文化祭
本日待ちに待った文化祭である
汚れても良さそうな傷だらけの制服に赤い長袖ジャージを羽織り、下も履く
本日の私は「くそ真面目ヤンキー」らしい
委員長が言っていた
舌打ちの練習してね、と言われたのが一昨日のこと
設定が変わりすぎて驚いている
「じゃぁ皆!今日はよろしくね!!」
円陣を組みながら委員長の言葉に皆で「おー!!」と声を上げる
笑ってはいけない教室in2-Cが始まろうとしていた
***
チャイムが鳴って10分が経過
私は音を立てないように扉を開ける
私服の人達が半分以上教室を閉めている辺り客入りは上々のようだ
私は床と同じ模様になっている布を被りながらゆっくりと自分の席(窓側の1番前)へ向かう
勿論バレバレなのは一目瞭然
それをバレてないと思い込み向かうのが私の仕事だ
教師役の子が音読しながら教室内を歩き回る
その子が私の目の前まで来ると、私の上でぴょんぴょんと跳ぶ
その子は「体重が羽のように軽くなる"個性"」なので痛くも重くもない
蛙が潰れたような声を出しながら教師役が居なくなるのを待って、前方へ向かっているのを確認した後、ムクリと起き上がり一言零す
「ってぇなぁ、絶対あのババア90キロあんだろ」
ぶはっ
頭の上で聞こえた笑い声に聞き覚えがあり上を見るとふるふると体を震わせているミリオ
その隣には環がいた
「は?」
ででーん、9番アウトー
委員長の棒読みな発言と同時に私はミリオを背負い投げる
たまたま通りがかって投げられたミリオに爆笑した織和も巻き込まれわさび入りシュークリームを二人して食べることになるのだった
***
「私言ってないんだけど」
「おばさんから聞いたんだよね!」
「インターンはいいのかよ」
「口悪いよ陽向!!」
つんつんと頬をつつかれながらその手を払うがミリオは全くへこたれない
あっちのクレープ食べいこうぜ、と私の手を握るくらいにはへっちゃらだった
「環もゴメンね、嫌だったでしょ?」
「嫌・・・嫌ではある、雄英と言うだけで視線の的だ・・・帰りたい・・・だが断じて陽向やミリオ達と居たくないという訳では無いんだ」
「分かってるって、ウチもヒーロー科あるし仕方ないよ」
ミリオの背中に隠れるように歩いているが、終始オドオドしている
織和は爆笑しシュークリームを食べた後クラスの出し物当番だからと颯爽と居なくなって行った
委員長等クラスメイト達は私の突然の背負投に驚いていたけどツッコまれはしなかった
そもそもツッコまれるほど仲良くはないのだけど
ひねくれてるなぁなんて思いながらクレープを買っているミリオを眺めていると3人分のクレープを買ったミリオが嬉しそうに渡してきた
「仕方ないから鬼怒川の所も行こうぜ」
「織和のクラスは演劇だった気がするよ、贋作ロミジュリ」
「贋作なの?」
「ハッピーエンドを目指したらしい」
環も行くよな?と声を掛けながら廊下の真ん中を歩く
真ん中を歩くのは初めてかもしれない
何だか面白い感覚になって陽向はクスリと笑った
ちなみに(めちゃくちゃ逞しい)ジュリエット役だった織和は劇そっちのけで私の隣にいるミリオに殴り掛かろうとし環によって拘束されたのだった
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