イリーナの実力

全員が上に着くとまず律が最終確認をしてくれる

ホテルのエレベーターは専用のICカードが必要なため使えない

つまり階段を使わないといけない

その階段も複雑で同じところには設置されておらず、長い距離を歩くことになる


「テレビ局みたいな構造だな」

「どういうこと?」

「テロとかの対策で複雑になっているらしい」


つまりはこの長い距離をこれから見つからず移動しないといけない

撫子はごく、と唾を飲んだ

警備がいないことを確認し、暗証番号式のロックを律を通して解除し、中に入る

映画やドラマに出てくるような華やかな廊下

特に人はいない

だが、すぐに難題が待ち構えていた


「見張りだ」


目の前には階段とホールへの入口

その入口にはドア等はなく、階段に向かうにはその前を通らないといけない

ホール内にいる警備に見つからないように

どうするか、ここでもうギブアップになってしまうのか

すでに皆が諦めかけていた時だ


「何を悩んでいるのよ、普通に通ればいいじゃない」


イリーナは警備の人数を確認すると、ふらっ、と中に入っていく

まるで酔っているかのように歩いていくと、警備の1人にぶつかった

そこからはイリーナの独壇場だった

ピアニストと偽り得意のハニートラップで男を翻弄する

中央にあったピアノの前に座り、ピアノを引き始めたら、誰もがイリーナに釘付けとなった


「幻想即興曲ですね」


素晴らしいピアノの音色と共に己の全身を使って色気を晒し周りを魅了する

即ち音"色"

撫子も間近で聞き入ってしまいたい、と思った時、その音が止まった


「ねぇ、そんな遠くではなくもっと近くで聞いてくださらない?」


他にも遠くにいた警備を近づかせ、気づかれないようにイリーナはサインを送る

"20分稼いであげる、行きなさい"

ハッとし、急いで階段へと向かう

そこにいた全員が、魅了されるところだった


「優れた殺し屋は万に通ずる、君らに会話術を教えている彼女も世界で一二を争うハニートラップの達人なのだ」


そうだ、だからあの人はあそこで教師をやっているのだ

殺せんせーは自分が動けなくても安心だと笑った

入口の厳しいチェックが逃れれば後は客のフリをして内部にいられると烏間は言う

中学生の団体がこんな所に、と思うがどうやら金持ちのボンボンの子供がよくいるらしい

甘やかされ王様のように育てられた子供はあどけない姿のうちから悪い遊びに手を染める


「なので皆さんも世の中舐めきってる表情で歩いてみましょう、さぁ!」


殺せんせーの言葉とともに皆オーバーなくらいに舐め腐ったような表情をする

そんななか撫子は1人しゃがみこみ、所謂うんこ座りをし、腕を足にもたれかけていた


「城戸、それは貧乏田舎のヤンキーだ、違う」

「な、舐め腐ってはいるよ」

「舐め腐っている方向が違う」


こいつ本気でやってるから厄介なんだよなー、と寺坂は思う

とりあえず撫子を立たせ、移動することにする


「我々は敵の顔を知らない、敵も客として我々に襲いかかるかもしれません、皆さん気をつけて移動しましょう」

「ちぃーっす」


しばらく撫子は納得出来ないような不服そうな表情をしていた

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