みえない涙
「その後何処ぞのお偉いさんの護衛なったんだけど、非番の時に護衛の殺害場所に突っ込まれて犯人扱いされて、何とか逃げたけど生きる理由もないから身投げしようと思ったんだよね」
「もういい」
「でも、海に幼馴染がいてさ、最後に一目みようと思ったら見つかって何故か漁に駆り出された難破して気づいたらここにい」
「・・・もういいと、いっただろう」
フエゴレオンはヤシロの口を手で塞いで止めた
ヤシロは不思議そうにフエゴレオンを見たが、フエゴレオンは首を横に振るばかりだ
「お前が苦しんで来たのは充分わかった、すまない、話させてしまって」
「・・・充分わかった?」
ヤシロの冷たい声に肝が冷えた
話している時も笑顔を崩すことは無かったが、その笑顔をもっと歪ませている
言葉を誤った
フエゴレオンが謝罪を入れようとする前にヤシロは静かに立ち上がる
「家族が皆幸せに生きてて、こんな少し話しを聞いただけの事で充分わかれたんだ」
ゆっくり、ゆっくりと近づいてくる
冷や汗が背中を伝う
「元気な弟がいて、羨ましいよ、あの子はどんな思いで、あの時、ねぇ、何でわかるの、分かるわけないでしょ、幸せな貴方に、ねぇ」
ヤシロの手はフエゴレオンの首へ伸びた
ギリギリと締め付けられていく首、呼吸ができない
段々と支離滅裂になってくるヤシロの言葉を聞き逃さないように意識を保ちながら、苦しさで瞑ってしまった瞳を開ける
あぁ、なんで、彼女は、ヤシロは
「泣い、ていい」
ヤシロの目元に親指を付ける
流れてはいなかったが、涙を拭うように
「笑わなくていい」
上がっている口元は段々と下がっていく
そっと、空いている手で口元をなぞってみる
笑っているフエゴレオンをみて、ヤシロの手は段々と力を失っていき、そのままだらりと下へ落ちた
「泣けなかったのだろう」
幼子をあやす様にヤシロの頭を撫でる
余りにも泣いているような表情なのに流れないソレを何度も拭った
「すまない、興味本位だったんだ」
「知ってる」
「でも、お前を知りたいと思ったのは本当だ」
「うん」
「お前があそこまで強くならないといけない理由は余りにも重すぎる」
それでも、ここで普通に暮らすには異国人のヤシロには厳しいだろう
だからと言ってまた森に戻らせるのは嫌だ
うーん、と悩んでいるとヤシロがソワソワと身動ぎを始める
なんなんだ、と腕を緩めるとヤシロはスー、とフエゴレオンから離れた
「何で離れる」
「いや、ちょっと、近いかな、と」
「裸を見られてもなんとも思わない女が何を今更」
「裸は見られた所で減らないけど触られるのは色々減る」
「お前の感性はどうなってんだ」
はぁ、と呆れたようにため息をはき、ヤシロから離れる
元々座っていた所に腰掛けると、フエゴレオンは不思議そうに口を開いた
「今の話を聞いてると何故生きているのか不思議なのだが、何故自害しなかった」
「え?うーん、此処に着いた時神父?って人が面倒みてくれてさ、人に良くされたから無駄にしない方がいいかな、と・・・まぁ、村の人に石投げられて迷惑になる前に消えたけど」
「・・・」
「あとは・・・」
ふわり、と何かを思い出したのか嬉しそうに笑う
「秘密だ」
「なんだと」
つまらなそうに口を尖らせるが、ヤシロが嬉しそうならそれでいいとフエゴレオンは思う
そして夜は更けて行った
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