夜と女の子

あの後、家についたのは7時を回っていた

どうせ父親は帰っていないだろうがやる事はたくさん残っている

撫子は少し駆け足で家に向かう


「わっ」

「きゃっ」


どんっ、とぶつかる

前髪を真ん中で分けたショートカットの女の子

ぶつかった衝撃で尻餅をついた女の子に慌てて手を差しのべる


「大丈夫・・・では、なさそうだね」


走っていたことで服の裾を捲っていたのだろう

白い腕から見えたのは青い痣

ところどころ擦り傷もみえる


「っ、」

「おいで、私の家近いから」


後を隠し、撫子を気にしながらも後ろからから来る何かに怯えているようだ


「大丈夫、おいで」


少し強引に立ち上がらせ女の子の足にも傷があるのを確認すると横抱きにして走り出す

流石に今屋根の上を走るわけにはいかないので女の子に負担がかからないようあまり上下に揺らさないように走る

自分の家に着けばもうこっちのものだ

急いで玄関を閉め、鍵を掛けた


「あのっ」

「流石にここまでは無理でしょ」


走りながら追いかける気配を巻いてきた

少なからずここは安全のはずだ


「手当しよう」

「・・・お願い、します」


部屋の電気をつけ、リビングに入るよう促した

リビングに荷物を放り込み女の子をソファに座らせ救急箱を漁り出す

傷を見た限りだと病院に行く程ではなさそうだが不安だ


「あの」

「名前は?」

「え、」

「名前なんていうの?私は城戸撫子」


包帯を巻き終わり、頭を撫でてあげながら問いかける

女の子は零すように「木虎藍、です」と答えた


「木虎ちゃんはお腹空いてる?」

「・・・は?」

「私お腹空いちゃった」


撫子はえへ、と笑って見せた

***

冷蔵から取り出した肉じゃがをレンジで温めテーブルに置く

肉じゃがだけでは物足りないので簡単に作った味噌汁とほうれん草のおひたしもプラスした


「あの」

「木虎ちゃんさ、食べれないものとかある?私ネギ苦手だから基本いれないよ」

「城戸さん」

「ご飯炊けてないから冷凍してるやつだけど白米と炊き込みご飯のどっちが・・・」

「あのっ!!」


この子も大きな声が出せるのか、と思った

顔を真っ赤にさせて困ったような睨むような表情を作る木虎


「なんで、こんなこと」

「お腹空いたから」

「なら私帰ります」

「食べてきなよ」

「これ以上ご迷惑おかけするわけには」

「じゃぁ私の我侭聞いてくれないかな?一人でご飯って美味しくないんだよね」


用意しちゃったし、とテーブルを指さす

それをみてため息を吐くとわかりました、と大人しく椅子に座った

撫子はそれを確認するとラップに包んだご飯を温め始めた


「聞かないんですか?」

「何を?」

「その、何であんな時間に・・・とか」

「聞いてほしいの?」

「・・・いえ」

「なら、聞かないよ」


ピー、とレンジから音がしたごはんを取り出し茶碗にわける

そして木虎の前に置くと隣に座る


「どうぞ、残りものだけど」

「いただきます」


箸をとり、一口食べる

それを飲み込むとまた一口、一口と箸を進めていく


「おいひいです」

「よかった」


箸を進める木虎を見てから自分も箸をとる

そのまま特に会話もなく食事を終え、時計を見ると8時を回っていた


「送るよ、家はどこ?」

「え、でも」

「女の子がひとり歩き危険だよ」


大規模侵攻がおこってからこの町は治安が悪くなった

だが女のひとり歩きは撫子も一緒なのでは、と思ったがこの人なら大丈夫なのでは、という安心感が芽生えたためか、素直にお願いしますと応えていた

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