いないいない
ソファーに掛かっている毛布に首を傾げながらベッドを見る
いない
ソファーの毛布を上げてみる
いない
とたとたとした足音を立てながらレオポルドはヤシロを探していた
窓が空いている
ベランダ、いない
シャワー、いない
トイレ、いない
机の下、いない
クローゼットの中、いない
だが魔導書はある
この魔導書はヤシロのだとレオポルドは知っている
魔導書を持っていたら戻ってくるかもしれない
それまで俺が守らないといけないんだ
ぎゅ、とヤシロの魔導書を抱きしめた
***
どんなに大人しくヤシロを待ってもヤシロは戻ってくる事は無かった
朝食だ、と呼び来たフエゴレオンも驚いている様子からヤシロの所在はわからないのだろう
そのうち戻ってくるかもしれないから先に食べよう、と言ったがレオポルドはヤシロと食べるの一点張りでソファーの上から動こうとしなかった
時刻は10時、レオポルドの腹の虫は鳴り響く
ヤシロに会いたい
まだ沢山話がしたいのだ
魔導書を抱える手に力が籠ると、魔導書がボオッ、と火を纏い始めた
白い炎はレオポルドの"魔"とは全く違うもの
それよりも何故燃えてしまったのか分からず慌てふためくと、魔導書はレオポルドの腕の中からすり抜け何処かへ行こうとしてしまう
ダメだ、待って
手を伸ばすが届かない
魔導書は窓の方へ飛んでいき、そのまま外へ出ると遠くの方へ行ってしまう
窓から手を伸ばしても届くはずもなく、レオポルドの瞳には涙か溢れてくる
「っ、うぅ*、ヤシロのなのにぃ・・・」
ボロボロと止まることの無い涙を拭いながら、部屋から出て魔導書を追いかける
通り過ぎる使用人達が驚いたように声をかけてくるが今は返答などできない
とにかく、早く、魔導書を
「レオくん」
門の前
ビックリしたようにレオポルドを見つめるヤシロの姿はいつも会うより少し汚れていた
ふよふよとヤシロの周りを浮いている魔導書をみて、レオポルドは声を上げてヤシロに泣きついた
「何処に行ってたんだ!!モーニング待ってたんだぞ!!」
「え?そうなの?ごめん、書き置きしてたと思うんだけど」
ボロボロと涙と鼻水を流すレオポルドはヤシロに抱きつきヤシロは気にすることなく抱きしめ返す
周りの者は意味がわからないという顔をしているがヤシロも意味が分からなかった
「何をしてるんだ」
「メレさん」
箒を使用人に渡し、ヤシロの荷物を地面に置くとメレオレオナはレオポルドの様子に首を傾げる
生き別れの兄弟にでも会った反応だがヤシロとレオポルドは兄弟でなければ生き別れもしてない
何より自分が何ヶ月も帰ってこなかったところでこんな反応されたことがないからつまらない
レオポルドをヤシロから引き剥がそうとするがレオポルドが負けじとヤシロにしがみつくからなかなか離れない
コイツ、こんなに力があったのか
「姉上、おかえりでしたか!・・・ヤシロも一緒だったのか」
「散歩だけのつもりだったんだがメレさんに見つかって前住んでいた所から必要な物だけ発掘してたんだ」
「そうか、無事ならよかった・・・で、何故そんな浮かない顔をしているんだ」
レオポルドの頭を撫でていた手を止め、顔を俯かせる
レオポルドの鼻を啜る音だけが聞こえた
「すまない、お前から貰った毛布が見つからなかった、せっかく貰ったのに・・・」
「そんなことでお前はそんな顔をしていたのか、そんなものまたくれてやるからとりあえず今は着替えてこい」
「おいヤシロ、この荷物はどうするんだ?ユリウスに報告する前に片付けるか?」
「ユリウス・・・?あぁ、いや、どうせすぐここは出ていくつもりだしそのままにしておきます」
着替えてくるからね、とレオポルドを離し、荷物を取って3階に宛てがわれたヤシロの部屋に窓から入る
何故窓からなのかとか色々思う節があるが気にしないでおく
そんなことよりもだ
「ヤシロは・・・出ていくのか?」
「そのようですね」
「出て行かせると思ってるのか?」
「おそらくそうなのでしょう」
ほう
地を這う様な声でそう言うとメレオレオナもヤシロを追いかけ窓から入る
だから何故窓からなんだ
メレさん!今着替え中!!ばか!!と王族に暴言を吐く命知らず(と言ってもメレオレオナは全く気にしていないだろう)の異国人に頭を抱えながら持っていたハンカチでレオポルドの顔を拭いていく
あんな状況になっても探しに行くほど大切なものがあったのだろうか
フエゴレオンはレオポルドがヤシロが居ないと泣いた時逃げたのだと思ったのだ
だからヤシロが居なくなったのは自分のせいだと
もっと仲良くなってから聞けば、否、仲良くなれば気にしなくなったかもしれないのに
自分以外の姉弟と仲良くしている姿に嫉妬してまったのだろうか
何故
「あぁ!?何広げてるんですか!?報告ってのが終わったら住む場所探しに行こうと思ってたのに!!」
「ここに住めば問題ないだろう!!何を騒いでいるんだ!!」
「何を騒いでるんだはこっちの台詞・・・あああ!!雑に扱わないで!!」
本当に大丈夫か
レオポルドを抱え急いでヤシロの部屋へといく
ドアを開けるとサラシを巻いているとはいえ上半身裸のヤシロがメレオレオナに掴みかかっていて勢いよくドアを閉めたのは言うまでもない
「兄上?」
「何でこんなことばかりなんだ」
項垂れるフエゴレオンにレオポルドは首を傾げるばかりだった
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