とある日の呪術高専…
自身の執務室でパソコンと向き合う五条の姿があった。
珍しく真面目な顔で作業をしている彼だったが、時折画面から目を外し、部屋の中央に置かれている応接セットを見つめる。
そこには、同じようにパソコンを前に一生懸命仕事をしている想い人がいるのだ。
締切目前にも関わらず書類作成が一向に終わっていない師匠を助けるため、オフを返上して馳せ参じたわけである。
そんな2人が、"ガチャン"という音とともに執務室に閉じ込められてしまう。
ドアの下にある隙間から差し込まれた1枚の紙には、ここを出るための条件が書かれていた。
膝に乗って向かい合わないと出られない部屋 -五条編-
「ちょっとトイレ行ってくる〜」
「はーい」
「…一緒行く?」
「何言ってるんですか!行かないですよ!」
視線はパソコンに向けたまま、スズはそう言って作業を続ける。
それほど切羽詰まった状況なのだが、それを引き起こした本人は構ってもらえず不満そうにドアの方へ歩いて行く。
だがその表情が一転して笑顔に。彼の手には例の紙が握られていた。
「…スズ〜」
「何ですか〜?」
「俺ら閉じ込められちゃったみたい」
「あ、そうなんですか……え?今、何て?」
「これ見て」
不穏な内容が聞こえた気がして顔を上げたスズの前に、楽しそうな表情の五条が紙を差し出した。
内容を読んだ瞬間、スズは師匠の表情の理由と面倒事に巻き込まれたことを理解した。
「どうしよっか?」
「どうしようって…や、やるしかないですよね」
「わ〜スズちゃん積極的〜」
「だ、だって!やらないと先生トイレ行けないし、仕事にも集中できないじゃないですか…!」
「そうだよね〜じゃあ俺どうしたらいい?」
「それは!よ、読めば分かるでしょ!」
「え〜俺言ってくんなきゃ分かんな〜い」
ふざけた調子でそう言いながら、スズの隣に腰を下ろす五条。
その時点で、自分の上にスズが乗れば条件クリアであると分かっているのは明白だった。
でもそこは大人な子供の代名詞・五条…ただで終わらせるわけはない。
スズが恥ずかしそうにもごもごしているのを、愛おしそうに眺めていた。
「……膝に、の、乗っても…いいですか…?」
「いいよ。おいで?」
「うー…分かってたくせに…」
「ふっ。だってスズのそういう顔見たかったんだもん」
ドキドキMAXで膝に乗って来た想い人を、五条はしっかりと支える。
そして視線を合わせようとしないスズの頬に優しく手を添えるのだった。
「悟先生…」
「スズ…」
「はっ!そうだ。もう開いてるから、先生トイレ行って来てください!」
「もう〜今いい雰囲気だったよね?」
「だってトイレ行くって…」
「あれ嘘。サボろうと思って言っただけ」
「えっ、ズルい!」
「だから誘ったじゃん。"一緒行く?"って」
「分かりにくいですよ!」
「じゃあ…一緒にサボろ?」
「…作業終わるかな」
「終わるよ。俺とスズなら」
「…うん」
「天気いいしさ、外でランチでもしよっか」
「はい!」
すっかりご機嫌になったスズを連れて、五条はにこやかに部屋を出る。
その夜、遅くまで執務室から賑やかな声が聞こえてきたのは…言うまでもない。
fin.
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