花冠と子供たち

「貴様が異邦人の女だな」


ぎっ、とヤシロを睨むノゼルに狼狽える

ヤシロからしたら初対面である綺麗な顔をした男に睨まれるというのはあまりにも居た堪れない

ここにフエゴレオンが入ればまだ変わっていただろうが今はレオポルドしかいない

レオポルドは彼が苦手なのだろう、ヤシロに抱きついて怯えていた


「この場は王族と使用人、それらを警護する魔法騎士しか入れない、異邦人の分際でよくもここに居ようと思ったな」

「はぁ、すみません」

「謝れば済む問題では無いだろう、消されたくなければ去れ」


ノゼルの魔法である水銀で出来た槍がヤシロの喉元に触れる

あと少し食い込めば血が出てきそうだ

顔が青ざめてきているレオポルドを抱き上げ落ち着かせるように背中を叩く

それに安心したのか泣くことは無かったがだがやはり怯えたままだった


「フエゴレオンに頼まれたんだ、この子達と一緒にいてくれと、外に出すわけにもいかないからこの庭園にいた」

「ここは我がシルヴァ家の敷地内だ」

「え?そうなの?ごめんなさい、言われるがままに連れてこられたから」

「連れてこられた?いったい誰に・・・」

「ノエルさん!こちらですわ!!」


ミモザの声がし視線を声の方に逸らすとミモザの後ろからもう1人誰か走ってくる

銀色の髪は目の前の男と同じ色だ


「ノエルさん!こちらをヤシロさんですの!!とてもお優しい方ですわ!!」


ぎゅ、とヤシロに抱きつきヤシロを紹介するミモザ

ノエルはおどおどと口を開いたり閉じたりを繰り返し頬を染めヤシロを見上げる

見上げた先にノゼルもいた


「っ、お、にい、さま」

「・・・」


びくっ、と肩を震わし手を胸の前で組んでギュッ、と目を瞑る

ヤシロではなくノゼルに怯える姿にヤシロは首を傾げた

お兄様と言ったあたり兄弟なのだろうに

ノゼルの方に振り返るがもう既に後ろを向いて歩き出していた


「ノエルちゃん」

「っ!」

「初めまして、ヒノワ・ヤシロです、まだこの国に来て数ヶ月だから分からないところ沢山あるんだ、教えてくれる?」


握りすぎて真っ白になった手を包み込み顔を覗き込む

大きな瞳がヤシロを捉える

手を頭に移動させるとまたぎゅ、と目を瞑り体を強張らせるがヤシロは構うことなく頭を撫でた

暫くしてゆっくりと開かれた瞳には優しく微笑むヤシロの姿が映っている

ポロポロと泣き出すノエルを抱き寄せ頭を撫でると縋るように服を掴んできた

不安そうにこちらを見るミモザやレオポルドに大丈夫だよと声をかけノエルを抱き抱えて立ち上がる


「怒られちゃうからおうちのお庭に行こうか」


怒る相手が誰なのか幼いながらに分かった2人はそれぞれヤシロの隣に位置取り歩き出す


顔だけ後ろを振り返り口パクで何かを言うと二人について行った


「・・・ふん」


少し離れた建物の影から様子を見ていた男は居なくなったことを確認し、歩き出す

***

ヴァーミリオン邸の庭にて遊んでいた所にフエゴレオンが戻ってきた

いち早く気づいたレオポルドが駆け足で近づき抱きつく

その後ろをミモザが追った

同じ王族でも兄弟でこんなにも差があるのだろうか、ともう既に泣き止んでいたノエルに視線を向ける

寂しそうに3人の姿を見ていた

ヤシロはそんな様子のノエルに作っていた花冠を乗せる


「うん、可愛い」

「!!」


顔を真っ赤にし、視線をウロウロさ迷わせ最終的につんっ!とそっぽを向いて「とうぜんでしょ!」と可愛げのない返答になってしまったが、ノエルは耳まで真っ赤になっていてそれでまた笑ってしまう

ずるいですわ!とミモザがこちらに駆け寄ってくるが途中でコケてしまうとノエルは慌てて駆け寄り声を掛け手を差し伸べヤシロの所へ手を繋いで歩いてくる

泣きそうになるのを我慢しているミモザに泣かないで偉いねと頭を撫でるとへにゃりと笑った


「増えたな」

「みんな可愛いね」


ニコニコと穏やかに笑うヤシロをじっと見つめる

こんなに笑う奴だったのか、と子供達と一緒にいると笑顔が耐えないヤシロをじっとみる

視線に気づいたヤシロがどうかした?と笑いながら聞いてくるからなんでもないと顔を逸らした

何故こんなにも苦しいのだろうか

今度テレジアにでも聞いてみよう

2つ目の花冠を作り終えたヤシロは花冠を乗せて花摘みをしているノエルとミモザを愛おしそうに見つめていた


「ヤシロ!バッタをみつけた!!」

「やっぱり男の子は虫が好きなのかなぁ?」


一人で昆虫を探しているレオポルドは見つける度にヤシロに報告している


「俺が言うのもなんだが疲れてないか?」

「大丈夫だよ」

「ならよかった」


ヤシロの前に腰を下ろし遊んでいる子供達の様子を眺める

平和だ

この平和がずっと続けばいい

皆が笑える国であってほしい

そしてその時隣に・・・


「ヤシロさん!花冠の作り方教えてください!」

「わ、わたしも!!」


ぎゅー、と抱きついてきた2人を受け止め2人が摘んだ花で花冠を教えていく

レオポルドは楽しそうに後ろからヤシロに抱きついていた

それをみて嬉しそうに微笑むと一輪花を摘み取った


「フエゴレオンも一緒に作るのか?」

「いや、俺は少し様子を見に来ただけでもう行かないといけない」

「もう行かれるのですか!?」


もっと一緒にいましょうとフエゴレオンに縋るレオポルドの頭をひと撫でし、立ち上がる


「ヤシロ」

「何?」

「・・・いや、なんでもない」


心穏やかな顔を見て、フエゴレオンは自身の胸の高鳴りを感じ誤魔化すようにヤシロを呼ぶ

結局話す内容も無いので困ったように笑うしかないのだが

この感情がなんなのかフエゴレオンは知らない

まだもう少し、そう思った事を何とか飲み込み立ち去る

目に入った窓ガラスに写った自分がなんとも情けない顔をしていたので深呼吸をし、気を引きしめた

これから戦闘任務が入っていたフエゴレオンは何時にもなく絶好調だったという

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