湯船に隠れた真実
「報告します」
そう言われ部下から報告されたそれに、灰色の幻鹿団の団長、ユリウスは興味深そうに笑った
魔宮に人・・・異国人が住んでいたことにも驚きだが、そんな魔宮で魔導書が見つかるなどというイレギュラーは聞いた事がない
どんな魔法を使うのだろうか
魔導書の所在を聞くと複数あった魔道具と共に紅蓮の獅子王団の所にあると返ってきた
何故紅蓮の獅子王団に・・・
その問いに部下達は顔を見合わせ、困ったような表情を作るや否や口を開く
「どうやらヴァーミリオン家の者と面識があったようで・・・」
「ヴァーミリオン?王族の?」
「は、はい!それで、後日ここに連れてくるからとその・・・」
「え?来てくれるの?嬉しいなぁ」
「えぇ、その、それで魔導書の持ち主となった者はヴァーミリオン家の三姉弟に連れていかれました」
連れていかれた様子を思い出したのかうんざりとしている部下にユリウスは首を傾げた
***
家が魔宮になったことで中が崩壊し、住むことができなくなった
近くの洞窟にでも住み着くと言ったのだが、フエゴレオンとレオポルドが猛反対し(メレオレオナは「面白い!私も住む!」と楽しそうであった)クローバー王国の王都にあるヴァーミリオン家の屋敷へと連れてこられていた
ヤシロも一緒に行くと泣き出すレオポルドを宥めながら洞窟に暮らすと言ったことで小言を言い続けるフエゴレオンに空返事を返しながら取れる荷物は取り出す
魔法騎士団とかいう人達の同情の目が忘れられない
ヤシロが来るならと王都に戻ると言ったメレオレオナは嬉しそうだった
「もう二度と来ないと思ってました」
「そうか?あそこに住んでたとしてもこの先百回以上はここに来させるつもりでいたぞ」
メレオレオナにとってヤシロはクローバー王国の魔法騎士団に入ることは決定事項のようだ
そんなヤシロは嫌そうな顔を崩すこともせず不機嫌そうにしている
それでも眠っているレオポルドを抱きかかえているのだからやはり良い奴なのだ
紅蓮の獅子王団団長の住まいでもある為か団員もおり、怪訝な顔でヤシロを見てくる
あぁ、帰りたい
そう呟いたらメレオレオナは間違いなく「ここが今日からお前が住む場所だ」と言いそうなので黙る事にした
フエゴレオンもフエゴレオンで、せめて今日助けてもらった礼はさせてくれと頼まれたので無下には出来ない
「とりあえず俺の部屋でいいか?もう使用人も眠る時間だ、客間の準備は明日させる」
「いや、そんな・・・必要ない」
「とりあえず風呂にでも入ってくるといい、人払いもする」
「気を使わせてすまないな」
むー、と丁度目を覚ましたレオポルドが一緒に行くと言うので、そのままレオポルドに引っ張られ浴場へと連れていかれる
「使用人に着替えは用意させる、お前も行ってこい」
「姉上は?」
「アレは私の客人だ、私が父上に報告する」
「では、お言葉に甘えて」
汗と土煙で汚れた体を早く洗いたかったのもある
フエゴレオンは風呂へと向かった
***
乳白色の湯を見て不思議な水だと掬う
レオポルドが躊躇いなく入る様子を見ると体に害は無いようだ
体を洗い終え、広い浴場を見渡してため息を一つ吐いてから湯船に体を沈めた
首までしっかりと浸かっていると、声を掛けられる
フエゴレオンが入ってきたのだ
人ひとり分ほど開けたヤシロの隣で湯船に浸かる
一気に疲れが取れるような感覚にため息を吐いた
「今日は大変だったな」
「アンタにも迷惑掛けた、申し訳ない」
「そもそも押しかけたのはこちらだ・・・それより本当に心当たりは無いんだな?」
「執拗いぞ、私は炎獅郎とサネの娘だ」
「親の名をハッキリ言えるならやはりあの女はお前とは関係ないのだろうな」
だがあの女、やはり只者ではないはずだ
あんな禍々しく、それでおいて王族以上の"魔"が宿っているようにも感じた
考え出したフエゴレオンを見て心配そうに「あにうえ・・・?」と声を掛けたレオポルド
フエゴレオンは優しく頭を撫でてやった
「そんな難しい顔をするな、私の事は気にしなくていいだろう別に」
ばさり、と音を立て湯船から立ち上がるヤシロ
「着替えを準備してあるから紺色の服を使ってくれ」と伝え顔を上げると「感謝する」と一言返ってきた
だがその言葉に返事をすることは出来ない
背に見える大きな切り傷のような痕が気になったがそれ以上に、タオル越しに胸部にある慎ましいが確かにある膨らみ
服を来ていた時は確かに無かった筈だが、何故・・・?
あぁ、そういえば脱いだ服に包帯があったが怪我をしていた訳ではなさそう・・・
「っぅ!?」
慌てて顔を逸らしヤシロを見ないようにする
つまり、ヤシロは、そういうことで
混乱した頭は先程から考えていた女の事など無くなっていた
それよりまず、何と言えばいいのだろうか
とりあえず本日の湯船が乳白色の物でよかったと思うフエゴレオン
顔が赤いのはのぼせた訳ではなく間違いなく・・・
フエゴレオンは頭を抱えた
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