メルト「……」
ミーナがベッドにその身を預けたと判断すると、メルトは彼女の視界に映らないと見て、瞼を軽く落とし、恍惚とした表情になる。
メルト「……あぁ、そうだ、丁度良いおとぎ話があるのだけれど」
ほとんど私の自己満足だから、聞いても聞かなくても大丈夫だけれど……とミーナに付け加える。
ミーナ「おとぎばなし……?」
下がってくる瞼に身を任せそうになりながらも、面白い話には興味があって。
ベッドに横になったまま一言聞き返した。
メルト「ふふ、じゃあ始めるわね」
優しく微笑みかけて、口を開く。
メルト「昔々、ある雄大な草原の傍に立つお屋敷に、小さな女の子が住んでいました」
目をつぶって、静かに、あやすような口調で話す。然し決して、ミーナを寝かせようとはしていないようだ。
ミーナ「……」
メルトの話を静かに聞いている。
しかし、さっき食べた食事の影響と、ベッドの安らぎ、メルトの優しい声のせいで瞼がゆっくりと降りていってははっとしたように目を開けるのを繰り返している。
メルト「……そこにもう一人、同じくらいの年の女の子がやってきました。二人は、日が暮れるまで草原で遊ぶことを毎日繰り返しました。あっという間に打ち解けて、仲良くなったのです」
話し始めてから約三分が経過している。
口調には緩急をつけ、ギリギリのところでミーナを絶対に眠りの世界に落とすまいとする。
次の次の段落までに寝かせなければ良い。
ミーナも睡魔と戦いながら、最後まで話を聞こうと目をこすって頑張っている。
メルト「……ある日、屋敷でお泊まり会をしようということになりました。女の子は約束通り夜に屋敷の扉を叩きます。部屋にあげると、招いてくれた御礼だと言って、香水のようなものを手渡してきました。早速使ってみて欲しい、と言います」
そこまで語ると、突然、メルトの表情が豹変する。
達観したように虚空を見つめては、頬を微かに赤く染め、まるで過去を懐かしむかのように。
メルト「女の子は言われた通り、その香水を肌に付けました。しかし、どこか様子が変です。暑い、と言って、ふらふらとして、もたれかかってきます」
ミーナ「こうすい……?」
突然出てきた単語が気になり、不思議そうに呟く。
何か特別な雰囲気をその言葉から感じた。
メルト「そう、こうすい。匂いのついたお水なのだけれど……ね」
興味を示したミーナに、隙を与えず話を続ける。今は全容やら詳細やらを理解されなくても良いのだ。狙いは他にある。
メルト「……女の子はもたれかかられたところを、逆に押し返して、ベッドに倒しました」
その一文を、残酷と思うほどに冷淡な口調で、ミーナに聞かせる。髄まで響くくらい、凄みを効かせて。
ミーナ「……!」
今までと全く違う口調に体が震えた。
閉じかけていた瞼がぱっと開く。
メルト「女の子は、弱っている彼女に馬乗りになると、無理矢理に服を脱がせて、その綺麗な薄橙色をした全身を露わにします」
清々とした表情で、普通に考えればとんでもないことをどんどん口から発していく。
メルト「まずは凹んだへそに右人差し指を入れると、くりくりとこね回します」
ミーナ「メ、メルちゃん……?」
起き上がり、不安そうな表情でメルトを見つめる。
メルト「それから、次は耳に指を突っ込むと、強めにグリグリと押し込みます。女の子は、困ったように眉を垂らしながら、これまで味わったことのない快感に、必死に抵抗しようと喘ぎます」
ミーナの表情を見ながら、最早その正体を隠そうとはしていないらしい。いつになく歪んだ口角を、女児の目に入れることを厭わない。
ミーナ「やっ……!」
段々と恐怖を覚え、じりじりと後ずさる。
メルト「……ふふっ、そんなに怖がらなくても良いのよ」
媚薬が最大に効いてくる時間より少し早いが、ここまで怯えられては仕方がない。“ご馳走”を前にして、とうとうメルトは我慢できなくなった。
メルト「……お話の続きは、これからシてあげるわ」
眼にハートマークを浮かべて、怪しい赤を輝かせると、ミーナがどこへも逃れられないように、胴の部分をしっかりと持つ。
ミーナ「メ、メルちゃんっ!!やだぁ!!」
胴を掴まれ身動きが取れなくなると、涙を浮かべながら首を振って嫌がる。
メルト「大丈夫よ、絶対痛くしない。だから、約束して。今から言うおまじないを、私に続いて言って欲しいの」
取り繕いようがない段階まで来たところで、また一瞬だけ優しい顔で微笑む。これでも本気でミーナの安全を考えているらしい。
メルト「……不思議なおまじないなの。これを唱えれば、気持ち良くなって、とても楽になれるわ」
ミーナ「……ほんと?」
優しい顔に戻ったメルトを見て、少し残る不安感を抑えながらそう尋ねる。
ミーナ「うん、おまじない言う」
メルトのことを怖がってはいたが信頼はしているようで、彼女の約束を守ろうと頷いた。
メルト「……良い子」
胴を持っていたところを、片手だけ外して、ポンポンと頭を撫でる。
メルト「──わたしは、王ナポリにちかって、このけいやくにどういします」
ミーナにわかりやすく、なるべく堅苦しい言葉を使わないようにする。というのも、本来の目的を誤魔化すという意図を持っているからであるが。
メルト「はい!いち、に」
有無を言わさず、復唱を求める。その顔に邪心はなく、ニッコリとしている。
ミーナ「わっ、わたしは、王ナポリにちかってこのけいやくにどういしますっ!」
メルトに復唱を求められ、(なんの呪文なんだろ)と一瞬疑問に思いながらもそのまま復唱する。
メルト「……よし、これでもう大丈夫」
契約完了。
何も知らないミーナに申し訳ないと思いつつ、一息つくと、もう一度胴を優しく掴んで、ベッドで体勢を整える。
メルト「安心して身を任せなさい」
お姉ちゃんが解してあげるから、と笑いかける。
ミーナ「う、うん……(?)」
何するんだろ、と思いながらもメルトの微笑みに安心し身を任せる。
メルト「ふふっ……」
背中から翼を全開にすると、今まで抑えていた欲求も相まって、プルプルと震わせる。
まずはミーナの身体を、右翼と左翼を重ね合わせて、対峙した状態で優しく包み込む。
翼の先端でミーナの背中を押すと、自分の胸に彼女の顔を押し付ける。
ミーナ「ふぇ!?メ、メルちゃん!?」
メルトの背中に人間には無い物が見え驚く一方、思考の隅で納得する自分もいた。
ミーナ「んにゃっ!?」
突然柔らかい感触が顔面に伝わり驚きと困惑で固まる。
メルト「大丈夫、大丈夫」
空いた両手でミーナの髪を梳かすような動作をしながら、徐々に翼による抱擁を強め、身体をくっつける。
そうすると、ベッドに倒れ込み、ミーナを道連れにする。支えている状態なので、衝撃はメルトが全て吸収している。
メルト「お姉さんと、いっぱい楽しいこと……しよ?」
彼女の額に接吻。
ミーナ「んっ……」
キスをされ、今まで味わったことの無い感覚にドキドキが止まらない。
メルト「……」
呼吸が乱れ始めようとするが、ミーナを心配させぬよう、あくまで平静を保とうとする。
自分の胸の辺りにあるミーナの小柄な頭を軽く押さえ、顔を接近させる。
メルト「……かぷっ」
彼女の耳を覆うように口に含むと、ぺろっとひと舐め。
ミーナ「んんっ」
身体中がぞわりとした。
その感覚が快楽からくるものだとはまだ分かっていない。
メルト「……」
慣れていない反応をするミーナに激しい興奮を覚えながら、心の内に収める。
それを咥えたまま口から息を漏らすと、穴へ少量の唾液を注ぐ。サキュバスという種族である以上、全ての体液には媚薬成分が含まれる。
ミーナ「にゃっ……」
耳に何かが注がれるのがわかると、しばらくしてその効果が現れる。
ミーナ「メルちゃ……なんか、体がヘン、だよぉ……」
顔を赤らめ息を荒くしながらメルトにそう告げる。
メルト「これを、気持ちいいって言うのよ」
そう言って少々強引に唇同士を触れさせると、再び耳にかぶりつき、同じ量の唾液を注ぐ。口の中で泡立てたものである。
メルト「はぁ……はぁ……」
そうすると、次はその状態のまま、ぐちゅぐちゅと穴の中を舌で弄り始める。
ミーナ「気持ちいい……?うん、気持ちいい……っ!」
メルトに言われた言葉を口の中で反芻する。
今の状態のことをそう言うのだと理解出来るとメルトにそう告げた。
ミーナ「んんっ、にゃああ……っ」
耳の中を弄られ、つい声が漏れてしまう。