スズが真希、狗巻、パンダと出会ってから数ヶ月が経った頃…

呪術高専にまた新たな人物がやって来た。

名を乙骨憂太。

後に五条から"自分と並ぶ術師になる"とまで言わしめる才能の持ち主だ。

だがこの時はまだ何も知らず、あらゆる物事に脅えて過ごしている弱き少年。

まずはこの少年とスズの出会いから見てみることにしよう。





第1話 呪いの子





「聞いたか?今日くる転校生、同級生クラスメイト4人をロッカーに詰めたんだと。」

「殺したの?」

「ツナマヨ。」

「いや、重傷らしい。」

「ふぅん…ま、生意気ならシメるまでよ。」

「おかか。」


4人目の仲間になるかもしれない人物について話しながら揃って教室へ向かっている1年生チーム。

そこにスズの姿はない。

彼女がいるのは呪符で囲まれた謎の空間…

隣には当然のように師匠である五条の姿があった。

そして2人の前には、イスの上で膝を抱える1人の少年がいた。


「これは何かな?乙骨憂太君。」

「ナイフ…だったものです。」

「すごい…グニャグニャになってる。」

「死のうとしました。でも里香ちゃんに邪魔されました。」

「暗いね。今日から新しい学校だよ?」


終始俯きながらボソボソと喋る乙骨の様子に、顔を見合わせるスズと五条。

そんな2人の視線にも気づかない彼は、また静かに話し始めた。


「行きません。もう誰も傷つけたくありません。だからもう外には出ません。」

「でも…1人は寂しいよ?ね、スズ?」

「はい…!ここには同じような悩みを抱えた人もたくさんいます。外の学校よりずっと過ごしやすいと思います。」

「そうだよ。それに君にかかった呪いは、使い方次第で人を助けることもできる。

 力の使い方を学びなさい。全てを投げ出すのは、それからでも遅くはないだろう。」


------
----
--


五条の後ろをスズと並んで歩く転校生・乙骨。

高専の名物兄妹の説得のお陰で何とか外に出てきた転校生だったが、まだオドオドした態度は改善されない。

スズが必死に言葉をかけ励ましている間に、一行は教室の前に到着した。

兄が妹へ少し目配せをしてから、先に中へと入る。


「転校生を紹介しやす!!!テンション上げて、みんな!!!」

「「「…」」」

「上げてよ。」

「随分尖った奴らしいじゃん。そんな奴のために空気作りなんてごめんだね。」

「しゃけ。」「…」

「フー…ま、いっか。…入っといでー!!」

「スズちゃん…何かものすごく冷めた空気を感じるんだけど…」

「(もうちょっと上手くやってよ、先生…!)だ、大丈夫です!皆さん優しい方ですから!」


スズに背中を押され、教室内へと一歩足を踏み入れた乙骨だったが…

入って自己紹介をした途端、真希達は一斉に攻撃態勢に入った。


「乙骨憂太です。よろしくお願いします。」

「これなんかの試験?…おい、オマエ呪われてるぞ。ここは呪いを学ぶ場だ。呪われてる奴がくる所じゃねーよ。」

「スズ、危ないからこっち来てろ。」


パンダにそう言われながら引っ張られ、その背中に庇われるように場所を移したスズ。

教え子達の機敏な反応に満足そうに笑みを見せると、五条は呪術高専の特色について話し始める。

呪術高専は、呪いを祓うために呪いを学ぶ場所だということを…


「(事前に言ってよ!!)」

「「「(今教えたの!?)」」」

「(メンゴ!!)」

「(もう先生は…)」

「あっ、早く離れた方がいいよ。」

「「「?」」」

「スズはこっちおいで〜」

「え、あ、はい。」

「「「!」」」

「ゆう"だを"ををを…」

「待って!!里香ちゃん!!」

「虐めるな!!」


五条の言葉を合図にしたかのように、突如黒板から大きな手が伸びてきたかと思うと、次の瞬間…!

その手が真希達に向かって来たのだった。



- 1 -

*前次#


ページ:

第0章 目次へ

第1章 目次へ

第2章 目次へ

第3章 目次へ

第4章 目次へ

第5章 目次へ

第6章 目次へ

章選択画面へ

home