決着

爆発したケースを見て、皆呆然としてしまった

あのケースが無ければ、皆助からない


「あ、ああ」


皆の震えた声や泣く声と、鷹岡の高笑う声

潮田はチラリと寺坂を見て、そして鷹岡に視線を戻した

潮田の中には、確かに殺意が芽生えていた


「し、おたくん」

「ここまでして、最後にこんなことをするなんて」


殺してやる

撫子や鷹岡にしか聞こえない音量でそう呟く

鷹岡は待ってましたと言わんばかりにナイフを潮田に放り投げる

潮田を痛ぶり、完全勝利をおさめる

潮田がナイフをとり、ゆっくりと鷹岡に近づき・・・


「ふざっけんじゃねーぞ!!渚!!」


ごん!、と潮田の頭に何かが投げつけられ、息を切らしながら寺坂が声を張り上げた


「テメェ今!!俺をみて!!哀れんだみたいな目ぇしただろ!!」

「!」


寺坂の体調の悪さに他の面々も気づいたのか、落ち着けと止めるが止まらない


「あとな城戸!!テメェはいい加減父親離れしろや!!そんなコトぐれぇで泣きべそかくな!!」

「ううう」


寺坂に叱咤され、何とか涙を止めようとする撫子


「それと!!少しはお前は俺を心配しろ!!後でぶん殴る!!」


あと、お前の直感で皆大丈夫だって言ったんだから、なんとかなるだろうが

寺坂の言葉で、ハッとした

それから薬を盛られてるのに元気だなぁ、と場違いにも取れることを思いながら少しだけ口元をゆるめる


「バカだなぁ、寺坂くんは」

「だね」


潮田も落ち着いたのか寺坂が投げてきたものを拾っていた

それを腰に括りつけ、ナイフを手に持ってゆっくり深呼吸する


「いいか渚、死なない程度にぶっ殺せ」


真っ直ぐと鷹岡を見据え、近づいていく

殺意をこめて、真っ直ぐ

鷹岡が殴りかかる体制をとる

それでも気にせず真っ直ぐ進む

ナイフを振り上げ、そして・・・

パンっ

ナイフから手を離し、鷹岡の顔の前で手を叩く

いつぞやにロヴロから教えてもらった必殺技"猫だまし"

必ず殺す技、ではなく必ず殺す事ができるようにする技

相手の脳を麻痺させ、一瞬の動きを止める

そして、その隙をついて、仕留める

バチバチと音が聞こえた

鷹岡が怯んだところに、腰に付けていたスタンガンを当てたのだ

猫だましによる麻痺とスタンガンの効果もあって、鷹岡は膝をつく

そのままたっぷり首に電流を流せば、気を失うだろうという寺坂


「城戸さん」


はい、と渡されるスタンガン


「やられっぱなしは嫌でしょ?」


撫子暫しスタンガンを眺めてからコクン、とうなづくがそれを受け取らず鷹岡の目の前まで移動した

こんな男に、こんな惨めな思いをさせられたのか


「貴方は、可哀想な人ですね」


ぱしん、と平手打ちをする

鷹岡は何をされたのかわかっていないのかただ呆然と撫子を見ていた


「潮田くん、私はもう充分だよ」

「わかった」


潮田はトドメをさすべく、鷹岡の前に移動する

潮田は思う

自分はこんな大人にはなりたくない

でも、反面教師でも立派な教師だ

自分達に色んなことを教えてくれた

だから、だから・・・


「ありがとうございました、鷹岡先生」


綺麗な笑みを浮かべて、鷹岡の首にスタンガンをつけ、電流を流す

鷹岡の意識は、撫子の蔑んだような瞳と、潮田の笑顔を交互に、途絶えて言った

***

ラスボスは倒した

でも、ワクチンは手に入らなかった

これでは皆は助けられない

鷹岡を倒して喜んだのもつかの間に襲い掛かる負の感情


「あーあー、なにシケたツラ下げていやがるんだ」


屋上出入口の方から聞こえた声に皆一斉に振り返る

鷹岡に暗殺を依頼されていた殺し屋達だ

こんな所でまた戦わないといけないのか

でも、今は烏間も回復している

皆が皆、体制を整えるのをみてガストロが笑った


「俺達ゃもうそんな気はサラサラねーよ!」

「ふざけんな!!」

「解毒薬が爆発させられて!こっちも黙ってはいられないのよ!!」

「そっちの毒使いにまた作ってもらわないといけないしね」


やる気は充分

というE組生徒を見てまたケラケラと笑い出した


「そんな必要はないよ」

「そんなわけ!!」

「え、無いんですか?」

「城戸!?」


素直に聞き直した撫子に皆頭を抱える

これも撫子の直感なのか、そうなのか


「そ、ないの」

「お前らに盛ったのはただの風邪菌みたいなものぬ」


ボス、鷹岡の話の話を聞いて毒を盛る奴らを助けるつもりはとうにないとは知っていた

堅気の中学生を大量に殺す

それがこれからの暗殺人生にどう影響するか

3人で話し、必要なのはガキを脅すのに必要な時間とここにおびき出すための理由だと考えついた

なら、ちょっと体調を悪くさせれば充分だと踏んだため、本来使う予定だった毒とは別のものを盛ったらしい

堅気の中学生を何人も殺して殺し屋としての地位を失うか、毒をすり替えて殺し屋としての信用を失うか

地位を失えば元も子もない


「あの」

「んー」

「最初から、私達殺すつもりありませんでしたよね」

「だから俺達は」

「鷹岡・・・ボスに伝えるつもりもなかった」

「!」


ありがとうございました、と頭を下げた撫子

このガキはどこから気づいていたのだろうか


「俺達がお前等を殺すのはお前等が有名になって依頼がきてからだ、ぬ」

「せいぜい偉くなれよガキども!!」


グリップはいとも簡単に警戒していた赤羽の頭を軽く叩いてから国が用意したヘリコプターに乗る

他の2人も続いて乗った

今回のことについて、色々話を聞くらしい

その後は、自由の身だろう


「あ、そうだ」


ポイ、と投げられた小さな瓶

その中の錠剤を飲ませたら後は寝込む前よりも元気になると言われたので感謝の言葉を伝え、とりあえず寺坂に飲ませてみた


「お前、よくまぁ警戒せずに飲ませるな」

「嘘はついてないっぽいし・・・多分」

「おいこら」


吉田にチョップをされ、うー、とうめく


「殴んのは後でな」

「え、あれ本気なの」

「あたりめーだ!!」


首に腕を回されそのまま軽くしめられる


「俺達も撤収するぞ!」


皆もまた、ヘリコプターへ乗り込む


「なんか、疲れたね」

「ま、色々あったからな」


島で遊び、殺せんせーを殺す計画を実行し、失敗し

毒が盛られ、助けるために危険なホテルに潜入し

思いもよらぬ出会いが、再会があり

凄い人だと再認識したり

こんな大人になりたくないと思ったり


「早く薬届けないとね」

「おー・・・」

「何も、できなかったなー」


ぼそ、と呟いた言葉を寺坂は見逃すことはなくバシンとおでこを叩いた


「痛い!」

「馬鹿なこと言う度にやるからな」

「馬鹿なことって!?」

「馬鹿なことだろ」


俺より頭いいんだからしっかりしろよ、とため息をついて腕を組み、撫子にもたれ掛かるようにして目を瞑る

お前がいなかったら、俺もカルマも思いっきり睡眠スプレー被っていたかもしれないし、お前が色々持ってきていたから拘束するのが楽だったんだ

絶対に言わないが、ちゃんと役立っていたんだ、と思う

寺坂が眠ったことにより、撫子も眠くなってきたのか隣にいた吉田にもたれ掛かるようになる

これで、一件落着

安心して使える眠ることができた

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