帝光中学校 バスケットボール部

部員数は100を超え 全中3連覇を誇る 超強豪校


その輝かしい歴史の中でも特に「最強」と呼ばれ無敗を誇った…

10年に1人の天才が5人同時にいた世代は 「キセキの世代」と言われている


…が、「キセキの世代」には奇妙な噂があった

誰も知らない 試合記録も無い

にも関わらず 天才5人が一目置いていた選手がもう1人

幻の6人目シックスマンがいた…と





第1Q「黒子はボクです」





春。

全国の学校が新入生を迎える季節。


ここ…私立誠凛高等学校にも、桜が咲き乱れる中、初々しい1年生が入学した。

無事に入学式が終わり、教室で担任から一通りの説明を受ける生徒達。

そのすべてが終了した後、彼らは正門まで続く「部活動勧誘ロード」を通って帰ることになる。

これがまたなかなかのイベントであり、先輩達の強烈な勧誘に1年生達は若干引き気味だ。


そんな中、この「部活動勧誘ロード」を笑顔で歩く1人の少女がいる。

名前は木下スズ。

先程入学式を終えたばかりの、初々しい1年生の1人である。

入るかどうか迷っている他の生徒達とは違い、スズはある部活に入ることを入学前から決めていた。

部活ブース案内を眺め、自分のお目当ての部を見つけた彼女は、足取りも軽くそのブースへと歩みを進める。

向かうは…男子バスケットボール部!



スズがバスケ部のブースへ到着すると、そこにはショートカットの可愛らしい女性が座っていた。

女性相手ということで少し安心したスズは、相変わらずの笑顔で彼女に声をかける。


「すみません!」

「はーい!…って、女の子?」

「あの、マネージャー希望なんですけど…募集してますか?」

「あぁ、マネージャー!特に今回募集はかけてないけど、今マネいないから、やってくれるなら大歓迎よ!」

「やった!でも…今、いない…んですか?マネージャー。」

「フッフッフ。私はマネじゃないのよ〜カ・ン・ト・ク!」

「えっ!カントク!?すごっ…!」


入部届に必要事項を記入しながら話すスズと、自分の役職をカントクと紹介した先輩・相田リコは、今会ったばかりとは思えないほど仲良く楽しそうに話していた。

女性同士ということはもちろん、お互い明るく活発な性格故に気が合うのだろう。

まだ会って数十分だが、もう"スズ"・"リコ先輩"と呼ぶ仲になっている。

と、リコは不意にスズが記入する入部届を覗き込む。


「あら。スズ、中学時代もバスケ部のマネだったの?」

「はい!だからドリンク作りとかスコアつけるのとか、ある程度のことはできます!」

「うわー助かる!やるじゃない、スズ!」

「当然っす!」

「あははっ!…あれ、でも今1年ってことは、キセキの世代とは戦ったことあるの?」

「いや、それがないんです。名前はもちろん知ってますけど…」

「じゃあ全然面識はないんだ。」

「はい…すみません、お役に立てなくて。」

「! 何言ってんのよ!スズみたいな元気な子がマネやってくれるだけで十分よ。」


そう言って、ポンポンとスズの頭を撫でるリコ。

優しい姉御のような先輩に、スズもすっかり懐いている様子。

こんな具合に女子2人がワイワイと話しているところへ、男子生徒が2人やってきた。


「来ました、新入生…」

「バスケ部ってここか?」

「わぁっ!?」


弱々しい姿で帰ってきたのは、リコと一緒に勧誘活動をしていた2年の小金井慎二。

そしてもう1人は…


「あ、火神…君?」

「ん?あー木下…だっけ?」

「うん。覚えててくれたんだ!」

「自己紹介んとき、バスケ好きだって言ってただろ?だから頭に残ってた。」

「なるほど〜」

「ちょ、ちょっとスズ…し、知り合い…?」

「はい!同じクラスなんです。」

「あ、そう…なんだ。(小金井君、連れて…来られとるやんけー!?)」


スズは至って普通に話していたが、リコから見ると、小金井が連れて来た生徒はまるで目の前に野生の虎がいるかのような迫力と威圧感を持っていた。

そしてその虎少年はスズの横に座り、リコ&小金井と向かい合う。


「…で、知ってると思うけど、誠凛ウチは去年できたばっかの新設校なの。上級生はまだ2年だけだから、キミみたいに体格よければすぐに…」

「そーゆーのいいよ。紙くれ。」

「え?」

「名前書いたら帰る。」


そう言って、出されたお茶を飲みながらサラサラと入部届を埋めていく火神。

記入された入部届をリコと一緒に見たスズは、彼の経歴に驚く。


「えっ。火神君って、中学アメリカだったの!?」

「おぅ。」

「すごいっ!一緒に部活やるの、超楽しみ!」

「! …そうか。」


スズから言われた台詞に少し驚いた表情を見せた後、彼は何とも複雑な顔を見せた。

それは何かを諦めたような、失望しているような顔で…

その表情に気づいたスズの視線を火神はスッと受け流し、席を立つ。

そんな彼に、今度はリコが話しかける。


「あれ?志望動機はなし…?」

「あ、本当だ。」

「…別にねーよ。どーせ日本のバスケなんて、どこも一緒だろ。」


またしてもさっきスズに見せたような表情になった火神は、そう言ってブースを後にした。


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火神が去った後のブース。

先程帰って来た小金井に、リコはスズを紹介した。

明日からの部活を待たず、早速スズにはマネとしてブースの中に入ってもらっているのだ。


「小金井君、この子新しくマネージャーとして入ってくれたスズ。」

「木下スズです。よろしくお願いします!」

「よろしく!いや〜やっぱり専門でサポートしてくれる人がいると安心だわ。」

「本当よね〜頼りにしてるわよ、スズ!」

「はいっ!任せてください!」

「あ〜スズみたいな子だったらいいんだけど、あいつは…こっ…こえ〜!!あれで高一!?」

「てゆーか、首根っこ掴まれて帰って来た理由が知りたいわ…」

「でもリコ先輩、火神君のあの表情見ました…?」

「ええ。何なのかしらね、あれは…」


と、机に突っ伏していた小金井が1枚の紙を見つける。

それは集め忘れていた入部届で…

名前の欄には"黒子テツヤ"と書かれている。


「黒子君も入ったんだ!」

「もしかしてこの子も同じクラス?」

「はい!」

「ふーん。…って、帝光バスケ部出身!?」

「ええっ!?あの有名な!?」

「嘘…黒子君が!?」

「しかも今年1年ってことは、"キセキの世代"の!?うわーなんでそんな金の卵の顔忘れたんだ、私!!」

「さっきの奴はアメリカ帰りだし…今年、1年ヤバい!?」

「くーっ!面白くなりそう!!」


両手をグッと空に伸ばすスズは、そう言って明るい笑顔を見せた。

このお元気娘が黒子の、火神の、そして誠凛メンバーの大きな支えとなるのだが…

それはまだもう少し先のお話…!



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