このエールは届くのか

6階に上がるとそこはカジノやらバーカウンターやらがあるパーティルームのようになっていた

7回からVIPルームで、専用の鍵がないとそこに入れな

パーティルームの内側から鍵を開ければ中に入れるのど

今いる所から反対側に上りの階段があるのだが、大勢過ぎると悪目立ちするだろう

こういう所は女子の方が警戒されにくい

女子だけで潜入し反対側まで行き鍵を開ける

でもやはりいくら暗殺の訓練を受けていても女子

何人か男子が渋る


「じゃぁこうすればいいじゃん」


赤羽がどこから出したのか女物のの服を取り出す

どうするのだろうか

皆それぞれ首を傾げた




「まぁ、何とかなるよ」


ほぼ半泣きというか恥ずかしさで前を見ていられない潮田に撫子は元気づけようと声をかける

ありがとう、と困ったように笑う潮田に撫子も苦笑いを返した


「うわっ」


どん、と誰かがぶつかり撫子が少しバランスを崩してそれを潮田が支える

ぶつかったのは髪が長めの男子でその子は焦ったようにごめんなさいと言った


「私は大丈夫です、貴方は大丈夫ですか?」

「あ、ぼ、ぼく」


遠くから聞こえた見つけたぞ、という声に過剰に反応したその子は撫子の腕を掴んで走り出したのだ


「えええ!?」

「ちょっと!!」

「何とかするからすぐ合流する!!」


何とかすると言っても何も策はないのだが

撫子ははぁ、とため息をつく

走り、ようやく止まった場所は運良く男子との合流地点の近くだった


「す、すす、すみませっ」

「とりあえず落ちつこう?」


もっと堂々としていた方がここの空気には紛れられるよ、というと漸く深呼吸をして落ち着きを取り戻してくれた

そして自己紹介をしてくれた

名前は唯我尊

歳は一つ下で結構有名な会社のご子息といったところらしい

話を聞くところによると唯我は薬には手を出してはいないものの、ここにいる子供同様この場を楽しんでいたらしい

そんな最中、ガラの悪い連中にぶつかってしまい、今逃げているということ


「なんというか、うん」

「かっこ悪いってぐらい、自分でもわかっている」


それでも、ここで威張っていないと自分の居場所がなくなる

それが、とても怖い


「なんで場所がなくなるの?」

「え」

「ここで遊んでないと、場所がなくなるの?」


撫子は特に関心無さそうに携帯を眺めながら言った

そんな撫子をみて、唯我はふと思う

親のスネをかじり、遊びまくっている自分の居場所とはどこなのかと

もともと、そんな場所があったのか、と

なんとも無い感情が唯我の心を蝕んでいく

僕の居場所なんてどこにも・・・


「よくもまぁ逃げてくれたなぁ糞ガキ」


唯我の肩を掴んだ男の顔は怒りに歪んでいた

唯我は小さく悲鳴をもらす

これは、自分が遊んできた付けなのか

もう、手遅れなのか・・・


「まぁ、待ってくださいな、お兄さん」

「あ?」


威圧的に撫子を見てきた男たが、それぐらいで怯む撫子ではない

自分に向かってくる悪意、憎悪、殺意には慣れている


「許してあげてくださいよ、一回り以上も年下のやったことなんて」

「わかってねぇなアンタ、そういうのはこの歳のうちに教育すんだよ」

「じゃぁ、お兄さんには教育のし直しが必要なんですかね?」


売り言葉に買い言葉

頭に血がのぼりきっていた男は撫子の胸ぐらを掴み、服を持ち上げる


「生意気言ってんとどうなるかわかってんだろうなあァ゛!?」

「わかってるかどうか聞きたいのはこっちですよ、お兄さん」


男の腕を掴み、そのまま捻る

顔を痛みで歪ませ、手を離す男の胸を軽くおし、距離を置く


「まだ、対処法は沢山ありますが、どうしますか?」

「っ」

「あと、流石にやりすぎです、暴行罪や脅迫罪とは言いませんが、そこそこ厄介なことにはできますよ」

「んなのここじゃぁ関係ねぇだろ!!」

「"ここ"では関係ないですが、外はどうでしょうかね」


唯我が割と有名な企業の息子であること

身なり的に男の方がそういう立ち位置は弱いだろうという予想

そして撫子は携帯の連絡アプリの画面をチラつかせる


『写真よろしく』


その下には遠くから拡大したような少し粗めの画質ではあるが確実に撫子と唯我に暴行を加えようとしている男の写真

撫子は追い討ちをかけるように、自分で殴って殴られたとでも言いましょうか、と言った

少女暴行

今では簡単に警察がお世話してくれるだろう

暴行前ではあるが写真はある

男は舌打ちするとその場から離れて行った


「大丈夫?」

「え、あ」


怪我は無さそうな唯我をみてほっ、と息をつく


「私はカッコ悪くてもいいと思うよ」

「え?」

「カッコ悪いところから這い上がるのってさ、ちょっとかっくいいじゃん?」


へらりと笑う撫子をぼーっ、と見つめる唯我

撫子は友達が待っているからとそこからいなくなった


「かっこ悪い、ところから、這い上がる」


どうすれば這い上がれるか唯我はまだ知らない

でも、それでも

もし、あの人にかっこいいと言われたら

少し、嬉しいかもしれない

唯我は真っ直ぐと、前を見つめた


「ごめんね、遅くなった」

「僕もさっき来たところだし大丈夫だよ」

「あれ?潮田くんも離れてたの?」

「うん、ちょっと捕まってて」


それは後ろで伸びている男とか呆然と潮田を眺めている男の子とか関係あるのでしょうか、と聞くのを堪える撫子

伸びている男のおかげで楽に鍵をあけ、VIPルームのある7回へ向かう事かできた


「あ、着替えちゃうんだ」

「そりゃ着替えるよ!!」


潮田が着替え終わるのを待つことにし、少しだけ時間に余裕が生まれる


「大変だったね、城戸ちゃん」

「そうでもないよ」

「でも、服つかまれてたじゃん」

「まぁ、なんとかなるかなー、と」

「なんでそんな楽観的なのよ」


気をつけて、と女子達に注意され、撫子ははーいと答える

かっこ悪い私にも、居場所はあるんだからきっと大丈夫

撫子は心の中で唯我にエールを送ったのだった

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