志願書

「ありがとうございました」

「いや、じゃぁ学校頑張れよ」


撫子達が降りたのを確認した木崎は軍人が乗ってそうな厳つい車に乗ったまま、軽く片腕を上げて元来た道を戻っていく

あれが日本の19歳の男なのか、と撫子と狭間は呆然と眺めていた

ちなみに撫子の制服はイリーナが正宗に渡していたので無事着て登校している


「にしても小南がまさかの星輪だったとわね」

「頭いいんだね、ボーダーやってるのに凄いなー、時間あったら勉強教えてもらいたいな」

「アンタも充分いいでしょ頭」


校門を通りぬけ、E組校舎に続く山道へと向かう


「おーい!」

「あ、磯貝くん、前原くん」

「もう大丈夫なのか?城戸」

「うん、迷惑かけてごめんね」

「今回迷惑掛けたのはビッチと殺せんせー、城戸は城戸の親父に巻き込まれたもんだろ?」

「お陰様で親子仲は回復の兆しをみせております」


ぺこりとお辞儀をすると何故か磯貝と前原も頭を下げた

何やってんのよ、と狭間が一蹴し、ようやく山道を歩き出す


「そういや見たぜ、さっきなんかスゲー車で来てたろ」

「ボーダーの木崎さんって人の車、送ってくれたの」

「え?ボーダーと仲良くなったの?」

「まぁ、いい人だったから・・・うん」


若干名仲良くはなれなかった人物を思い出し撫子は後半ゴモゴモとした話し方になる

頭に疑問符を浮かべた2人を横目に狭間もため息を吐いた

どういう事なのか、磯貝が口を開けた時だ


「城戸おおおおおおお!!!」


大きな声をあげながら撫子に勢いよく走り出してきた寺坂により遮られる

撫子は驚いて寺坂の方に顔を向ける頃には寺坂の腕は撫子の首元まで来ており、見事なラリアットをくらった


「っ、あ!!?」

「てめぇ!!本当にいい加減にしろよ!!」

「死神さんの事はもうめっちくちゃ謝ったじゃん!!」

「そっちじゃねぇよ!!」


何だこれは!、と突き出してきたのはボーダー入隊の志願書

実はわざわざ木崎に頼んで寺坂の家のポストに朝入れてきたのだ


「え、もう見たの?早いね!!」

「早いね!!じゃねぇよ!!何なんだよこれは!!」

「え、私と綺羅々ちゃんが入隊予定なのに何で寺坂くんが入隊しないの?」

「何でそんな結論になっちゃったんだよ!!?」

「大丈夫、ちゃんと吉田くんや村松くん、イトナくんにも話すから」

「俺にもちゃんと話してからにしてくれねぇかなぁ?」


ぎちぎちと撫子の頭を鷲掴みする寺坂

痛い痛いと喚く撫子

なんか日常が戻ってきたな、と磯貝と前原は息を吐いた

撫子が居ないと寺坂グループの空気が重いのだ


「でも、何で寺坂に?」

「だって私のリーダーは寺坂くんだもん」


恐らく寺坂グループで一番寺坂を"リーダー"と思っているのは撫子だと狭間は思う

寺坂のバカに付き合う、という形なのは皆変わりはない

だが、撫子はそんな寺坂グループの形の中でもちゃんと寺坂を慕っていた

傍から見ても撫子の方が学力、戦闘センス等優れているのがわかる

だからこそ磯貝達寺坂グループに所属していない者はずっと謎だった

何故そこまでして寺坂を慕っていたのか


「ったく、ちゃんと後で説明しろよ」

「うん、ありがとう」


コイツら付き合ってんのか?

磯貝と前原は目配せしながら互いに問いかけ、再び視線を2人に戻す

あ、違う、あれは親子のそれ・・・と言ったら撫子は泣くので2人は兄妹のそれ、もしくは飼い主とちょっと躾はなってないけど飼い主大好きな犬だと思うことで納得した

***


教室に入ってきた殺せんせーを確認し、撫子は殺せんせーと声をかける

殺せんせーも撫子を見て足(触手)を止めた


「城戸さん、もうお身体の方は大丈夫なのですか?」

「はい、本当にごめんなさい」

「先生も気づいてあげれなかった、先生にも否があります」


ですがね、と殺せんせーは続ける


「ここにいる皆が城戸さんの味方なんです、今回の件は先生に話せない理由もあったようですが、先生でなくても仲間がいるんです、仲間を信じてください」

「・・・うん」

「城戸さんに涙は似合いませんよ!」

「殺せんせーが城戸ちゃん泣かせたー」

「これは教育委員会に報告しなければ」

「え、待って!?本当に泣き止んでください城戸さん!!」

「っ、く、ふふふ」

「笑ってる!!?」


笑うことで震える体を抑えながら自分の席に戻る

笑ってると分かっているが皆が皆殺せんせーをからかう様に弄り始めた


「あー、話を進めたいんだが?」


烏間の声に全員がぴしっ、と声を出すのを止める

その横にイリーナがいたのに気づき、撫子は「え?」と声を上げた

静かな空間に撫子の声が響いたので全員が撫子を見る

そして撫子の視線の先にいって、納得した

イリーナは今までの露出の高い服ではなく、胸元も足も隠すような清楚な服装になっていたのだ

髪型も変わって、ポニーテールになっている


「ビッチ先生変わったよね」

「うん、なんか可愛くなった」

「お前のナチュラルに女口説き始めるのは前原よりも問題だと思う」

「別に口説き始めてはいないよ!?思ったことを言ってるだけで!」

「そっちもそっちで問題だわ!!」

「そろそろ話を進めたいんだが!!」


烏間の怒号に漸く本当に静かになる


「えー、では、皆さんに進路相談の事でお話があります」

「もうそんな時期か」

「進路相談は来週になります、皆さんの将来に関わる大切な事ですので決まってる人も決まってない人もキチンと先生と一緒に考えましょう」

「将来かー」

「やばい私まだ決まってないや」


それぞれに反応を示す中、殺せんせーは撫子の方を見て口を開く


「城戸さんは寺坂くんや狭間さんを巻き込まない様にしてあげてくださいね」


ボーダーに引きずり込もうとしているのがバレている

横と前からの視線にいたたまれなく撫子は苦笑いを浮かべた

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