アイス
もう少しで夏休みという今日
暑くて暑くて仕方なく、ほんの少し寄り道をすることにした
さてはてどのアイスを買おうか
有名なチェーンアイス店で沢山のアイスを眺めながら考える
チョコ系もいいがここは期間限定のヤツも食べてみたい
四つまでは絞ったがなかなかこれが決まらないのだ
一緒に来た織和を待たせるのも申し訳ないし早くしたいのだが、本当に迷う
珍しく私以外並んでいる客もいないので店員さんと織和には悪いが暫く悩ませてほしい
「どれで悩んでるの?」
「あれとそれと期間限定の二つで悩んでる」
「じゃぁ俺がそれとあれダブルで買うから陽向は期間限定のヤツ買ってよ、半分こしよ」
「いいの?ありがとうミリオ・・・ミリオ!?」
すみませーん、と店員に話しかけるミリオ
何でここにと思うがここのお店は私の家の最寄り駅の中にあるのだから隣に住むミリオもここを利用することだってあるはずだ
それに駅中から家までの通り道でもある
もしかしたら見つけて声をかけにきてくれたのかもしれない
織和の隣には小三からの付き合いである環もいた
「はい、陽向」
「え、あ、ありがとう」
「どういたしまして」
にかっ、と笑ったミリオは私が買うはずだったアイスを私に渡した
後でお金を渡さなければならないな
「環はいらないの?」
「ミリオに頼んであるから大丈夫だ、邪魔はできない」
「邪魔?」
何を言っているのか分からないが、私がミリオから受け取った後自分のもの(詳しくは私が悩んでいたアイスだが)ともう一つダブルではなくシングルのアイスを持っていた
それが環のなのだろう
環はそれを受け取るとミリオにお金を渡していた
そうだ、私も一緒に払ってしまおう
そう思い鞄を漁ろうとしたがミリオの行こうという声により漁ること無く歩き出すことになる
「何でアンタらここにいんのよ」
「陽向が見えてつい」
「今日は私と陽向でデートだったのに」
「邪魔出来て満足だよね!」
「絶対アンタ殺すわ」
「止めろ織和、お前一応ヒーロー志望だろ」
そう、織和もヒーロー科の生徒なのだ
ヒーロー科があるといっても雄英ほど有名ではない
元々は勉学の方が有名な学校の為そういう意味では雄英より偏差値は高いだろうが
私がこの高校を受けると言った時織和も一緒に行くと言ってくれた
"無個性"の私を案じてくれたのだろう、いい友達である
織和自身はヒーローになることにそれほど興味はないらしいが従姉妹のお姉さんがヒーロー事務所を営んでおり、それに影響されてか親が五月蝿いらしい(織和談)
とりあえずヒーロー科ならどこでもいいだろうということで私の通っているヒーロー科に所属している
私は普通科だ
「ほら陽向、溶けちゃう」
「あー、うん」
スプーンを使って食べようとしたがアイスを口元まで持ってきたのできっとこのまま食べろという事なのだろう
口を開けてかぶりつくと甘さ控えめのビターチョコの味が口の中で広がった
うん、やっぱり美味しい
上唇に付いたアイスを舐め取り、自分のアイスに齧り付く
あ、ミリオもこっちほしいかもしれない
「ミリオ、アイス食べ・・・」
唇をミリオの親指で拭われた
言葉を失っている間にその親指はミリオの口元にいき、ぺろりと舐め取られる
「次は直接舐めるから」
「いや、うん、結構です・・・」
「死ねミリオ!」
ブンっと織和の腕がミリオの頭を殴ろうとするが透過によりすり抜ける
そのままミリオと織和の鬼ごっこが始まり、私はただ黙ってアイスを食べることしかできない
「素直になんないのか?」
「・・・何のこと」
暑いのは全部夏のせい
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