初任務

ヤシロの紅蓮の獅子王団へ入団することが決まって数日

未だに何故異邦人をと声を上げる者は半数以上いる

それでもヤシロの実力を見せつけると皆押し黙る他ない

だが納得した訳では無いのだ

よってヤシロは現在除け者扱いをされていることにフエゴレオンはなんとも言えない気持ちだった

最低限の会話はしている様だが雑談をしている様子は皆無

ずっとフエゴレオンやメレオレオナが付きっきりで入れる訳では無い

どうしたものかとフエゴレオンは頭を悩ませた


「ヤシロ、友人や頼れる者はいるか?」


まるで親みたいな質問に、訝しげにフエゴレオンを見たヤシロの視線から顔を逸らす


「メレさん」

「姉上がどうかしたか?」

「いや、友達」

「・・・」

「フエゴレオンも入れていいならフエゴレオン」

「・・・そうか、是非入れてくれ」

「あ、あとフエゴレオンの所のメイドさん達とよくお話するよ」


美味しいパン屋を教えてくれたと嬉しそうに笑うヤシロは年齢より幼く見える

だからか余計ヤシロへの待遇への不満が高まってしまうのだ

そんな思いが表情に出ていたのかヤシロは気にしないでと言う


「いずれはこの国から出ていく予定なんだから友人は少なくていいんだよ」

「帰り方も分からない、母国の場所も分からないのにどうやって帰るんだ」

「帰れなかったらそのうちフラって出ていくよ」

「またそんな事を言うのかお前は」


柔らかな頬に手を伸ばし軽く抓ると笑いながら痛いと言うので少し押しつぶしてから離す


「今日から任務があるんだよな?」

「うん、そろそろ行くよ」

「初任務だ、頑張ってこい」

まだ心のどこかで不安は残るが、何とか笑顔で送り出した

***

任務の内容は強魔地帯付近の雪山で遭難した貴族の子供を探すというものだった

その雪山を抜けた先に別荘地があり、そこから山へ入り行方不明らしい

そこで捜索に適した魔法を使える者を今回当てたのだ

本日ヤシロと組んだ団員の三等上級魔法騎士のアルベージと二等中級魔法騎士のサムは困惑気味にヤシロを見る

アルベージは貴族の出身でヤシロを侮蔑の目で見ていたが、平民の出身のサムに何とか宥められながら森を捜索しているのだが、どうもヤシロの様子がおかしい

何故か森の小動物と戯れているのだ

ヤシロの周りに数匹の狐

アルベージは怒りを顕にしヤシロに掴みかかる

唸る狐には目をくれず怒声を出した


「貴様!!まともに探す気はあるのか!!捜索系の魔法があるのだろう!?何故それを使わん!!」

「私のは一度会ったことある人しか使えないんですよ、だからこの森に詳しそうな子達に聞いてました」

「何を吐かして」

「あっちに洞窟があってそこに子供を見たと言ってます、行ってみましょう」

「おい待てそっちはっ!!」


アルベージの手を離しヤシロの向かう先は強魔地帯のある方角だ

まだこの辺りは雪は少ないが数mも歩けば直ぐに風雪は強くなり視界も見えなくなる

"魔"の乱れが荒々しい強魔地帯でヤシロとサムは魔法を使うにはまだ実力が足りないと判断したアルベージはスタスタと歩くヤシロに静止をかける


「そっちに行ったところで貴様では魔法が扱えなくなるだけだ!!」

「私雪道慣れてるし魔法ない方が強いんで大丈夫ですよ」

「そもそも子供がそんな危険な所に行くわけないだろう!!猛獣も出る!!勝手な行動は止めろ!!」

「子供の行動力は大人を驚きで気絶させる程逞しいですよ、行ってみないと分からないです」


立ち止まったヤシロを急かすように衣服を咥え催促するように引っ張る狐を宥めながらまた歩き出したヤシロ

アルベージは舌打ちをして勝手にしろと言い捨て逆方向へ向かう

サムはヤシロとアルベージを交互に見てからヤシロに駆け寄る

メレオレオナとフエゴレオン達王族と仲のいいヤシロが初任務で死ぬなどどんな事になるかなど恐ろしくて想像出来なかったのだ


「アルベージさんの言う通り止めておけ、どうなっても知らないぞ!?」

「大丈夫ですよ、あの程度の雪なら沢山歩いたことあります」

「あの程度って・・・あっ、おい!!」

「行くぞサム!!」

「は、はい!!」


アルベージが出した探知系の魔法で周りの"魔"を探すがどれも人のものとは思えない微量なもの

貴族の子供ならもっと"魔"の量は大きいはずだ

もう手遅れなのかもしれない

アルベージは最悪の事態を考え舌打ちをした

***

夜になっても結局子供は見つからず捜索は一旦中止となった

ヤシロの姿も一向に現れないのでアルベージの苛立ちは高まるばかりだ

一度依頼者に報告をと依頼者のいる別荘へ向かう

別荘の明かりがハッキリと見えた所でヤシロが駆け寄ってくるのが見えた


「よかった、今から探しに行く所だったんです」

「貴様に探される筋合いなどない」

「でも探している子も見つかったし伝えに行かないとって思って」

「なに?」

「ご家族と今一緒にいますよ、行きましょう」


表情を崩さないヤシロに愛想笑いも出来ないのかと心の中で見当違いな悪態をつく


「どうやって見つけた」

「はい?」

「貴様の魔法は使えない、そんな状況でどうやって見つけたんだ」

「教えて貰ったんですよ」

「誰に」

「あの子達ですよ」


ヤシロの指さした方に目を向けると先程みた狐が遠くからこちらを伺っていた

ヤシロが手を振ると満足したのか雪山の中へ消えていった


「・・・なるほどな」


意味が分からない

だが任務は無事終了した

納得はしていないが一先ず落ち着いたアルベージの様子にサムは安堵の息をついたのだった

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