ボーダー潜入大作戦
「では、城戸さん」
お話をしましょうか
生徒の将来を考えて真っ直ぐと撫子を見つめる殺せんせーに、撫子は少し緊張した面持ちで見つめ返した
「どうだった?」
「まだね、決まってないって素直に言ってきたよ」
困ったように笑う撫子にお疲れ、と返す狭間
狭間は以前聞いたように図書館司書になりたいと伝えたそうだ
「寺坂くんはー?」
「・・・政治家」
「は?アンタが?」
「おー!!凄い頑張って!!」
ありえないという表情のまま寺坂を見る狭間にうるせーと騒いでもいないのに文句をいう寺坂
撫子は凄い凄いと言ってるだけ
結局そこに吉田、村松、イトナが加わり何時ものメンバーで話す事になる
この3人はそれぞれ実家を継ぐことが目標のようだ
寺坂グループで撫子だけが将来決まってないことに少しだけ焦りを感じてしまう
「私本当にどうしよう」
「一番なりたいことを断られてる感じだもんな」
「つか、お前の親父さんも頑固だよなー」
「まぁ、城戸の父親だもんな」
「どういう意味!?」
ケラケラと笑う吉田と村松に抗議しつつ、なんとなく一人だけで置いて行かれてる気がしてテンションが下がっていく
別にやりたい事がないわけではない
だがそれは進路というよりは自身がやりたいという希望的未来のようなものであり、ほぼ不可能な望みである
「まーたなんかくだらないこと考えてるでしょ」
「痛い」
狭間にデコピンされ、鼻を摘まれる
じとりと睨まれ撫子はただ真っ直ぐ見つめ返すだけだった
「バカなんだから、本当に」
何も聞きはしない
この幼馴染のことは悲しいことに何でもわかってしまう
そして、それを止めることはできないと狭間は分かっていた
「・・・無茶はしないでよ」
「え?」
「こっちの話」
ペチンと頭を叩かれ「突然の暴力!?」と喚き出す撫子をひと通り笑った後、最後の面談が終わったのか殺せんせーが入ってきた
「皆さん色々悩み考え、そして未来へ進んでいく、大変素晴らしいと思います」
殺せんせーは何故かニヤニヤしながら触手でメモとペンをもったまま
何を考えているのだろうか
「ところで誰も恋愛相談が無かったのですが皆さん本当によろしいのでしょうか?」
「あったとしてもアンタには絶対言わないでしょうね」
スパンと言い放ったのはイリーナだった
そりゃぁ恋愛小説とか書くと意気込んでいる奴に恋愛相談はしたくない
「他校の子でもこの際いいんですよ!!ね!!」
「知るか」
「つか、先生は何かないわけー?」
「・・・これで本日のHRは終了です、」
自分の話しになるとそそくさと居なくなっていく殺せんせー
扱いも慣れてきたよな、と思いながら撫子は既に荷物の纏まっている鞄を持つ
「で、いくの?」
「そりゃぁ」
「どこ行くんだよ」
「ボーダー」
ニヤリ
撫子と狭間が、口を揃えてそう告げた
***
「ありがとね、小南さん」
「別に構わないわよ」
まさか自分がボーダー基地に入ることになるとはな、とイトナは思った
撫子、狭間、寺坂三名がボーダーに入ると話していたのを聞き、面白そうだと付いてきたのだ
ちなみに吉田と村松は将来の予定が明確な為ボーダーには入らないと断られた
イトナ自身も家を継ぐ予定があるのだが、ボーダーと連携出来る程の技術を持てば安泰かもしれないと思い付いてきたのだ
入るならエンジニア、だが正直寺坂達と行動するのも悪くない
そう思っている
「で、4人でいいわけ?」
「うん、書類とかも皆書いてきた・・・私以外は」
「印鑑どこ探しても無かったのよね?」
「何かを察知したのかいつもしまってる場所から無くなってたよ」
はぁ、ため息をつく
狭間は東の事もあり、すんなりと
寺坂はお前の自由だから勝手にしろと言われたらしい
無理はするな、という言葉も添えて
イトナは勝手に印鑑を引っ張り出して勝手に書いてきたのだが
「本来正式入隊は1月だけどボーダーに入る為の試験が近々あるから上手く行けばそれに滑り込めると思うわ」
「じゃぁそれに間に合わせる為にお父さんにお願いしないといけないのか」
「上手くいくの?」
「だ、駄々をこねるのは得意だよ!!?」
「駄々をこねるって・・・」
本当に大丈夫だろうか
頭が痛くなり始めた小南だが触れない事にした
「とにかく、城戸司令に会うにはまず司令室に行かないと」
「いや、会わなくてもいいから判子欲しい」
「え・・・」
「お父さん大好き人間が急にどうした」
「バカかお前らは!お父さんに会って説得されたらそこでアウトだ!!」
「バカはお前だよ」
基地前で作戦を練るべく話すが一向に解決法が見つからない
どうするか
頭を悩み始めた時だ
「何しているんだ、お前達は」
「・・・」
どうやら外に出ていたらしい正宗が、撫子の後ろに立っていた
「いや、別に」
「ほう」
じー、と撫子を見つめ始めた正宗に、撫子はウロウロと視線を動かす
皆撫子と目を合わせようとはしない
「残念だ、教えてくれたら今日は撫子の好きなケーキでも買って帰ろうと思ったのだが」
「帰ってくるの!あのね!」
「はいストーっプ」
ぐい、と口を抑えられズルズルと正宗から撫子を離す寺坂と狭間
それをイトナがついて行き、小南は正宗を近づけまいと立ちふさがる
「何言おうとしてんだお前は!」
「家に帰ってくれるなら何でも言うよ!!」
「ファザコンが行き過ぎるとケーキじゃなくて父親帰ってくることに釣られるんだな」
「判子押してもらう為に来たのにボーダー入るってバレたら速攻アウトでしょ!」
「まぁ、アウトだな」
視線を下にこそこそと話していたせいか、後ろに正宗が立っていることに気づかなかった
というか小南はどうした
「扱いやすいのも問題だな」
遠くで小南が誰かと話しているのが見える
トリオン体に換装したのか、髪も短くなっていた
え、嘘だろ
「とにかくここまで来たんだ話ぐらいは聞いてやる」
「本当に?」
「話だけだ」
ギロリと効果音がつきそうな目付きで睨まれる
と、思うのは寺坂とイトナぐらいで、撫子と狭間は「はーい」となんとも気の抜けた声を出したのだった
***
城戸正宗の後ろを歩く見知らぬ4人の子供に、周りの人間は興味津々だった
殺せんせーの一件は、人目が付かぬように案内されたためほとんどの者が知らない
だからこの中に城戸正宗の娘がいるなんて誰も思わないだろう
チラチラと視線を感じる中、エレベーターに乗るとようやく息を吐いた
「え、なんであんなに見られるの?」
「さぁ?」
「小南さん置いてきたけど大丈夫かな?」
それぞれに思ったことを話し始めるのをみて、マイペースだなぁと狭間は思う
今までだったらこんなにもみられたらイライラしてきていたかもしれない
見られる事への劣等感がなくなったのだろうか
「この階は上層部それぞれの部屋やA級交えての会議室があるだけだからあまり気負いする必要はない・・・してなさそうだがな」
「え、じゃぁお父さんの腕に抱きついてもいいの?」
「欲望を少しは抑えなさい、何しにきたのよ」
「あ、そうだった」
エレベーターを出てすぐの曲がり角
止まった正宗の真後ろにいた撫子は背中に顔をぶつけた
「どうしたの?」
「城戸さん、後ろの子達なにー?」
ふわふわとした髪の毛の男がこちらを興味ありげに見ていた
隣には忍田の姿もあり、撫子は正宗の服を掴むと忍田を睨んだ
「すまないな、忍田くん」
「原因分かったらもう何も言えません」
本当に嫌われてるなぁ、と少し落ち込みながらも以前見た者、初めて見る者がいて忍田も首を傾げた
目配せして何事なのか問おうとすると、正宗はため息をついた
「ボーダーの書類に私の判が欲しいらしい」
「え!なんで知ってるの!?」
「聞いてたからだ」
だからこうして連れていってるんだろう
正宗は小さく息を吐く
正宗の言葉の意味が理解出来なくて、4人は顔を見合わせる
「丁度いい、太刀川お前これからランク戦する予定ないか」
「あ、これから風間さんとありますよ」
「少し待ってもらって構わないか、コイツ等に見せたい」
正宗はそれだけ告げるとこんどこそ司令室へと入る
撫子達は顔を見合わせ、中へと入っていく
「で、結局誰なの?」
「城戸さんに一番親しそうに話してたのが城戸さんの娘の撫子さんだ」
「へー、城戸さんの娘・・・娘!?」
司令室の扉と忍田の顔を見合わせながら驚いた表情をする太刀川
「城戸さんって隠し子いたの!?」
「そうだな・・・最近まで知らなかった」
忍田が遠い目をする
太刀川はどんまい、と笑いながら模擬戦スペースへと足を運んだのだのだった
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