下着泥棒を探せ
イトナ騒動の翌日の土曜日
E組は学校に呼ばれ、イトナの事や下着泥棒の事でのわかった事を聞かされた
烏間の部下が上に命令され、殺せんせーが犯人であるかのように盗むような事をしたらしい
何故撫子の下着を盗んだかというと、確実に信頼を失わせるために生徒の物も盗め、という指示に一番実行しやすいのがたまたま撫子の家だったというだけだった
基本撫子の近所は夜になると人通りは少なくなる、そして外に干してあり、家も撫子だけとなれば確かに取りやすいだろう
夜、外に洗濯を干すのはやめようと思ったの
もちろん、下着は返されたのだが、一つ足りない
「パンツは?」
「取っていないです、はい・・・」
部下は本当に申し訳なさそうに謝ってくれるが撫子にとって問題はパンツなのだ
正直戻ってこなくてもいいのだが、やはり犯人は探さないといけないと思う
本来本日は休みのため、一通りの説明が終わると解散となった
撫子はよし、と意気込む
「下着泥棒探し行ってくる」
「私も行くわ」
「おいこら待て」
がっ、と撫子と狭間の肩を掴み止めた寺坂
2人の顔は殺人者のそれだ
落ち着けと寺坂は自販機で買ったお茶を渡した
「つーか今更なんだけどよ、女子がパンツパンツ連呼しねーでくれよ」
「少しは恥じらいを持ってくれ」
「アンタ等理想の女子像が高過ぎじゃない」
「女なんて所詮こんなもんだよ」
「お前等が一般的な女子に纏まると思うな」
冷たい視線を2人に向けるが気にする様子はない
コイツらは、とため息を吐くが意味はなさない
「お前さ、そんなにこだわるもんだったのか?」
「いや、別に何となく」
「じゃぁもういいじゃねえかよ」
「いいわけないじゃない」
まぁ確かにと納得し始めた撫子にストップをかけるように狭間が口を開く
狭間は撫子の耳を塞いでから再び言葉を紡いだ
「この子の下着がもし変な事に使われたとしたら?間接的とはいえこの子が穢されるのよ?それを黙認しろというの?」
「お前の城戸への愛が重たすぎる」
「今に始まったことではない」
「何の話だ」
第三者の声に驚き振り返るとイトナの姿
聞かれたのか、と頭を抱える男ども
「何でお前ここいんだよ」
「何か面白い気配を感じ取った」
「面白く何かねーよ!」
「お前が言ったんだろ」
イトナはまっすぐ寺坂をみる
俺は何を言っただろうか、と寺坂は頭を悩ませたが答えはでない
そんな寺坂をみてイトナはバカかと言う
「なっ!」
「お前がアイツを殺すまではバカやってればいいって言ったんだろ」
「!」
「今からバカやるんだろ?」
皆が顔を見合わせる
「堀部くん、もう体調は大丈夫なの?」
「イトナでいい、昨日も名前だっただろ、あと体調はもう平気だ 」
「いや、昨日は、うん」
「イトナでいい、この際名字で呼んだら無視するからな」
「さいですか・・・」
昨日は皆イトナと呼んでいたから名前で読んでいたが撫子は基本名字呼びなのだ
どこか照れくさい
でも、これでイトナが寺坂グループの仲間入りとなった
新寺坂グループ最初のやるバカなことは撫子の下着の盗んだ犯人探しとなったのだった
***
「とりあえず律に頼んで殺せんせーの関係ないところでの下着泥棒の被害を調べてもらったの」
「見事に三門周辺だな」
「被害状況もどうやら撫子と同じくパンツのみ取られてるって感じみたい」
「何でパンツだけ」
「知らない、何でよ男子」
「聞くな女子」
視線をすっと逸らす
とりあえず二手に分かれよう、とグーパーをする
グーが寺坂、イトナ、撫子
パーが狭間、吉田、村松
「じゃぁ2時間後に駅前のドーナツ屋で」
「寺坂くんの面倒を見るのは任せて!」
「足を引っ張るなよ寺坂」
「俺が!お前らの!世話をすんの!」
寺坂子守りガンバ、と吉田が言い残しそれぞれ逆方向に足をすすめる
正直真昼間に下着泥棒が活動しているとは思わないが、飽きるまで付き合おう
寺坂は先に歩きだした撫子とイトナの後を追うように足を動かす
「にしてもみつからないねー」
歩いてかれこれ1時間半はたっただろう
そろそろ駅に向かうよう促すか
声を掛けようと口を開くが出てきたのは驚きを表現するような声
小さな交差点で人とぶつかってしまったのだ
自分の体格からしたら明らかに小さい女子がぶつかり、そのまま軽くふっとんでしまう
気づいた撫子とイトナが駆け寄った
「大丈夫?」
「寺坂、ちゃんと前を見ろ」
「悪いな」
ぶつかってきたのはそっちの方だ、と言いたいところだったが吹っ飛んだ相手を見ると申し訳なくなってくるので素直に謝る
こちらこそ不注意でした、と女子が顔を上げたところで撫子があ、と声を小さくもらした
「木虎ちゃん」
「城戸さん?」
「知り合いか?」
「夏の2人の事件の時に遅れた理由の子」
「あー、人助けマン」
「城戸は女だからウーマンだろ」
話が逸れ始めた2人を無視して撫子は木虎をみる
息が切れている
初めて会った時みたいに、だ
そういえばあの時は後ろから誰かがついてくるのを振り払っているような・・・
「藍、どうしたんだ?」
身長が高めの細身の男が立っていた
木虎の事を名前で呼ぶので親しいのだろうか
「兄です、すみません妹が何かしてしまいましたか?」
「あー、いえ」
「ちょっとぶつかっただけだ」
「それは、申し訳ない・・・藍、母さんが探してたぞ」
妹の代わりに謝り、そして木虎に帰るよう促す
木虎に手を差し伸ばしたが、その手は木虎に届く前に撫子によって弾かれた
「お、おい?」
「木虎ちゃん、大丈夫?」
「なにを、考えているのかな?」
「木虎ちゃんが怯えているのに、引き渡せるわけないじゃないですか」
「・・・それは、藍が母さんと喧嘩してしまって」
「お兄さん、ではないですよね?」
撫子の一言に男は凍りつき、寺坂とイトナは撫子と木虎を後ろに下がらせかばうように立つ
「な、んで」
「直感です、と言ったらふざけるなと言われそうなのでちゃんと説明しますね」
まずはまつ毛の長さ
まつ毛の長さは遺伝する
木虎が長いということは両親も長めなのだろう
まつ毛の長さは長い方が優勢
遺伝される確立は高い
次に耳の大きさだ
木虎は小さめ、男は福耳
耳たぶは大きい方が優勢である
ほかにも鼻の幅や鼻筋など、明らかに違いすぎるのだ
たまたまにしては確認できるものが異なりすぎる
本当に兄だとしたらかなり失礼な発言だが、木虎の表情と照らし合わせると兄ではないと裏付けているようにみえた
「何で、だよ」
男は小さく呟いた
「俺が好きだから会いに来てくれたんだろ?なのに追いかけたら逃げやがって、写真も撮ってあげた、電話も掛けてやったのに」
「なるほど、ストーカーですか」
ストーカー、という言葉に反応し、僕は違うと叫ぶ男
顔は美形な方なのに恐ろしい
だが、女の敵には容赦はしない
撫子に迷うことなく襲いかかる男に太刀打ちしようと立ち上がるが、立ち上がるだけで終わってしまった
寺坂が見事なラリアットをきめたのだ
「お前は戦う気満々でいんじゃねーよ」
「とりあえず警察だな」
寺坂の鞄に入っていたガムテープで腕を拘束
駅に向かう予定のため、とりあえずそのまま駅前の交番へと向かう
「あれ?綺羅々ちゃん?」
「撫子」
交番につくと、なんと狭間達がいた
どうやら狭間達はお目当ての下着泥棒を現行犯で捕まえたらしい
盗んでいた物もパンツオンリーだったので、間違いないだろう
「奇跡というのはあるのですね」
「これを奇跡と言っていいのかわからん」
少なからず、この2時間弱で二つの事件(というほど大きいのだろうか)を解決できたのだ
良かったのだと思うことにした
***
警察からは無理をするなと再三注意され、解放された
木虎の方はご両親が迎えに来るとのことだったので、前々から面識のある撫子が来るまで一緒に待ち、他は先にドーナツ屋へと向かった
「ありがとう、ございました」
「いえいえー」
木虎には後日証拠として今まで携帯にかかってきた通話記録や送り付けられた物を提出してもらうようだ
共に暮らしている祖父母には余計な心配は掛けられないし、父母は仕事で帰りが遅く相談できなかった
ずっと抱え込んでいたのだ
でもあの日
撫子と初めて会った日
もしかしたらこの人は、と縋ってしまったと言った
「もっと早く言ってくれればよかったのに」
「そんな、親しいわけではないのに・・・」
「じゃぁ私今日から藍って呼ぶから、撫子って呼んでよ」
「え」
「これで"親しい"関係になれたんじゃない?」
ね、と笑いかける
何かあったら連絡ちょうだいよ、連絡先も教えてんだし、と木虎の頭を撫でる
そこでようやく木虎の瞳から涙が零れ始めてきた
ずっと1人で誰にも相談できなかったことに気づき、解決してくれた
怖い気持ちから解放してくれた
木虎の口から嗚咽が漏れ始め、撫子は黙って木虎を抱きしめ頭を撫でる
大丈夫、大丈夫と言いながら##NAME1##は笑いかけたのだった
「藍!」
木虎の涙が落ち着きはじめた頃、木虎な母親と思わしき女性が到着した
涙の跡が見られる木虎に気づいてあげられなくてごめんね、と抱きしめ涙を流す女性
ちゃんと愛されている、大丈夫
こちらに向かって走ってくる男性も恐らく父親だろう
どことなく2人とも木虎に似ている
撫子は黙って立ち上がりその場から離れる
元々親が来るまでの付き添いだ
早くしないとドーナツを食べる前に解散になってしまいそうだ
「きどさ、撫子さん!」
撫子が黙って離れていくのに気づき呼び止める
「ありがとうございました!」
「・・・」
ぽかん、と目を開ける
木虎の横にいる女性も深々と頭を下げていた
「捕まえたのは友達だから今度機会が合ったらお礼言ってあげてよ」
「でもっ」
「今度は遊ぼ、またね」
バイバイ、とへらりと笑って今度こそドーナツ屋に向かう
「遅い」
「ごめんってー」
先に行ってもらっていたドーナツ屋へ着くと開口一番文句を言われた
野郎4人と細身女子1人で座っている異様な光景に苦笑いは忘れない
撫子は狭間の隣に座った
「どうだったよ」
「無事解決?かな?」
「何で疑問形なんだよ」
既に買ってもらっていたドーナツとアイスティーを食べながら先ほどの報告をする
「まさか下着泥棒探していたらストーカー事件解決するとかな」
「驚きだわ」
「そういや私のパンツは?」
「・・・城戸よ」
村松、吉田はいつもと違う雰囲気で真剣な顔で撫子を見つめる
「お前は知らなくていい」
「いや、私のものなんだけど」
「いいから何も気にせず手でも合わせておけ」
「うす」
目が真剣だったのでこのまま口をドーナツで塞いだ
チョコが美味しいな、と思いながらこっちをじーっと見てくるイトナに首を傾げる
「なに?」
「ん」
「あ、ありがとう」
イトナから差しだされた紙ナプキンで口元を拭く
イトナは満足そうに笑う
「これで寺坂グループ末っ子枠はお前だな」
「まっへ」
口に入っているドーナツを一旦飲み込んでからまた口を開く
「私まず末っ子ではないんだけど」
「いや、お前は末っ子だ」
「寺坂くんお口チャック」
1口大のドーナツを寺坂の口に突っ込む
「そもそもイトナくんが一番最後に入ってきたんだからイトナくんが末っ子だよ」
「俺は妹に憧れていた」
「え、そうなの?あ、いやまって、うん、わ、私も弟が」
「アンタ父親独占できないから1人っ子でいいって言ってたじゃない」
「綺羅々ちゃん!!」
「お前ら末っ子の双子でいいじゃねぇかもう」
くだらねー喧嘩はじめやがって、と寺坂はコーラ片手に文句を言う
まだ自分の分の金を払うあたり撫子の方が上な気はするが立場はイトナと同レベルだ
そのうち2人のことは"寺坂グループ末っコンビ"と呼ばれるようになることなる
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