標的と殺し屋

「皆さんはじめまして、私が月を爆った犯人です」


黄色いタコのような巨体


「来年には地球も爆る予定です」

「君達の担任になったのでどうぞよろしく」


この生き物は一体なのなのか、説明をしてほしい

撫子はため息をつく

クラスメイト達は動揺しているようだが撫子は冷静だった

それもそのはずだ

父親が界境防衛機関、通称ボーダーのトップに存在している

化け物じみたものにはなれていた


「なんか、凄いのきたね」


撫子は前の席にいる狭間綺羅々に声をかける

狭間は振り向くことはなく、アンタの父親の相手してるよりはマシじゃない?と言った

国家機密の超生物

例えどんな事があろうと他言無用

家族友人、この教室のもの以外に知られてはならない

知られたら記憶消去の処置がくだされるらしい


「アンタ、大丈夫なの?」


狭間の問いに撫子は何が?と聞き返す

惚けた事に気づいたのか否か

狭間は何でもないと言い、それ以降このHRの時間は口を閉ざしたままだった

***

昼休みが終わり、お腹の満腹感により眠気を誘う午後の授業

今日は国語だ

撫子はくあぁ、と欠伸をし、黄色い触手をうならせた超生物をみる

相変わらずの食えない笑みを浮かべ、黒板に文字を書いていく

国語は苦手なためか、眠気を誘う

テスト前は目の前にいる狭間に泣きつく次第だ

授業も後半にさしかかり、超生物は最後に触手なりけりでしめる俳句を完成させた者から帰ってよしと言う

触手なりけりってなんだ、触手はどの季節の季語なんだ

撫子は疑問を抱くがまずなりけりとはなんだ、となり頭を抱える

まったく話を聞かなかった

電子辞書を取り出し検索するも理解ができない

綺羅々ちゃん、と前の席に声をかけようとすると「先生、できました」と声が聞こえた

潮田渚

男の癖に髪型がツインテールな変なヤツ

撫子の認識はそれぐらいだ

ふと、横をみるとニヤニヤしている寺坂竜馬が視界にはいる

何で笑っているんだろう?

撫子が疑問に思っていると、クラスメイトの残念がる声が聞こえ渚と超生物の方をみる

どうやら渚が暗殺に失敗したらしい

あらら

撫子の意識が早く帰ろう、とノートに移る直前

渚は超生物に密着するほど近づく

そして、横で動く気配

バンっ

渚と超生物の真ん中で、爆発がおきた

***

「ちょっと!渚に何させたの!?」


クラスメイトの声にはっとし、我にかえる

隣の席の寺坂はニヤニヤと笑い、治療費ぐらい報酬からどうのこうのと言いながら渚と超生物に近づく

狭間が呆れている様子をみると、彼女は何も知らなかったんだなと安心する

寺坂グループ

気づいたらそういう風に分けられた撫子と狭間の所属グループ

今回渚に超生物暗殺を嗾させたのはこのグループの男子共だ

所謂いじめっ子グループ

多分、一番このクラスに馴染んでいるであろう者達だ


「アイツら馬鹿ね、本当に」

「潮田くん、怪我してないかな」


先ほどの爆発を考えるとそれなりの怪我は覚悟しないといけないだろう

だが起き上がった渚は無傷だった

透明なビニールのようなものをかぶって


「実は先生、月に一度脱皮するんです」


御丁寧に脱ぎたての皮はそこらの防護服よりも頑丈で、傷一つつかないだろうと説明つき

すると、一瞬消えたかと思うとすぐに姿を現しバラバラと何かを落とす


「お、おいこれ・・・」


クラス全員の表札

勿論その中には城戸の文字もあった

それと同時に、黄色い触手がドス黒くなっていく様に恐怖がつのる

国との契約で生徒達には手を出さない

だがその家族は対象外だと

もっと友人を大切にしろ、自分を大切にしろ

周りが怯えている中、撫子はどうでも良さそうに見つめていた

いっそのこと、この超生物に殺されればあの人は私をみてくれるのではないか

相変わらずの思考に呆れてしまう

撫子が考え事をしているうちに事態はおさまったのか、また黄色い丸をした食えない笑みにもどっていた

ふと、誰かが超生物に名前を問う

名乗る名前もない、と返す超生物


「じゃぁ、殺せんせーは?殺せない先生で殺せんせー」


超生物は嬉しそうに笑う(もともとの笑みがもっと緩みだし、本当に嬉しそうに)

余程気に入ったようだ

そこでチャイムがなる

狭間が、帰ろうと撫子に声をかけた


「触手なりけりまだできてない」

「真面目か、んなの皆やんないで帰ってるよ」

「そうなの?」

「そうそう」


狭間さん!真面目な生徒を不良の道に連れ込まないでください!!

目元に、涙を浮かべた超生物、もとい殺せんせー

次々帰っていく中撫子だけ残ろうとしたのが嬉しかったようだ

だが、ガン無視である

狭間は撫子を言いくるめ教室を出ていく

結局その日の放課後の教室では、殺せんせーのすすり泣く声しか聞こえなかったらしい

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