戦は目前

ボーダーへと乗り込むのが明日となった土曜日

テストやわかばパークのことで全くといっていいほど段取りが整っていなかったので、今日はそれをまとめる為に学校に来ていた

皆が教室にいる中、撫子は1人、職員室に向かっていた


「殺せんせー、いますか?」

「おや、城戸さん?どうかされましたか?」

「よかった、まだいた」


今日は殺せんせーは北極の中心でかき氷を作りに行った後色々まぁ出かける予定があったので会えてラッキーである


「ちょっと質問があって」

「質問ですか?」

「うん、あのさ・・・」


撫子はへらりと笑った


「アンタどこ行ってたのよ」

「ちょっと殺せんせーにしつもーん、のついでにいなくなったの確認してきたよ」

「悟られてないよな」

「悟っても暗殺計画を盗み聞くような野暮なことはしないでしょ、あの人なら」

「確かに」


じゃぁ始めるぞー、という磯貝の声にざわついていた教室が静かになる

視線を黒板に向ける


「まず、明日行く奴なんだけど」

「烏間先生がついてきてくれるんだよね」

「国はボーダーに一任しているようだが、内容によっては止めなければならない、俺は君たちの味方だ」

「磯貝くんと私は行く、よね?」

「うーん、ボーダーか・・・」


ボーダーという言葉に表情を歪めた磯貝

どうかしたのか、と片岡が聞くと磯貝は口を開いた


「俺、去年さ、ボーダー入隊試験に受かって落っこちたんだよ」

「受かったのに落ちたの?」

「そ、中学で唯一公にできるバイトじゃん?家貧乏だしまぁやりますって行くじゃん」

「試験は受かったんだよね?」

「そ、多分他の奴らよりもそこそこいい成績で、なのに特に詳しい理由を言われることも無く取り消された」


その後黙って受けたの母さんに怒られて危険な仕事にはつかないでくれと泣いて怒られたから別にもう気にしてはいないんだけど、と言う磯貝

撫子と狭間は目を見合わせてため息をついた


「ごめん磯貝くん、それ多分私のせいだ」

「は?城戸とボーダー何の関係あんだよ」

「大ありだわ」


すかさず答えた前原

岡島は磯貝のボーダーを理由不明で落ちた行から撫子の方をガン見していた


「言うタイミング逃した、ボーダーに城戸って人いるから調べてみてよ」


皆が次々に携帯を取り出しボーダーを調べ始める

ボーダーの城戸にたどり着くと、皆同じ写真を見ていた

顔に傷のある男

城戸正宗とある


「この人がどうかしたのかよ」

「その人が私のお父さん」

「へー、この人が城戸のお父さん・・・お父さん!!?」


全員が撫子と写真の男を見比べる

同じ名字でも全く気づけなかった

それほどその男と撫子は似ていなかったのだ


「え、ちょ、幼馴染の狭間さん」

「本当よ、この人が撫子パパ」

「え、何その違和感しか感じない言い方」

「お前・・・ヤクザの娘か何かかよ」

「限りなく一般人だよ」

「寺坂達は知ってたのかよ」

「一応」


マジかよ、と項垂れていくクラスメイト達

律がわざわざ撫子と写真の男の共通点を探し出すがもはやそんなことなどどうでもいいのだ


「昔は"撫子ちゃんはお父さんそっくりねぇ"ってよく言われたんだけどな、笑い方とか」

「笑うの!?お前の父ちゃん笑えるの!?」

「失礼だな、笑えるよ」

「撫子に"なんか知らない家に捻くれて帰ってきたんだけど"と言われた私よりは衝撃は少ないはずだから早く立ち直りなさいよ」

「捻くれて!?捻くれちゃったの!?」


もう嫌だ

頭を抱え始めた者が増えたのを確認し、寺坂は助け舟を出した


「コイツをボーダーに連れていくってなると下手すりゃ敵になるぜ」

「そうだよな・・・ファザコンだもんな」

「大丈夫、ボーダーの有利に動くかもしれないけれど敵にはならないよ」

「どういうことだよ」

「実はね・・・」


ボーダーが殺せんせーから手を引かなければならない理由

それを撫子は握っているのだ


「それで、皆にお願いがあるの」


いつになく真面目な表情の撫子

皆は真剣に話を聞く


「・・・城戸の案は最終手段だな」

「じゃぁ、とりあえず寺坂と狭間は明日参加ってことで」

「はぁ!!?んでだよ!」

「狭間は従兄弟がボーダーなんだろ?寺坂は城戸の保護者」

「ファイトー、寺坂」

「カルマも参加だからな」

「へーい」


話し合いの結果、委員長二人に撫子、狭間、寺坂、赤羽で行くことが決まった


「まぁ、妥当かな?」

「身内がいる狭間と城戸、頭が切れる赤羽、そして保護者の寺坂」

「保護者は先生だろうが!」

「E組での城戸の保護者は寺坂以外いないだろ」

「その場に保護者いるのに寺坂くんが保護者やらされるのね、城戸さんに関しては頼もしいけど」

「というか、いいの?私もしかしたら裏切るかもしれないよ?」

「それはないだろ」


寺坂が軽くではあるが撫子の頭を叩く

ぱしん、といい音がした


「つか、お前さっきタコと何話してたんだよ」

「こ、これはボーダーに売るための殺せんせー弱点だからダメ!」

「売る前に確認させろや!!」



わざとらしくファイルを隠す撫子から奪い取り、中身を確認する


「これ・・・」

「そんな」

「・・・お願い、これだけは私に任せて欲しい」


今日、仮定が確信に変わった

だから、お願いだから


「今日までの賭けなの」

「・・・大丈夫、なのか」

「・・・正直、わからない、でも、明日最終手段でこっちの力にするよ!」

「そうしないとこっちが困るわよ」


むぎゅー、と撫子の頬をひねり出す狭間


「じゃ、頼りにしているからな城戸!」

「明日何とか希望見えてきたかも!」

「校舎壊されるのは勘弁だもんな!」


ワイワイと雰囲気がいい方向に向いていく

でも、この拭いきれない胸騒ぎは何なのだろうか

狭間はこの不安な気持ちを胸に抱いたまま、撫子の手を強く握りしめた

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