別に故意ではない

ソファーの上で目を覚ましたヤシロは毛布から出る

昨日は随分と話してしまい、フエゴレオンが出て行ったのは2時を回っていた

だが、話を聞いてもらった事が起因なのか、この国に来て初めてと言っていいほどの快眠で、短い睡眠時間だがスッキリと目が覚めた

蛇口を捻りコップに水を入れ、一口飲む

コンコンとノックされ、返事を待たずに開いた扉に目を向けた


「ヤシロ!いるか!?」

「レオくん」


勢いよく開いた扉から元気よく入ってきたのはレオポルド

ヤシロを見つけると一目散に駆け寄り抱きついた


「今日は俺と一緒に街に出るぞ!」

「うーん、今日はメレさんと用があって」

「ヤシロは姉上と兄上ばかりに構っているじゃないか!!今日は俺だ!!」


ここに来てそんなに日数は経っていないので構っているいないの問題ではないのだが、レオポルドからすると上の2人は羨ましいのだろう

ぐずり始めたレオポルドの頭を撫でながらどうしようと思った


「ヤシロが俺と遊ぶと言うまでこうだからな」


頭を撫でていたヤシロの手を取り、ぎゅー、としがみつく

なんだコイツ可愛いな、とヤシロはレオポルドの頬をつついた


「ヤシロ!!」

「はいはい」


よいしょ、と簡単に抱き上げるとレオポルドを廊下まで連れていく

遊ぶ気になったのだろうかと嬉しそうな顔で降ろされると、ヤシロを見上げた


「午後は空いているから後でね、朝飯でも食べてきな」


パタン

ドアを閉めると同時にレオポルドの鳴き声が響く

泣かせておけば誰か来るだろう

回収してくれと拝みながら着替えるために衣服を手に取る

暫くしてバタバタと足音が聞こえたかと思うとレオポルドが泣きやみ、静かになる

回収されたか、と安心すると勢いよく扉が開いた


「貴様っ!!異邦人がなまい、き・・・」


上半身裸の状態のヤシロ

入ってきた少年と目が合う

少年は暫くヤシロを見てから漸く状況を理解したのかだんだんと顔が赤くなっていく


「う」

「う?」

「美しくない!!」


バタン、と勢いよく閉まり、バタバタとかけて行く足音が聞こえる

レオポルドの声も遠ざかって行くので回収してくれたようだ


「美しくない、ねぇ」


まぁ、確かに美しいとは言えないな

傷だらけの体に目をやり苦笑いを零す

一つため息を吐いて、着替えを再開した

***

「という事があったんだよ」


ぶらんぶらんと片足に縄を括られ木から吊るされているメレオレオナに今朝あった事を伝えると「キルシュだな」とメレオレオナが言った


「きるちゅ?」

「しゅ、だ」


自身の魔法で縄を焼き切り地面に着地すると、ヤシロの隣に座ると既に地面に線を書いた

ヤシロ、メレオレオナと書かれたそこには横線が縦に並んでいる

若干ヤシロの方が線が多かった


「キルシュは従兄弟だ、下にミモザという妹がいる」

「一緒に暮らしているんですね」

「そうだな、お前は違うのか?」

「父にも母にも兄弟はいなかったので」

「そういやお前のことは何も知らないな、なんか無いのか?」

「昨晩フエゴレオンに話したのでフエゴレオンに聞いてください」


もぐもぐと朝に作ったおにぎりを食べながらメレオレオナにお茶を渡す

お茶を受け取るが「どういうことだ?」と目は睨んでいる


「何がです?」

「何故フエゴレオンに話したんだ」

「何故って、聞かれたから」

「普通は私が先だろう!!私の方が友人としての付き合いは長いぞ!!」

「でも、聞かれてないことをペラペラ話すのも」

「もういい、ひとまずフエゴレオンを捕まえてくる」


お茶を飲み干すとメレオレオナは立ち上がり箒に跨る

そして猛スピードで居なくなった

今日は任務があると行って居なくなったが大丈夫だろうか

余ったおにぎりは夕飯かなぁ、と考えていると猛スピードで居なくなったメレオレオナが戻ってくる


「これは貰っていくぞ」


メレオレオナの分のおにぎりを掴むと再びいなくなる

元気だなぁ、と見送りながらヤシロも立ち上がった

***

城の前で待ち構えていたレオポルドにタックルされ、そのまま抱きかかえて中に入る

護衛の魔法騎士団員達はヤシロが入るのを睨むように見るが、口出しはしない

メレオレオナがヤシロを連れてきた時止められたのだが「ヤシロが入らないなら私もヤシロと暮らす」と言い出し、そこからフエゴレオンも「面白そうだ」と言い始めた為これはいけないと中に通された

ほぼ城にいないメレオレオナならともかくいずれ当主になるフエゴレオンが城から居なくなるのは阻止したかったようだ

それで睨むだけで留まっているのだ


「今日は従兄弟を紹介してやろう!」

「今朝の?」

「あれはキルシュだ、違う」


メレオレオナから従兄弟と聞いていたのだが、違うのか

深くは追求するのを止め、大人しくレオポルドが指示した場所へ向かう

ボロボロだからシャワーを浴びたいがレオポルドは許してくれなさそうだ

そして、ある部屋の扉を開けるとソファーの上に座る女の子がいた


「ミモザ!俺のヤシロだ!」


ミモザと呼ばれた女の子は驚いたように目を開くとお辞儀をした

断じてレオポルドの物になった記憶はないが、やはり否定するのは面倒なので黙っておく


「お兄様が美しくないと言っていた方ですね!」


この子は歳は幾つなのだろうか

人によればかなり傷つく発言を悪気なく言ったミモザにヤシロは表情こそ崩さないが驚いた

レオポルドが慌てて「ヤシロは綺麗だ!」と言うが別に幼子の発言に傷ついているわけではない

純粋にこの子の将来が心配になっただけである


「ところでなんで此処に呼ばれたのかな?」

「ヤシロはこの国の文字が読めないと言っていただろう?だからミモザの絵本を借りようと思ったんだ!」


座れ、と促されソファーに座ると両隣に座るレオポルドとミモザ

取り出されたのはクローバー王国では有名な絵本だ

それを読み進める2人だが、ヤシロは両隣から感じる高めの体温と一定のテンポの声により眠くなっている

何より今日は刀無しでメレオレオナと対峙していたのだ、余計疲れも溜まっている


「ヤシロ?」

「ヤシロさん?」


船をこき始めたヤシロは幼子2人の声がどんどん遠くなっていくのを感じながら意識を手放して行った

***

「!!」

「首を閉めるなよ、部屋に戻そうとしただけだ」


眠っていたヤシロは何者かが触れようとする気配を感じ勢いよく腕を突き出す

が、その手は直ぐに捕まり相手から声を掛けられた


「・・・ごめん」

「今更だな、気にするな」


離された手をグーパーと握ったり開いたりを繰り返し横を見る

レオポルドもミモザも居なかった


「ディナーの時間だから先に行かせた、ヤシロも一緒にどうだ?」

「いや、すまないが遠慮しておく」

「今日は牛ヒレ肉のソテーだ、嫌いか?」

「この国の食べ物はあまり食べたことないからわからない」

「なら、一緒に」

「いや、メレさんが用意してくれた食材をダメにしたくないし遠慮しておくよ」


姉上め、余計な事を

だがしかしヤシロの性格からして確かに何かを無駄にするのは嫌いそうだ

それに、もしかしたら異邦人だからと遠慮しているのかもしれない・・・

だから姉上に、と考えて苦笑いを零す

ヤシロのことばかり考えているではないか、と

後でヤシロの部屋に行こう

考えても仕方が無い

顰めっ面を見ることになるのは目に見えているがフエゴレオンはさっき会ったばかりのヤシロに会いたいとそう思った

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