紅の瞳を輝かせて。次に大勢の人を視界に捉えれば、己の身体がゾワゾワっと疼く。
圷「人が、いっぱい…血もいっぱいッ!」
声を荒らげながら、今にも狂喜乱舞しそうなほど嬉しげにそう述べる。さて、先ずは誰と乱癡気騒ぎをして遊ぼうか。自分の相手をしてくれそうな人物を、キョロキョロと探す。

寒蝉「邪魔すんでぇ!」

高い位置にある窓が割れ、糸目の大男が飛び込んでくる。テーブルの上に着地すると盛大にテーブルが砕ける。埃の舞う中、悠々と立ち上がって辺りを見回す。
さて、どいつと戦おうか…
銃を構えた英志を見て狙いを決める。飛び道具相手は得意だ。テーブルの破片を掴み、投げる。それは空中で自分の方に跳ね返り、更に自分に当たる前にもう一度跳ね返る。2度空中で跳ね返ったそれは異様に加速し砲弾のような勢いで英志に迫る。

ローラ「何か騒がしいわね」
セーラ「私たちに黙ってまたパーティーを始めたんじゃないかしら!フルール、今日はいつもより怖い顔してたもの、私たちを早く寝かせたかったのよ!」
ローラ「こっそり楽しんでるなら私たちも混ぜてもらわなきゃ!」
そう言って走り出す

フヨウ「セーラさん、ローラさん、起きてしまいましたか」
2人のいるところにたどり着き、言った

セーラ「おばけさん!私たちに黙ってパーティーの続きなんてずるいわ!」
ローラ「私たちも混ぜてもらうの!」
フヨウの横をすり抜けパーティー会場へ

フヨウ「お二人共!待ってください!今は危険です!」
止められる気はしないが、できるかぎり真剣に呼びかける

幽玄「...悪趣味なもんだよ」
ただの肉塊と化したそれを見ながらも、乗り込んできたものたちの顔をそれぞれを見据える。どうしようか。個人的には大いにテーブルの後ろに行きたいところだが、どう見ても戦闘員は足りていないように見行けられる。

ベル「すぐ終わらせよう?」
とだけ告げるとテーブル近くで相手の様子を見やる・・・・が致命的な事を思い出す

今この場で花園を出してしまえば他の人達の足元を悪くさせてしまわないかと

チェリー「ええ…幸か不幸か、私はこのような場で戦うのは得意です」

周囲を皮膚感覚と嗅覚で敏感に把握し、自分の戦闘技術を思い出す。
その戦闘技術は戦場ではあまり役に立たない。森でも、岩場でも、街中でも、リングの中でもその真価は発揮されない。広い屋敷、邸宅…召使いを抱えるような大きな屋敷の中で戦う事を極めた格闘技術。戦場の兵士も、森の戦闘部族も、街中のストリートファイターも、砂漠のガンマンも、このフィールドを十全に活かすことに関してその右に出る事は出来ない。この非常に限られた屋敷という場を最大限使いこなして主を守る、恐らく唯一の武術…「給仕式格闘術」の遣い手である彼女は戦いの空気に身を委ねる

ベル「怪我しないように・・・・怪我したら言ってね」
心配そうな声でそう告げる。
自信ありげにチェリーは言うがそれでもやはり心配なのは消せない。
こんな時、何も動けない自分に嫌気が少しさした

セーラ「───!?」
ローラ「え………」
2人は寝る前とは全く違う景色に言葉を失った
ただ手を強く握り合い、一歩も動けずにいる

ピタリ。
電池が切れたかのように、その死霊は動きを止め、崩れ落ちて黒い煙に包まれる。
次の瞬間、それはただの肉塊と化していた。

が、それすらも策略の一つ。
即ち死霊術師の本当の狙いは────

『あーっはっは!そう!実は!これを含めて!ドッキリ大成……功……?

……んん?んんん?ちょ、ちょっと待ってくれ。君ら誰だ?』

デイビット「わからねーでやったのか?オメェ。」
鉄球を一つをひとつかろうじでみつけ、投げつける。屋敷に大きな穴が開いた。
「お前はただの愉快犯だろうが、俺たちのパーティ計画を台無しにしやがって。去ね!」
残りのゾンビに向け、残った鉄球を投げつけると、デイビットの服がバキバキに破れるくらいまで彼の筋肉は肥大化し、手には人に向けて作られたものではないとわかる大きな斧を手にし、大広間へ降りる。

フルール「セーラ様、ローラ様!今はいけません。どうか下がっていてください!」
2人の元へ駆け寄り、大声で言った。

セーラ「フ、フルール!」
ローラ「一体何が起こって──」
青ざめた2人はそれ以上の言葉を紡げなかった

フヨウ「フルールさん!2人を隠してください!
今となってはどこが安全なのかもわかりませんが…」

フルール「いえ、少し2人には泳いでもらいます。 彼女たちこそがこの世界の鍵。敵の狙いを定めます。」
フヨウに対し、耳打ちで言った。 心が痛むが仕方がないのだ。

フヨウ「…ッ!危険を承知の上ですね….!? 信用しますよ!?」
透明化して宙に浮き、見守っておくことにする

『……ははーん、どうやら本物の"黒い噂"が来ちゃったか。
入って来たのは三人。彼らを倒せば、君達のパーティーは真にフィナーレを迎えると言うわけだ。
イヤハヤ、皆さんお騒がせして悪かったね。開場のスピーチはこれでお終い。私は予備の死霊達と共に、外で参加者の方々が泣き喚いてる様を見学させて貰うよ。
……その屋敷から出て来たらブッ殺__』
ザ、ザ、ザーッ……ガガガガガ。
死霊達は殆ど全滅し、メイド服の女が持っていた無線は破壊された。

デイビット「そこの娘どもが屋敷の主か。俺がお前達を潰してやるぜ!」
セーラ・ローラに向かい、歩みを進める。大きな斧が持ち上げられた。

セーラ「ひっ……!?」
ローラ「な、なに……!?」
デイビットが歩みを進める度に、セーラとローラも少しずつ後ずさる

フルール「させません!!!!」
猟銃をデイビットの胸のあたりに狙いを定めて放つ。クリーンヒット。
…だが、この筋肉漢に獣用の銃弾など、効くはずもなかった。

フヨウ「あぁもう!ダメ元です!」
デイビットの背後に透明化したまま忍び寄り、その背中に手を伸ばす

デイビット「なんダァ、おめえ」
肥大化した筋肉は減少の一途を辿る…はずだった。 しかし、“彼には効いていない” そう、これは異能ではなく彼自身の才能の一つであるのだ。 言わば、フヨウはデイビットの背中を触っているだけなのだ。 彼は後ろも振り返らずに斧を持たぬ左手でパンチをお見舞いする。

フヨウ(避けられないッ…)
速すぎる拳、避けることは不可能だと悟る

幽玄「...俺が相手だ」
鞘をその辺に投げ捨てれば、少し小柄な体格ながらも巨体を見せつけるデイビットとセーラ達の合間に立ちふさがる。これ以上は進ませない。そんな気迫のある瞳で彼を見据える

フルール「少しの時間でいいです。どうかお願いします。」
セーラ・ローラに逃げてください!と叫ぶ。
そのあと、自分も走り出した。

ローラ「セーラ、逃げよ!」
セーラ「う、うんっ!」
フルールの声にハッとし、2人は廊下を走った。


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