特別夏期講習

椚ヶ丘中学校特別夏季講習当日

ホテルのある沖縄の孤島には船で移動

船で案の定寄っている殺せんせーを横目に海を楽しむ

酔っているのに何故殺せないんだ

島につくとホテルのサービスでジュースを貰った


「これ美味しいわよ」

「本当?」


それでも手はつけない

なんとなく、飲まない方がいい気がしたのだ

でも、それを他の人に強要する必要もない気がしたので、撫子はそのまま気にせず先に行った寺坂の後を追った


「あつーい」


予定通りに暗殺の準備を終わらせ、自分のしたいことを始める

自分のしたいこと、それは・・・


「来て早々お土産かよ」

「いやぁ、後々だと忘れちゃいそうで」

「ま、せっかくの沖縄だしね」


ホテル内の売店で何かないかと探して見る


「シーサーだって」

「物はだめよ、アイツ絶対ずっと持ってるから」

「秀次くん優しいからねー、捨てられないんだよ」

「つか、凄く今更だけどさ」

「何?」

「アンタ、アレが三輪秀次だってよくすぐにわかったわね」

「あ?どういうことだよ」


撫子が反応する前に寺坂が聞いてくる

寺坂にしてはあの一件が初めての対面

意味がよくわからないのは当然だろう


「アイツ、昔はよく笑う感じの奴だったのよ」

「嘘だろ!?」

「あー、確かに今はクールって感じだよねー」

「その一言で済むアンタが凄いわ、私アンタが普通にしてるから合わせたけど最初分からなかったのよ」

「えー、そうかなー」


あ、これどうかな?と一つのキーホルダーを見せる


「っふ!!」

「マジかよ!それ三輪にやんのか?」

「えー、変?」

「変じゃないからっ、それあげるときに『秀次くん、携帯とかにつけてくれると嬉しいなぁ』って言いなさいっ」

「?わかった」


爆笑する面々に素直にうなづく撫子

そんなに変かなぁ、と思いながら購入するためカゴに入れる

父親の分もと色々探して地酒があるのを見つけるとそれにしたいな、と思うが未成年は買えない

うーむ、と悩むとイリーナに声をかけられた


「何してんのよ」

「イリーナ先生、えっと」

「あー、お酒?ダメよアンタ未成年なんだから」

「でもお父さんに」

「じゃぁ私買ってあげるからお金後でちょーだい」

「ありがとうございます」


傍からみたら父親想いの生徒のために一肌脱ぐ教師の図にもみえなくはない

だが、問題はそこではないのだ


「アンタ、何時からビッチと仲良くなったのよ」

「夏休み半ばぐらい?」

「何があったの本当に!?」


狭間からしたらあんなに毛嫌いしていたイリーナと仲良くしている撫子が異常にみえるのだ

2人の間に何かがあったのだと思い黙っていたがこれは口を出さずにはいられない

薄々感づいていた寺坂達も驚きを隠せないでいた


「いやね、なんか色々誤解があって、漸く和解した感じ?」


ねー、とイリーナに笑いかけるがイリーナは複雑そうに顔を引き攣らせるだけだった

狭間は何かあったな、とは思うが突っ込むのはやめておくことにした

きっと、大事ないことなのだ、と1人で切り上げ、根掘り葉掘り聞き出そうとする寺坂を肘でどついた


「そろそろ殺せんせーとダイビングの時間じゃない?」

「あのタコ水ダメなのに大丈夫なのか?」

「殺しやすくなんじゃん」


楽しそうに売店からいなくなる一行

彼らは知らない

防水機能を備えた魚の形をした完全防備な水着をきてダイビングを楽しむタコの存在を

そして、撫子が「せめてタコの水着にすればいいのに」と的外れな感想を抱くことも誰も知らない

***

本日のディナーは客船での豪華な振る舞いだ

船に乗る前に入念に銃の手入れをした

このディナーが終われば後は殺るだけ


「このお肉おいひい」

「はい、撫子」

「あー」


美味しそうに食べる撫子の口に肉を詰め込んでいく狭間

それでいいのか、と寺坂は2人を見るが気にしない

ふと、愉快そうに笑う殺せんせーの声が聞こえたのでそちらをみてみる

が、殺せんせーの肌は昼間遊んだ時にできた日焼けによって真っ黒でどっちが前で後ろなのかわからない状態だった


「何かどっちに向かって話せばいいかわからないね」

「城戸さん、ちなみにそっちは右ですよ」


まったく仕方ないですねぇ、と殺せんせーが笑う


「こんな時の為にこれがあるんですよ!!」


ばっ!と服を脱ぐかのように脱皮をした殺せんせー

脱皮した直後の皮は相当丈夫で身を守ることすら出来るのにも関わらず、だ


「・・・あ」

「・・・」


しまったー!!という顔をして触手で顔を覆う殺せんせー

何でこんなどドジを殺せないのかと悶々と悩む

撫子はというと笑いながらどさくさに紛れてタッパーに料理を詰め込んでいた


「何してんだよ」

「美味しくてつい」


貧乏か、と村松が撫子の頭にチョップを落とす


「よし!じゃぁ皆!殺すぞ!」


おー!と声を上げ、ディナーが終わり、目的地に着いた面々は舟から降りていく

海の上に建てられたペンション

そこが今回のE組の暗殺の舞台だ


「編集お疲れ、三村くん」

「いやー、腹ペコペコだよ」

「大変だったね、これ、映像見せてる間に食べちゃいなよ」


撫子は労いの言葉を掛けながら先ほど詰めたタッパーを三村に渡す


「準備いいな」

「暗殺の作戦聞いた時これ三村くんご飯食べれないヤツだと思って、せっかく美味しいの食べれるかもなのにもったいないじゃん?」


いい奴か

三村は撫子にありがとうと伝え、タッパーの入った袋片手にスクリーンの前に立った


「暗殺の前に俺が作った動画を見てもらうぜ殺せんせー」

「最高傑作だ」


部屋の中を暗くし、スクリーンに映像を流す

プロジェクトAC

それが映像のタイトルらしい

映像が流れてすぐ、後ろで移動する音が聞こえる

それだけなら殺せんせーには簡単に居場所がわかるだろう

でもそれは、平常心であってのこと

これから観る映像は殺せんせーを平常心ではいさせないもの


「あれ、使ってんだよね?」

「そうそう」


夏休み、潮田達が仕入れたもの

それに加え今まで溜め込んでいた殺せんせーの弱みを全て詰め込んだ映像

殺せんせーはまだ余裕そうだ

だが映像に三村、岡島、前原がでて、ある一言で表情は一変する


『買収は、失敗した』


「失敗したああああああ!!?」


殺せんせーがなりきれていないカブトムシのコスプレをしてエロ本の山に座っている映像

撫子はうわぁ、と顔を顰めた

ちなみに最近のブームは熟女OLと語っている

そして続くのは女子限定ケーキバイキングにならぶ女装した殺せんせーが取り押さえられるもの

何故人ではないとバレなかったのかが不思議なくらいだ

他にもティッシュ配りのティッシュを分身で何個も手に入れ、唐揚げにしている映像

狭間は撫子が避けずんでいるというオプション付きで殺せんせー後ろでいびり倒している

そんな映像が後一時間流れる

一時間後

殺せんせーは既に憔悴していた

***

映像が終わる数分前から溢れてくる水に、殺せんせー気づくことは無かった

満潮を利用し、殺せんせーの触手をふやかす


「どう?殺せんせー、船で酔って、恥ずかしい映像観せられて、水ふくんじゃって」

「充分動きが鈍くなってるよね」


慈悲など存在しない

テストで触手を勝ち取った8名は予定していた位置につき、銃を構える

暗殺開始

磯貝と律の声で、銃声が響いた

まず、予定通りに8本の触手を撃つ

それでもまだ余裕そうな殺せんせー

でもそれだけでは終わらない

触手を撃ち終わりすぐ、チャペルが壊れ、フライボードで作られた水圧の檻が完成する

フライボードに参加していないメンバーが水の中から銃で撃つ

殺せんせーは自分への攻撃へは敏感

だからあえて殺せんせーへの攻撃はしないで逃げ道を塞ぐ

そしてトドメは、水の中でずっと待機していた速水と千葉

殺せんせーはきっと、陸に仕掛けた2人の匂いが着いている服のダミーを警戒していたはず

突如現れた2人に、驚き、もう避けることは出来ないようだった

2人の訴える弾が殺せんせーに向かう

大爆発が起きた


「うわっ」

「っ!?」


周りが海で、落ちても怪我をすることは無かった

体制を立て直し、殺せんせーが沈んだだろう場所を警戒して銃を構える

ぶくぶくと、泡が浮いてきて・・・


「・・・」


浮かんできたのは透明な球体の中に入った顔だけの丸い殺せんせー

殺せんせー曰く、最終防御形態

この姿になれば24時間はこのままらしい

しかし、この状態で対殺せんせーBB弾のプールに入れたとしても元の姿に戻る時のエネルギーの一部を爆発させれば脱出できる

また、例えばこの姿で遠い宇宙の彼方まで飛ばされたらどうにも出来ないが、それを一日以内で実現させる技術はまだ地球には無いというのも計算済み

全て、対策されている

撫子はふと、毎日不定期に出現する門を思い出す

そこに放り込めばもしくは

狭間と目が合った

撫子は困ったように笑ってから首を横に振る

そんなことはしたくなかった

結局この暗殺は失敗したのだ

正直、手応えはあった

殺せたと、思った

落胆が酷い

ホテルのバルコニーで少し休んで、シャワーでも浴びて早く寝たいと思った時だ

隣に座っていた狭間が撫子にもたれ掛かってきた

撫子はどうしたの?と聞くが返事はなく荒い息だけが聞こえた


「綺羅々ちゃん?」


ずるり、と落ちていく狭間を支え声を掛ける

狭間がおかしい事を伝えるため周りを観ると、他にも数名が同じような症状で倒れていた


「なんで・・・」


撫子はハッとした

島についてすぐ、ジュースを貰った時の「なんかやだ」と思った時のこと

多分、否、絶対にあれだ

皆に飲まないように言えばよかった

変だと思われても、止めればよかったのだ

撫子がそんな考えに陥ってすぐ、烏間の携帯がなる

烏間が電話にで、その音声を律を通して他のものの携帯でも聞こえるようにする

相手は変声機を使っていた

相手はの口振りからこの状態を作ったのはその人物だ

相手は球体の殺せんせーを今動ける者の中でもっとも小さい男女に一時間後、普久間殿上ホテルという崖の上にあるホテルの一番上のスイートルームまで持ってこいと要求した

そこのホテルは所謂、裏社会のような世界の一部で、どこぞの社長や政治家などの裏取引などにも使われたりする国でも中々手が出せない場所のようだ

流石にそんな場所に小さい2人は辛いだろう

せめてもの慈悲で武器が無くても腕っ節のいい奴を1人つさせてやる

でも男はだめだ、女にしろ

フロントに話は通してあるから、普通に来れば薬と一緒に殺せんせーと交換

しかし外部と連絡を取ったり、時間が少しでも遅れたら薬は爆発する

そして嫌味のように殺せんせーを行動不能にしたことを感謝され、通話が切られた


「どうすんだよ!!俺達殺されるためにこの島来たわけじゃねーんだ!!このままだと沢山死んじまう!!」


慌て出す吉田に原が、なだめ落ち着かせるが彼女もウイルスに感染している

薬を早く手に入れないといけない


「言う事聞くのも危険過ぎんだろ、一番チビの2人と女用心棒だろ、チビ2人は確実に人質としてやられんじゃねーか!!」


寺坂は茅野と潮田に手をグーで頭に乗せながら怒鳴る


「正直、女で用心棒でまともに動けそうなのは城戸さんだよね」


赤羽が、冷静に撫子を見つめた

撫子としては、相手をぶん殴りたい気持ちもあったから、願ったり叶ったりだ


「私、やります」

「却下だろーがふざけんな!!」


がっ、とチョップが落とされる

落としてきた寺坂を見ると寺坂は舌打ちをした


「お前の事だ、本当に言葉通りに命をかけてこのチビ共守るだろうな!加減なんかわからず、死ぬまで!!ただでさえ連れ2人やられて腹経ってんのにお前まで馬鹿言うんじゃねーよ!」


寺坂の言葉に、少しだけ安心した気がした

そういえばあの時も、と1年の時を思い出す

今はそれどころではないのだが


「要求なんか全シカトだ!今すぐ都会の病院に運んで!!」

「賛成できないな」


寺坂の言葉にすかさず否定をいれたのは竹林だった

未知のウイルスなら、抗ウイルス薬は病院に存在しないはず

そっちに運んで対策できず、薬が手に入らない方が患者に悪影響だ、と


「僕が応急処置だけはする、早く皆は薬を」

「竹林・・・」


打つ手はなし

でも、仮に渡しに行ったところで無事に帰してくれるのかどうか

リミットは一時間

皆が、頭を抱えた時だ


「いい方法がありますよ」


殺せんせーが言う


「律さんに頼んだ下調べが終わりました、元気な人は来てください、汚れてもいい格好でね」


殺せんせーは不敵に笑った

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