仲直りは未定

「撫子ちゃん、ちょっといいかな?」


ノックを2回して返事を待つ

返事はない

迅はもう一度ノックをした


「撫子ちゃん?」


不審に思いドアノブに手をかけるが鍵が掛かっていて開けることが出来ない

なんで・・・


「撫子ちゃん!?撫子ちゃん!!」


ガタガタとドアノブを掴んで扉を揺らすが勿論鍵が掛かっているので開かない

さっきまで楽しそうにしていたのにどうして・・・

暫く扉を開けようと揺らしているとバンっ、と反対側からだろう扉を叩く音で動きを止めた


「撫子ちゃん」

「うるさいです」

「撫子ちゃん、俺君と話がしたいんだ」

「私は無いです」

「そんなこと言わないでよ」

「私今忙しいのでお引き取りください」


迅は引き下がらない

謝りたいんだ、と呟いた言葉が撫子に届いたかはわからないがとにかく謝ろう

ぐっ、と拳に力を入れて扉越しでも伝えなければならないと口を開いて・・・


「痛い!」


読み逃した

勢いよく開いた扉の先には撫子がむすっとした表情で迅を見ている


「謝らなくていいです」

「撫子ちゃん・・・」

「迅さんは本当に知らなかったんですもんね」


それは忍田や林藤も同じだと分かっている

だから謝らなくていいと撫子は言う

優しい子を俺は傷つけてしまったのか、と迅は再び罪悪感に苛まれる

やはり謝りたいと伝えると撫子はため息をついた


「建前がわかりませんか?」

「へ?」

「謝られたら許さないといけないから謝るなと言ってんです、仕方ない事だとは分かってますけど私謝られても許せる自信ないから怒りがおさまるまでほっといてと言ってんです」


冷たい視線

許せないという言葉

呆然とする迅を気にすることなく撫子は扉を閉める


「振られたのか、迅」

「陽太郎・・・どこでそんな言葉覚えてきたの」


ヨタヨタと近づいてきた陽太郎を抱き抱え、迅は背中を丸めながらリビングへと戻って行くのだつた

***

「ほらやっぱり」


賭けは私の勝ちね、とご飯を作りながら狭間は笑う

特に何もかけてはいないのだが


「賭けって?」

「撫子がアンタを許すかどうか」

「流石に謝ったら許してやるもんだと思ったんだがな」

「流石幼馴染ってとこかしら」

「あの子結構頑固なとこあるのよね」


それならそうと先に言って欲しかったと迅は思う

憎らしそうに狭間を睨みながらリビングに漂う夕飯の香りに腹が空腹を訴えていることを自覚する

今日は三日も何も食べずに眠っていた撫子の為にか胃に優しい、でも満足感を得られそうな料理のようだ


「撫子ちゃんは俺が嫌いですかね」

「アンタだけじゃなくてボーダーが嫌いよ、あの子は」

「え?そうなの?」

「そりゃぁあのファザコンから父親を取り上げるものは大体嫌いだから」

「それは仕方ない」

「むしろあのオッサンを家に帰らせるよう努力見せつければ仲良く慣れんじゃない?」

「それだ!」


迅はウキウキと正宗が早く帰れる日を模索しはじめる

そんなに撫子と仲良くなりたいのかこの男はと狭間は呆れていた


「でも、連絡入れるだけならすぐに戻ってくると思ったんだけど」

「連絡入れて小一時間説教してくるバカがいんのよ」


ニヤリと笑う狭間に小南と木崎はどういう事だろうと首を傾げる

ちょうどその頃の撫子はというと


「あの、本当に申し訳ございませんでした、はい」

『申し訳ございませんでしたで警察なんかいらねぇじゃねぇか』


狭間の言った通り寺坂に怒られている最中だった

律儀に床の上で正座して聞いている


『ぶっちゃけお前のお家事情を全部把握してるわけでもねぇし、あん時俺らが何かしてやれるとは思えねぇけどよぉ』


寺坂が自信なさげに言う

俺達は頼りねぇのかよ、と

あの日から撫子は誰とも連絡をとらなかった

撫子の事が聞けたのはイリーナからだけ

仲良くしていたはずなのに、なんで、ごちゃごちゃした気持ちが寺坂に襲いかかっていたのだ


「ごめん・・・」

『俺の舎弟ぐらい面倒みさせろや』

「舎弟じゃないもん」

『いいんだよ、舎弟で』

「えー、妹がいいなー、お兄ちゃーん」

『調子乗ってるとぶん殴るからな』


最後にもう一度、ふざけたことに対してすみませんでしたと謝って通話を切る

30分ほど説教されていたようだ

寺坂から電話が来る前に連絡を入れたE組グループLINEの方を見ると撫子が出てこなくなった当たりから「寺坂のスーパーお説教タイム」と赤羽がメッセージを送っていた

全くもってその通りであるコノヤロウ

撫子は明日は学校行くとだけメッセージを残すと電源を切る


「撫子、どう?」

「・・・スーパーお説教タイム今終わったよ」

「知ってたわよ」


くそう、何で皆わかるんだよ

撫子はブツブツと文句を言いながら夕飯が出来たと呼びに来た狭間の後ろを歩くのだった

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