従兄弟からの呼び出し

イトナ交えての寺坂グループでの騒動が合った週の月曜

寺坂グループに所属が決まったとはいえ、いまだイトナはクラスに馴染めているようにはみえなかった

寺坂グループにはガッツリ馴染んでいるのだが

寺坂をからかい、吉田と機械の話をし、村松に飯を強請り、狭間に本を進められ、撫子の弁当を強奪する

なんであいつら急に仲良くなってんだよ、と一件を知らないクラスメイト達は思う


「イトナくん何作ってんの?」

「戦車」

「おおー」

「興味あんのか?」

「少し」

「・・・やってみろ」


ハンダを渡され、戸惑うがイトナの指示通りにいじっていく

黙々と作業を進め、よし、と思い顔を上げるとうんうん、とイトナがうなづいてみせた


「上手いぞ」

「やったね」

「んだよ、城戸には優しいんだな」

「お兄ちゃんは妹に優しいもんだ」

「え、まだやってたのこれ、というか私のがお姉ちゃんだし」

「妹だろ」

「お姉ちゃん」

「妹」

「お姉ちゃん」

「双子だお前ら」


不毛な争いをはじめた二人にチョップを落とす

寺坂完全に保護者じゃねぇか、とクラス全員が思う

ここでお父さんと思わないのは撫子が父親以外のものを父親と言うこと思うことが泣くほど嫌だと知れ渡っているからだ


「城戸、もしお前が姉貴になりたいというなら昼の一つや二つ持ってこい」

「はい、どうぞ」

「流石姉さん、大好きだ」

「素早い手のひら返しね」


コイツらいったいどこまで仲良しになっているんだ

兄弟設定はいったいいつ決まったんだよ

悶々とツッコミを入れていく中、本日の授業も終わっていく

撫子と狭間はいそいそと教室を出ていく

なんとなく、その撫子の表情は曇っていた

***

兄さんが撫子を呼んでいる

ことの始まりは狭間のそんな言葉からだった

1人っ子の狭間が唯一兄さんと呼ぶ、従兄弟のお兄さん

家が近所で幼い頃よく遊んでくれた記憶がある

中学に上がった頃からはそのお兄さんも大学で忙しくなかなか会うことも出来なく疎遠になっていた

そんな兄として慕う者からの急な呼び出し

理由は一つだ

気が重たくなる


「ただいま」

「お邪魔します」

「おー、待ってたぞ」


出迎えてくれたのは狭間の母ではなくその呼び出した人物、東春秋だった

お久しぶりです、と撫子が頭を下げると慣れないから普段通りにしろ、とやんわりと言われた

既に疎遠となってしまった東だ

それにこれから言われることも怖い

それなりの対応の方がいいと思ったのだが狭間にも気持ち悪いと言われたので素のままでいくことにした


「でも東さん?が呼ぶなんて珍しいね」

「昔みたいに春兄でいいんだぞ?」

「そうよ、ダメ秋で充分じゃない」

「綺羅々ちゃん相変わらずだね」


二人で話す時は兄さんと呼ぶのに

それを伝えたらきっと狭間は不機嫌になるので黙っておく


「何か久々だな、本当に」

「でも春兄の話はよく綺羅々ちゃんから聞くよ、先週彼女に振られたとか」

「綺羅々、後でちょっとお話あるから」

「撫子、今日あんたんち泊まるわ」

「あいあいさー」


じとり、と痛いところをつかれた東は狭間を睨む

狭間はまったく気にしていないようでケロリと東の用意したケーキを食べていた


「ところで何で呼んだの?」

「あー、あのな」


お前、何でこの前屋根の上にいたんだ

人の笑顔ってこんなに怖いものなのか

今まで沢山見てきたはずなのに、初めて東の笑顔が怖いと思った


「は?屋根の上?アンタまさか」

「そんなに運動神経がいいならボーダーに入ればいいじゃないか、というか、危ないから運動神経よくても登るな」


見つけた時どれだけヒヤッとしたと思っているんだ、と東はため息混じりで言う

そんな東をみて撫子と狭間はほっ、と息をついた


「あー、うーん、ごめんなさい」

「次はそんなことしないように見張っとくから」

「ならいいんだが・・・あぁ、あとな」


実は、と東は話を進める

近界民不自然消失事件

門が開き、近界民もといトリオン兵が出てくるはずなのだが、出てくる間もなく一瞬にしてトリオン兵が消え去るのだ

トリオン兵の反応は出ているので門からこの地へ降りてきているのは確か

そんな状況が何回か続いているらしい

そして、偶然にもその現場に居合わせた隊員がいた

その隊員の記録している映像をみても黄色い何かがまとわりついてトリオン兵を消している様にしかみえなかった

黄色、と聞いてふと椚ヶ丘の方に出現した下着泥棒もそんなことを言われていたな、と思い出した東が今聞いている、というのがこの状況だと思わせたいのだ

だが撫子も狭間も鈍くはない

きっと相手は殺せんせーの存在に気づいている

それが曖昧になのか、それとも確信的なものなのかはわからないが

ふと、夏休み前に父親に話があると言われたことを撫子は思い出した

もしかしたらお父さんは・・・

ごくん、と撫子は息を呑む

まさか、そんな、いやでも

ボーダーは対象が近界民だとはいえ、戦闘必須の防衛機関だ

国は今藁にもすがる思いで殺せんせーを殺したいと思っているだろう

こんな中学生にすら殺すよう指示するのだ、ボーダーにだって・・・


「あぁ、そろそろ防衛任務だ」


東は時計をみて時間を確認してからソファーから立ち上がる

話の続きはまた今度な、と部屋から出ていく


「ヤバイ、よねこれ」

「殺せんせーと烏間先生に言わないと」

「・・・アンタは大丈夫なの?」

「・・・ごめん、正直わかんないや」


でもね、と撫子は言う

もし、殺せんせーを本当に殺せるなら

その時殺すのは

E組がいいなと思っているよ

撫子はそう言って笑うのだった

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