夏を求めて

夏休みに入ってすぐだと思ったがすでに7月の後半となっていた

もう少しで夏期講習がくると思うと楽しみだ

沖縄に行くという事で今日は狭間と水着を買いに来た


「どれにしよう」

「これなんかどうよ」

「・・・綺羅々さんは私に何を着せたいんだい?」


狭間が撫子に見せたのはモノキニ

だが問題は水着の布部分がかなり少ないということだ

こんなものはどこかのビッチにでも着せればいいのに

撫子は却下と言うと別のものを見ていく


「これでいいかなー」

「えー、露出少なくない?」

「ねぇ、本当に私に何させたいの」

「まぁ、なんでもいいじゃない」

「なんでもいいなら私の自由でいいじゃん」


もー、と頬を染め水着を見ていく

すると狭間以外の声に撫子を呼ばれ振り返った

そこにはテスト前一緒に勉強した三輪の姿があった


「秀次くん」

「こんなところで何しているんだ?」

「今度沖縄で夏期講習あって、それでその」

「夏期講習なのに遊ぶ気満々だな」

「お恥ずかしい」


頬だけが赤かったはずが顔全体が赤く染まっていく

三輪は余り気にせず手に持っている水着を見た


「それにするのか?」

「うーん、デザインは可愛いんだけど」

「撫子に似合うと思う」


でも、と同じ種類の水着を探す

一つ取ると撫子に差し出した淡紅色と白のボーダー柄の水着を差し出した


「こっちの方が似合うと思う」

「本当?」


どうしようか悩む撫子をじっと見ていると後から誰かに殴られ振り返る

狭間が般若でも背負っているような顔で三輪を見ていた


「何してんの」

「俺もたまたま買い物に来ていたんだ」

「女性水着コーナーに?」

「上のスポーツショップにだ」


2人がバチバチと火花を散らしているとはつゆ知らず、撫子はうん、とうなづいて三輪に笑顔を向ける


「秀次くんが似合うって言うならこれにする」

「!!」

「ホルターネックにするの?」

「うん」

「こっちはいいの?」

「だからそれはいいって言ってんじゃん!!」


無駄に勧めてくるタンキニから逃れ、ビーチサンダルを見てくるとその場から離れる

三輪と狭間の間にある火花なまだ散っていた


「いいのか、行かなくて」

「アンタこそ、1人で買い物来たわけじゃないんでしょ」

「あ」

「あ、じゃねーよ!秀次!」


ぐわっ、と三輪の肩を後から組んでくる


「よ!久しぶり狭間!」

「久しぶりね、米屋」

「あれ?城戸ちゃんは?」

「ビーチサンダル買いに行った」

「水着って何?プールにでも行くの?一緒いこーぜ」

「沖縄行くのよ」

「あー、それは流石に一緒いけねーや」

「それよりいいの?」

「何が」

「他の男が撫子の水着みるのよ」


三輪は一瞬はて、と首を傾げた

狭間から話を聞きわかったが夏期講習はクラス全員でいくとのこと

つまり他の男子生徒もいる


「!!」

「あ、あんな所に水に濡れても平気なパーカーが」

「買ってくる」


三輪は白いラッシュガードを無造作にとると急いでレジに向かう


「あー、よかった、あの子買えって言っても金が勿体ないって買わないのよ」

「狭間は買わなくていいのかよ」

「私も水着で金ないのよ」

「へー、ほしい?」

「別に」

「ふーん」


狭間は素っ気なく返すと撫子を追ってビーチサンダルのコーナーに向かった

***

「撫子、これをやるから絶対水着を着たら着るんだ」

「え、でも秀次くん買ったんだよね?」

「いいから着ろ」

「じゃぁお金」

「いらないから」


ぐい、とほぼ強引に撫子に渡し、わかったと返事を聞くと満足気にうなづいた

その様子を不機嫌そうな狭間とニヤニヤ笑う米屋が見ている


「秀次の恋を応援してやってよ」

「いやよ、何であんなのに撫子を任せないといけないの」

「保護者か」


ぽん、と軽くチョップをかます

そしてはい、と紙袋を狭間に渡した


「何これ」

「城戸ちゃんとお揃い」

「は?」

「いいから貰っとけって」


はいはい、とやはりほぼ強引に紙袋を押し付ける米屋

狭間が渋々受け取るのを確認し、よし、と三輪と撫子に向き直る


「今度その水着で四塚市のプール行こうぜ!!」

「は!?」

「お、いいねー」

「何でよ!」

「あそこ温水プールみたいだし秋になっても大丈夫だろ」

「おい陽介」

「じゃぁ9月になったら行く?」

「撫子!」


三輪も狭間も互いに会いたくない

行くとしたら撫子と2人でいきたいものだ、と思っている

米屋はまーまー、と2人を宥める


「皆で行ったほうが城戸ちゃんも喜ぶじゃん」

「・・・」


撫子が喜ぶ、とだけで押し黙る

さすが城戸ちゃんだなー、と思いながら米屋はうんうん、とうなづいた


「おい、お前らもう終わったのかよ」


ぬっ、と現れた寺坂に撫子と狭間はお待たせと応えた

だが三輪や米屋からしたら不良が声を掛けてきたようにしか見えない

しかも後ろには村松と吉田の姿

不良だ

撫子と狭間を庇うように前に立ちふさがる三輪と米屋


「あ?んだよ」

「2人に何の用だ」

「いや、一緒来ただけだけど」

「そんなわけあるか!撫子がそんな不良と・・・いや、撫子だからな、不良の面倒みて仲良くってことも」

「ふざけんな!面倒見てやってんのは俺らの方だわ!」

「私は面倒見てやってるけどね」

「面倒みてもらってる代わりに喧嘩を穏便に済ませるように頑張ってるよ」


ヘラリと笑う撫子と少し誇らしげに口元を上げる狭間

え、友達なの?本当に?と交互に見合わせ、撫子の大丈夫だよ、という言葉で2人の前からどけた


「右から村松、寺坂、吉田、今私達がよくつるんでる連中」

「こっちが三輪秀次くんと米屋陽介くん」


自己紹介を済ませ、どことなく気まずい空気でよろしくと言う


「じゃぁ私達まだ行きたいところあるから」

「おー、じゃぁまた今度な」

「連絡頂戴」

「え、俺2人とも連絡先知らないんだけど」

「おいもう行くぞ」

「え、あ、秀次くんが私の知ってるから大丈夫だよ!」


狭間に腕を引っ張られバイバイと手を振る撫子の御一行

三輪と米屋は呆然と眺めていた


「じゃ、俺らも行きますか」

「そうだな」


上へと向かうエスカレーターに乗る


「楽しみだなー、プール」

「・・・そうだな」


近界民への復讐へと囚われていた友人が、好きな子と一緒に出かける約束をして笑えている

俺本当に優しいなぁ、と自分の下心は棚の上に上げて満足気に笑うのだった

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