わかばパーク
「保育施設の園長さんを怪我させた?」
学校に行くと、テスト一週間前にも関わらず、どこか落ち込んでいるようなクラスメイトがいた
なんだろう、と同じく撫子と同じように不思議そうな顔をしている原に声を掛けたがやはりわからないようだ
生徒が全員集まったところで、烏間により赤羽、奥田、茅野、神崎、倉橋、竹林、原、そしえイトナ、狭間に撫子が隣の教室に呼ばれた
どうしたんだろう
見てみれば、呼ばれた者以外の生徒が皆気まずそうに下を向いていた
不安そうな顔持ちで隣の教室に行くと、そこに居たのは殺せんせー
そこで説明されたのは昨日の放課後のこと
昨日、フリーランニングで駅前まで行く、というある種の無謀に出てしまい、そこでわかばパークという保育施設の園長に怪我をさせてしまったらしい
入院期間は二週間
その間皆でその施設の手伝いを授業を放棄してやるという
あー、だから落ち込んでいるのか、と納得した
テスト一週間前、授業も無しで、関係ない生徒も連帯責任となればそりゃあ落ち込むか
「まぁ、仕方ないですよ」
「私も止められなかったしね」
「つか、何やってんのよ」
はあ、と呆れる狭間を宥めていると、殺せんせーが申し訳なさそうに言葉を続けた
「それと、皆には本当に申し訳ないのですが」
「どうしたの?」
「昨日、皆にビンタしまして・・・連帯責任と言った手前、平等にしないといけないので、あの、痛くしないので」
「・・・早くしろ」
イトナが痺れを切らして1歩前に出る
もっちり、という効果音が似合いそうなビンタをされ、全く痛くないが全くもって動きが遅すぎて若干変顔になってしまいそうだ
「では、皆さん、わかばパークへと向かいましょう」
「おー」
教室に行くとビクっ、といた面々の肩が上がったのがわかった
思った以上にわかりやすい
撫子は自分の席まで歩くと、席につく前に寺坂の後ろに立ち止まる
ぽんぽん、と寺坂の肩を叩く
寺坂は暫く時間を置いた後、決心したように息を吐いて叩かれた方に振り返り・・・
ふに
頬に人差し指がささった
「てめぇ・・・」
「今から子供達の面倒見に行くんでしょ?怖い顔してちゃダメだよ」
「・・・わーってるよ!!」
がたん、と音を立てて立ち上がる
そこに居たのは怒っているわけでもなく、どこか呆れ気味ではあるが優しく笑っているクラスメイト
「・・・悪かったな」
「いえいえ、ほら、頑張っていこー!!」
おー!
何お前が仕切ってんだ、と撫子に小突く寺坂
調子戻ってきたな、と安心する撫子だった
***
わかばパークにいくと、幼児から児童まで扱っいるだけあって午前であっても子供がいた
前もって説明を受けていたのか、子供達は中学校がいることに抵抗なく遊んでとせがんで来た
寺坂が無駄に子供達に噛まれている
「大丈夫?」
「おー、とりあえず相手すりゃいいんだろ?」
「ったく、何で私等まで」
「それは言わないって約束でしょー」
「嫌味の一つぐらい言わないと私らしく無いでしょ」
「・・・本当に悪い」
テストまでの二週間、勉強が出来ないのはつらい
うぐぐ、と寺坂が顔を顰める
「 勉強なんて家でこっそりやればいい・・・E組の秘密を守るための二週間労働か、賞金に対するコストと思えば安いものさ」
竹林が何分恰好いい事を言ったのだが、施設の悪ガキによってズボンを下ろされてしまい下が下着となってしまい格好がつかない
最終的に狭間がおもしろサーカス団の調教師としての監督責任だ、と納得してくれた
寺坂達は全くもって納得できていないが
「それにしても・・・」
大勢来たことにより、やはり警戒している子供もいるようだ
潮田達に突っかかる女の子がいた
施設の子供には「さくら姐さん」と呼ばれているようだが
「やべぇ、さくら姐さんがご機嫌ななめだ」
「あぁ」
「やられるそこの兄さん達」
「入所5年の最年長者・・・」
「学校の支配を拒み続ける事、実に2年」
「エリートニートのさくら姐さんに」
「お前ら急にスイッチ入ったな」
先程まで寺坂に噛み付いていた子達が急に解説しはじめて、吉田がツッコミをいれる
結局のところは不登校である
そういう子供も受け入れているのだろう
そうこうしているうちにさくらは箒を振り上げ、潮田に殴りかかろうとして・・・
べき
床が抜けて落ちた
「あーぁ、あそこの床傷んでるって言ったのに」
「悲しきかな、暴力では真の勝利は掴めない」
「お前らのキャラの方が掴めねーよ」
磯貝が見かねて保母に修繕はしないのか聞いたが、お金がなくてできない、と答えられた
待機児童や不登校児がいれば片っ端から格安で受け入れる園長
職員の給料もろくに払えず本人が一番働いているらしい
「ちょっと、既にボロボロなのに余計なことして壊さないでくれる」
「はぁ?アンタに関係ないでしょ」
「人の迷惑考えてって言ってんの」
癖のある長い髪の毛の女の子がさくらに突っかかる
雰囲気だけでもわかるが、仲は宜しくなさそうである
「右のさくらと左の双葉・・・」
「部屋の中心から右がさくら姐さんの、左が双葉姐さんのテリトリー」
「傷んでいたのは双葉姐さんのテリトリーだ、やべぇ、これは一波乱ありそうだぞ」
「兄さん達、逃げた方がいいぞ、この部屋全体が荒れていく」
「双葉姐さんを止められるのは幼馴染の駿兄さんだけだ」
「その駿兄さんも最近は来なくなったな」
「世知辛い世の中だぜ」
「お前らちゃんと世知辛いの意味わかってるか?」
喧嘩は辞めよう、と潮田が宥める
さくらはふん、と顔を反らし、双葉も身体を逆方向に向けるとスタスタと自分の良くいるポジションらしいテーブルが置いてある所まで行ってしまった
「いいか、あそこは誰も近づくな」
「先生すら近寄ったら威嚇攻撃されるからな」
「死にたくなけりゃ、関わらない事だな」
「もう既に俺はお前らと関わりたくない」
ゲンナリとしている吉田を労るように肩を叩く
ふと、視線を感じ、振り向くと双葉が撫子をじっと見ていた
視線がぶつかるとあからさまに反らされる
さて、私はあの子に何かしただろうか
「なぁ、皆」
磯貝の声に、意識はそっちに向かう
「この二週間で色々出来るんじゃないか?」
「・・・そう、だな」
「やれるだけやってみよう!」
自分達の出来ることを、出来るだけ全力で
まずはこの子供達だ
そこでまた、撫子の意識は双葉へと向かったのだった
***
小学生以下の子供達を楽しませるグループ
小学生達の勉強をみてあげる先生グループ
施設の修繕をするグループ
昼ご飯やオヤツ等を作るグループ
等など複数のグループに分かれ、行動を開始する
撫子は最初原たちと共にオヤツを作っていたのだが、それも作り配膳し終わったので、勉強を見てあげようと先にいた中村達に声を掛けた
「あれ?双葉ちゃんは?あそこで1人?」
「それが・・・」
「近づいたらボール投げられちゃって」
双葉の方を見ると確かに後ろの方に百均に売ってそうなカラフルなボールが装備されている
さくらがやめときなよ、と言った
「アイツ、昔何かあったみたいで人間不信ってやつなのよ」
「人間不信?」
「園長先生がお母さん?のお父さんみたいでそれでここに来させられてるらしいけど、仲良くする気ないなら来ないで欲しいわ」
「こら、そういうこと言わないの」
「うっさいわね、そういう人間は皆世の中のハズレ者にされるんでしょ」
睨んでくるさくらに困り果てる
後から潮田に聞いたことだが、どうやらさくら自身も学校で突然イジメにあってしまい、それが原因で不登校のようだ
さて、どうするか
双葉に渡そうと思ったクッキーだが、近づいたらボールを投げられるらしい
困ったな、と左側の境界線でうろちょろと不審者のようにしている
「何してんですか」
「え」
流石に自分を見ながら不審な動きをしているのは怪しいと思ったのか、声をかけられてしまった
えーと、と言葉を悩む撫子
「お、お菓子持って来たからお姉さんと楽しいことしない?」
もう完全に不審者というか痴女のような発言である
どうした城戸
声が聞こえていた勉強組が白い目で撫子を見ていた
「・・・いいよ」
「そうだよね、ダメだよえぇ?」
「!!?」
何で自分達にはボール投げつけてきたのに何で完全不審者な撫子は受け入れてんだ
しかもご丁寧に座布団まで用意しているし隣座らせているし
「お菓子」
「え?」
「お菓子、どれ」
「あ、え?」
撫子が持っていたクッキーは既にテーブルの上に既に置いた
なのに「どれ」とはどういう事なのだろうか
「どれが、お姉さんの作ったクッキー?」
「え?うーん、皆で作ったからなぁ」
確かに皆で作ったとはいえ、結局はそれぞれ1人1人が個人で作って一緒に焼いた、という感じではある
星が私が(ほぼほぼ)作ったやつだと伝えると双葉は星の形だけを手に取り食べ始める
「美味しい」
「あ、ありがとう・・・他のも美味しいよ?」
美味しいと絶対的に言える自信のある原の作った人形の形のクッキーを勧める
双葉は大人しくそのクッキーを手に取るとあろう事か撫子の口元に押し付けた
「はい」
「?、??」
「美味しい、んでしょ?」
これは食べた方が納得するのだろうか
撫子は大人しく粗食を始める
もぐもぐと食べていき、それを確認すると双葉は満足するように頷き、小学5年生の算数のドリルを取り出し勉強を教えるようせがんだ
勉強をする気はあるのか、と関心するも何で自分にだけこんなに懐くのだろうか
撫子は意味がわからない、と他の面々に助けを求めるが、誰も目を合わせてくれなかった
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