気づいてた

らしくもなく足音を立てて急いで自室へと向かう

レオポルドに自室に向かわせるよう言っていたのでやや怒り気味に言いながらヤシロの名を呼び扉を開けると何事だと三つの目がフエゴレオンの方に向く


「ヤシロ!生まれた時から女なのか!?」

「え、うん」

「変な魔道具のせいではなく!?」

「ずっと女」


なら何故もっと悲鳴を上げたり慌てたりしない

フエゴレオンは項垂れる

ヤシロの隣に座っていたメレオレオナも目を見開いていた


「待て、どういうことだ?」

「森の中で女の一人暮らしは危険だからって薬草探してた神父さんが男物の服をくれたんです」

「私は父上に婿候補を連れてきたと言ったのだが」

「気が早すぎる」

「泣いて喜んでいた」

「申し訳ない気持ちでいっぱいです」


何もヤシロが申し訳ないと感じる必要はないと思う

まずはフエゴレオンがタオル越しとはいえ裸を見てしまった事に何かしらリアクションを言って欲しいものだ


「お前・・・もっと恥じらいはないのか」

「恥じらいって言っても・・・別に風呂に一緒に入るぐらい」

「男と!女が!共に風呂に入ったんだぞ!?」

「え?それぐらい普通でしょ?」


日ノ国の風呂事情はいったいどうなっているんだ

とうとう頭を抱えたフエゴレオンをレオポルドは不思議そうに見つめている


「とにかく今日はもう遅い、ヤシロも疲れただろう」

「何だ、もう寝るのか?」

「姉上も寝てください」


レオポルドを抱きかかえ、メレオレオナの背を押し廊下へと押し出す

ふと振り返る


「お前には聞きたいことがある、授与式があると誘った日に声を上げた理由や、俺と一定の距離を取ろうとする理由も、俺に触れられるのが嫌な理由も」

「・・・」

「明日聞きに行く、整理しといてくれ」


"仲良くしたいとは思っている"そうヤシロはあの女に言っていた

嘘ではないと思う

だからこそ、疑問に思ったのだ

いきなり詰めよれば上手く答えるのは難しいだろう

だから時間を置くことにしたのだ


「・・・気づいてたか」


ポツリ、と呟かれた声は聞こえないふりをした

***

魘されている自分の声で目を覚ます

息を切らして周りを見るが知らない部屋のソファーの上で身構えた

刀はある

手元にある武器に安堵しながら、周りを見渡すが誰もいない

あぁそうだ、ここはヴァーミリオンの家なのか

ベッドが柔らかすぎて眠れないとソファーに移動したが、外の声が聞こえるとは思わなかった

そもそもソファー事態も柔らかくてヤシロには寝心地が悪い

ソファーから降りると着替えた服をカバンに詰め込む

へやにあった紙とペンをかり、書き置きを残す

そして窓に足を掛ける

フエゴレオンへの回答のことも思い出し、頭の整理がてら少し散歩でもしてよこうと思った

ふと、魔導書が目に入る

今日あるはずの報告というやつに必要かもしれない

あったらあったで便利だろうが、今自身には必要のないものだ

置いていこう

そう判断し、窓から降り立った

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