この感情をまだ知らない
「フエゴレオン丁度よかった、話があるんだ」
珍しく快く受け入れられたフエゴレオンは、流されるままソファーに座る
だされた緑茶を啜りながら本題に入ったヤシロの言葉に驚きを目を見開いた
魔法の使い方を教えて欲しい
そう確かに言ったのだから
「漸く魔法騎士団に入る気になったか!」
「いや、まぁ、とりあえず受けるだけ受けようと思っただけなんだけど」
「俺は嬉しいぞ!今から・・・はもう遅い、特訓は明日からだな!」
嬉しそうに笑うフエゴレオンに苦笑いを零しながら、ヤシロは息を吐く
なら明日また迎えに行くと居なくなったフエゴレオンは本当に嬉しそうだ
あんなに張り切っているという事は明日はきっと大変なことになるだろう
ヤシロも早々に眠ることにした
***
「まず初めに魔導書は使わず、こうやって"魔"を凝縮させてみてくれ」
フエゴレオンが手本のように少し感覚を開け合わせた掌の間に炎を作ってみせる
炎が出るようになるのだろうか、と手を合わせて見るが何も出ない
そもそも"魔"そのものをよく理解していないのだ
生まれ持って魔法のそばで生きていたものとそうでないものの違いは大きい
「"魔"を凝縮ってどうやるの?」
「あぁ、そうか、"魔"そのものがよく分からないんだもんな・・・少し待て」
ヤシロの後ろに回ると手を伸ばしヤシロの手の甲にフエゴレオンの掌を重ねるような体制になる
そしてまた、"魔"を掌の間に集めた
「この国の者は皆生まれながらに何となく分かるから、口でこうするとはあまり説明しないから難しいな」
「だからって急にこんな体制になると流石にびっくりする」
「ヤシロでもびっくりするんだな」
クスクスと耳元から聞こえる笑い声に顔を顰めつつも、ヤシロはフエゴレオンの掌から伝わってきた感覚を何とか再現しようと手に力を入れた
ぼわっ
そんな音を出しながらフエゴレオンの炎の中に白い光が現れ、それが融合し白い炎となる
「おぉ」
「"魔"が混ざったのか?」
「え?何?凄いこと?」
「そうだな、魔導書を使って魔法と魔法を合わせた合成魔法は見たことがあるがこんな風に混ざり合うのは初めて見た」
ユラユラと揺れる白い炎を見ながらフエゴレオンは嬉しそうに笑う
ヤシロはこの炎を維持するために一生懸命で動くことが出来ない
フエゴレオンはゆっくりと"魔"を作り出す感覚を止め、ゆっくりと手を離す
炎は段々と消えていき、最終的にはあまりにも頼りなさすぎる朧気な光がヤシロの手の中に残った
「その光を大きくしたり放ったりして攻撃したりする」
「危ないな」
「普通に暮らしている分では早々そんなことはないさ」
フエゴレオンは壁の前まで行くと落ちていた石で丸を描く
「そこからココに当ててみろ」
ヤシロのいる所から3メートルぐらいだろう離れている
"魔"を投げる感覚はよく分からないがとにかく投げてみようと振り上げ投げつける
その光は勢いよくフエゴレオンの顔の横を通り過ぎるとそのまま壁に当たり的から30cmは離れた場所に当たった筈なのに的どころか一面崩れ落ちていった
「・・・」
「え、と、ごめん」
「コントロールを覚えよう、このままだと敵味方関係なく死ぬ」
「え、早々使うことないんじゃ」
「コントロールを覚えよう」
崩れ落ちた壁を見ないようにフエゴレオンは言い切るとヤシロも大人しくうなづいた
崩れ落ちる音に気づいた使用人達が慌てて出てきたのでフエゴレオンは訓練中の事故だと追い払う
申し訳ないと思いながら瓦礫に触れていると魔導書が勝手に動き出した
ヤシロの目の前でパラパラと捲れるとあるページで止まる
何と書いてあるのだろうか
「フエゴレオン」
「どうした」
「光ってる」
魔導書を指すとフエゴレオンは慌ててヤシロに近づいて魔導書を覗く
「なんて書いてある?」
「読めないのか?なら後で文字も教えよう、これは・・・」
フエゴレオンの言葉にヤシロも復唱する
「光魔法、蛍火」
ヤシロが言い終えたところでフエゴレオンはハッとした
このタイミングで新たな魔法
最悪あの威力以上の攻撃魔法かもしれない
コントロールも出来ないヤシロが知らず知らずに出してしまったら
最悪の事態を考え魔導書を無理矢理閉じようとしたが一歩遅かった
魔導書か複数の小さな光が線を描きながら瓦礫へと近づいていく
その光がくっつくと瓦礫の山が光り、みるみるうちに直っていき元通りの壁になった
「おぉ、凄いね」
「凄いのはヤシロだがな」
元通りになった壁を見てフエゴレオンは思う
探索系と修復系の魔法が出たということはもしかしたらヤシロは攻撃系統は苦手なのかもしれない
一般的な魔導書の基礎を思い出しながらヤシロの魔法騎士団での適正を考える
もしかしたら回復魔法を使えるようになるかもしれない、未知すぎるがヤシロ程の"魔"があれば国一番の・・・とここまで考えはた、と思考を切り替える
ヤシロの"魔"は普段全く感じないのに魔法を使うとフエゴレオン達王族以上のそれを感じるのだ
まるで大気中の"魔"に溶け込んで、感じる事のできないヤシロの"魔"は時折どこに居るのか分からなくなる
知らずのうちにコントロール出来ているのでは・・・?
「ヤシロ、刀は出せるようになったか?」
「え?あぁ・・・」
そういえばまだ出せないな、とヤシロは魔導書のページを開く
刀の名を言ってみるが出てくる気配は全く無かった
「何が原因なんだろう」
「ヤシロ、この前出した魔法は出せるか?」
「だから読めないって」
教えるから、と無理矢理ページを開かせ先程同様復唱させる
しかし何も起こらなかった
「確かヤシロはこれで俺を見つけたんだよな?」
「うん」
「なら、そうだな・・・レオポルドを捜すつもりでもう一度やってみろ」
「わかった」
意識を集中させレオポルドを捜そうと試みる
パラパラと開かれるページが止まると今度は1つの光が本から出てきた
その光はヤシロの周りを数回回るとスーッと移動する
その光を2人て追いかけて数分、ミモザとキルシュと本を読んでいるレオポルドを見つけた
光はレオポルドの周りを数回回ると肩に留まり、ヤシロが近づくとヤシロに近づき魔導書の中に入っていった
「ヤシロー!!あにうえー!!」
「どうかされたのですか?」
「いや、ヤシロの魔法を見ていただけだ」
ヤシロを警戒しながらフエゴレオンに声をかけたキルシュに説明する
レオポルドはヤシロに突進しているし、ミモザもニコニコとヤシロの手を握っていた
「・・・子供に好かれやすいんだな」
「そんな事はなかったんだけどね」
2人の頭を撫でていると嬉しそうに笑う
そのヤシロの笑顔は何処か寂しそうに見えた
ヤシロを呼ぼうと手を伸ばす
「ヤシロ」
だが、別の声に遮られる
振り返ると楽しそうに笑うメレオレオナの姿があった
「壁を壊して直したのだろう?少し付き合え」
獲物を見るような目だ
殺し合いを求めている目
ヤシロを見ると首を横に振って壁にかけてあった剣を手に取っていた
「これ貰っていい?」
「構わないが・・・」
「せっかく教えてくれたのにごめん、ちょっと行ってくるね」
遊ぶのが待ちきれない子供のようにワクワクしているメレオレオナだが、レオポルドやミモザには恐怖の対象でしかない
カタカタと震えながらメレオレオナの発する圧に怯えキルシュの後ろに隠れる
ヤシロは外に出るために窓に足をかける
「フエゴレオンありがとう」
「?」
「何となく使い方はわかった」
剣に"魔"を纏わせて見せたヤシロ
「また教えて」
これからあのメレオレオナと一戦交えようというのにお気楽のように見える
窓から降りていったヤシロを追うようにメレオレオナも降りていく
降りていく時何処か楽しそうに見えたヤシロに心の奥で仄暗い何かを感じた
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