「おれ、死んだんだ。さっき。」 「・・・はあ?」 その顔からはどういう感情なのかわからない。 どこかすっきりしているように言う彼は、自分一人だけ心の整理を終えているように見えてすこしだけいらっとした。家に上げるだなんてことをしてしまうくらいだから私の今の判断力には自信がないし自分の中の処理も終えられていないのはわかっているのだけれど、それでも処理しきれないくらいの情報を与えてきているのは彼なのに。 「おれ、・・・死んだはずなんだ。けど、さっきまでなかった足の感覚も、飯を食ってうめえって思う感覚も今はあって・・・まるで生きてるみたいなんだ。どういうことなんだ?」 「死んだのが夢じゃないの。」 「あれが・・・あれが夢・・・いや、それはねェな。」 纏う雰囲気が変わった。 深い、深い悲しみのような、悔やみのような、そんな。さっきうめェって言った顔は太陽みたいな笑顔だったのに、今はまるで外の闇みたいに深くて、暗い。 うーん、よくわからないけれど・・・きっと、何か事情はあるんだろう。 家で何か虐待を受けているとか?なにかトラブルに巻き込まれて、逃げてきたのかもしれない。 「・・・なんか、事情があるのは分かった。」 「悪かったな、飯もありがとう。もう悔いはねえよ、連れてってくれ!帰ることもできねーしよ!」 「分かってないし分からないし、疲れてるからわたしは今正常な判断はできない。けど、あなたは今生きてる。 なにがあったのか知らないけれど、ちゃんと生きてここにいる。私の作ったご飯、おいしいって食べてくれた。 ねえ、提案なんだけど。帰れないなら、うちにいる?」 今日、何度思ったか分からない。今、正常な判断はしていないことは自分でもわかる。 けど、あまりにも嬉しそうにおいしいって言ってくれるから。しかもイケメン。おそらく年下、困ってる。 いつもしんとした室内が、少し暖かくなったような気すらする。人が一人いるだけでこんなにも。 自己満で、きっとこれは、わるいことだ。 でもね、ああ疲れたなって、少しだけ寂しいなって思ったときに、困った帰れない人がいるのなら。一緒にいるのってきっとウィンウィンじゃないかだなんて思うのだけれど。 「・・・それは、この飯をまだ食ってていいってことか?」 「うー…ん。ま、そういうことかな」 「それなら、おれ…もうちょっとここにいてもいいか…いいですか?」 こっちからいいって言ってるのに、返してくるのは律儀というかなんというか。敬語がいまいちちゃんと使えていないのは、きっと彼も戸惑っているんだろう。 スッと立ち上がった彼は、改めて丁寧にこちらに頭を下げる。 「よろしくな・・・っと、お願いします!」