二人目の転校生
ポツリポツリと降っていた雨が、本降りになってきた
学校に着いた頃には雨音がうるさく感じるぐらいだった
今日、二人目の転校生がくる
今開いている席は律の隣か撫子が座っていない方の赤羽の隣
地味に近い
案の定暗殺者関連だと思うので是非席を変えて頂きたいがいまだ席替えの空気にはならない
席替えになったとして狭間と離れるのも嫌な撫子は珍しく大きなため息をついた
「珍しい、そんな大きくため息なんて」
「私だって人間だからため息吐きますー」
「はいはい」
狭間が撫子の頭をぽんぽん、と撫でるとガラっと扉が開く
殺せんせーと烏間ともう一人、白装束を着た全身真っ白の人
声的に男だろうか
覆面のようなものを被っており顔が見えない
全身真っ白だから自分のことはシロと読んで欲しいという男はどうやら転校生の保護者らしい
転校生は性格に難ありで、保護者同伴とのこと
何それ怖いと思っていると白が「おいで、イトナ」と声をかける
前方の入口を見ていると後方からの破壊音とともに男の子が入ってくる
え、待って、壁から出てきたぞコイツ
誰が修理するんだよ
呆然と見てると男の子と目が合った
何を考えているかわからない目だ
撫子は関わらないのが第一と決め込む
どうやら男の子、もといイトナも興味が無いのか殺せんせーの方を向き直っていた
悠々と俺は強い、アンタを殺す等々自信満々に語る
外から来たのに何で傘もさしてないのに濡れてないのかとやや挑発じみた感じに声を掛けた赤羽に近づき赤羽と頭に手を置き「お前はこの教室内で一番強いが俺よりは弱いから手は出さない」といい、「俺の目的はアンタだ、殺せんせー」と向き直る
そんなイトナに何とも言えない本当に困ったような困惑したような表情をした殺せんせー
だがイトナのマイペースで話が進んでいく中、殺せんせーを兄さんと呼んだことで表情は驚きに変わる
殺せんせーはアタフタと慌て出し、先生は1人っ子ですと言い張る
イトナはどこからどう見ても人の姿をしているので皆はったりだろうと思い呆れ笑ったのだが、イトナの行動で段々と表情に曇りが出てくる
まず、昼食に取っていた甘いものの数々
体力のそれを貪り食う姿は殺せんせーと共通している
それぐらいなら「甘いもの好きの男の子」で終わるのだが、食後にと殺せんせーが触手に取ったエロ本と同じ本をイトナも読んでいるのだ
「中学生がどうやって買ったのよ」
「気にするとこそこかよ!!」
バシンっ、と寺坂に頭を叩かれる
解せぬ
「でも、なんとかくそれで殺せんせーの兄弟って線、強くなったかもね」
「見た目全く似てないけどね」
そんなイトナは放課後、アンタを殺すと殺せんせーに宣言していた
***
放課後、シロに言われ一旦教室から出る
どうやら勝負のための準備をするらしい
「準備って何するのかな?」
「私が知るわけないでしょ」
グラウンドでナイフさばきの練習をしている撫子の横の階段に座って本を読んでいる
「こんな時まで暗殺訓練かよ」
「よくやってんなー」
寺坂達が傍に近づき、茶化す
撫子はへらりと笑った
「まぁ、暗殺術は覚えて損はないと思うからね」
「また親父絡みか?」
「ファザコンだよなー、本当に」
ケラケラとバカにするみたいに笑う吉田と村松になんだよー!とゴム製のナイフを振り上げ追いかける撫子
寺坂は以外に混ざらず狭間の横で見ていた
「アイツ、本当に馬鹿だな」
「知ってる」
「止めねーのかよ」
「何度も止めたわよ」
狭間の顔が微かに曇る
寺坂ははぁ、と大袈裟にため息をついてから撫子達の方に向き直る
「んな細けーことは気にしても仕方ねぇだろ!」
「アンタねぇ」
「おら、狭間も行こうぜ」
ギャーギャー騒いでる撫子達に向かって混ぜろと言わんばかりに走っていく寺坂をみて今度は狭間が息をつく
「五月蝿いわよ、アンタ達」
結局磯貝の教室集合という声がかかるまで騒いでることになる
「疲れた」
「騒ぎすぎなのよ」
ニヤニヤしながら構ってもらってよかったわねぇ、とふざけた調子で頭を撫でてくる狭間にムッとしながらもされるがままにしている撫子
そのまま教室に向かうと先に向かっていたクラスメイト達がざわついている
「なにごとー?」
「みろよ城戸」
声をかけた撫子に一番入口近くにいた三村が教室内を指さす
机でできた四角形のリング
白は全員集まったことを確認するとルール説明を始める
ルールは簡単
このリング内で殺せんせーと糸成が戦い、殺せんせーが死ぬかどちらかが場外に出れば負け
殺せんせーが場外に出た場合も無抵抗で死んでもらうとのこと
イトナは既にリングに入っているが特に何か殺せんせーに対抗する武器を持っているようには見えない
どうするんだ、と思っていると始まりのコングが鳴った
「!!?」
皆が一斉に息を飲む
触手
殺せんせーではなく、イトナの頭から2本の触手が出てきたのだ
クラスメイトに広がる動揺
そして
「その触手をどこで手に入れた!!」
シロに怒号を言い放つ
かつて、寺坂が潮田を使い殺せんせーもろとも自爆させようとした時にみたどす黒い怒りの表情
撫子は後ずさる
だがイトナはまったく気にしていないようだ
シロもシロで「保護者の援護」として謎の光で殺せんせーの動きを鈍くさせていく
シロに視線が向いているうちに殺せんせーの触手を何本か切り刻んでいた
意識をイトナに戻すも避けるので精一杯な殺せんせー
クラスメイト全員がこの勝負をみて思っただろう
殺せんせーはもしかしたら殺されるかもしれないと
そして、同時に
自分達の力で殺したかった
という思いが浮き上がる
潮田が悔しそうな表情で対殺せんせー用ナイフを握りしめていた
「あ」
視線を元に戻すとみた光景に撫子は間抜けな声をあげる
イトナの触手が溶けていたのだ
「生徒が落としたナイフが拾われてなかったみたいですねぇ」
いつもの食わない笑み
その触手にはハンカチごしに握られているナイフが
はっとしてみると潮田の手からナイフが無くなっている
「さぁ、次はこちらの番ですよ!!」
殺せんせーは脱皮し、その皮をイトナをおおい窓から外に放り投げた
つまり、この勝負
「殺せんせーの勝ちだああああ!!」
一斉に湧き上がる歓声
撫子もどこか安堵の息を吐く
「イトナくん、学校に来なさい、そして皆と一緒に学ぶのです、先生の殺し方を」
優しく諭すように語りかける殺せんせー
だが
「俺が、負けた?」
目が血走り、俺が負けるはずないと何度も繰り返し言うイトナに殺せんせーの声は届いていない
怒りに身を任せ、殺せんせーを殺しに掛かろうとした糸成と銃声
パタリと倒れるイトナを担ぎ上げた白は殺せんせーに糸成の休学の埋を伝えると立ち去ろうとする
殺せんせーがイトナは自分が預かるとシロを止めようとする
が、できなかった
対殺せんせー用の繊維で出来ていたらしい服は殺せんせーを拒む
シロはそのままいなくなってしまい、どことなくやるせない空気がE組を包んだ
でも、何はともあれだ
「殺せんせー死なないで良かったねー」
倉橋の言葉に賛同する者がいる中、殺せんせーは一人何故か縮こまっていた
「どうしたんだよ殺せんせー」
「先生、ギャグ系の愛されキャラ狙っていたのにあんなシリアス展開なるなんて」
「そこは自覚あったのかよ!」
「その触手をどこで手に入れた!!だっけ?あーんなにカッコよく言っちゃってねぇ」
綺羅々ちゃんが輝き出した
撫子はなんとも言えない表情で狭間を見つめた
「でも、あの触手っていったい」
「先生、教えてください、殺せんせーのこと」
疑問持ったクラスメイトを代表して磯貝が質問する
殺せんせーはため息をついて、では1つ、と答え始める
「実は先生、人に作られた生物なんですよ!!」
沈黙
「見りゃわかるわそんぐらい!!」
「その過程を説明しろって言ってんだよ!!」
「にゅやぁ!?う、う宇宙人とか近界人とかは思わないんですか!?」
「宇宙人ですか!?近界人ですか!?」
「先生は地球生まれの地球育ちの地球産ですよ!!」
「なら人に作られる以外ないじゃないかー!!」
ギャーギャー騒ぎ出す教室内に響き渡る殺せんせーの笑い声
「そもそもそんなことどうでもいいのです、第一先生の謎を知りたければ殺した後いくらでも調べられるでしょう」
ハッ、と表情が驚きに変わった
「なら、皆さんがやることは1つですね?」
殺せんせーを、殺す
皆がニヤリと笑う
「殺せるといいですねぇ、三月まで!!」
殺せんせーも楽しそうだった
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