今私の目の前に広がっている場所は、今まで自分がいた部屋でも、家の近所でもなくて…

来たことのない、でもどこか見覚えのある…そんな不思議な場所だった。





標的2 最悪な出会い方





目を開けて最初に見えたのは、砂場で楽しそうに遊ぶ子供達の姿だった。

砂のお城を作ったり、穴を掘ったりと、何とも無邪気に遊んでいる。

その周りには、お母さん達が談笑しながら我が子を見守っていて…

どうやら自分が、"とある町にある、とある公園のベンチに座っている"ということが分かったわけです。


そしてここに来る前のことを考え合わせると、当然のことながらここはREBORNの世界ってことになるんだよね。

なるほど、なるほど。

つまりこれは…


「トリップしたってことだね。」


あれ、何か私意外と冷静。

実感が湧いてないからかな…?


でもトリップといえば、あらゆる夢小説でお馴染みになりつつある"特殊能力"よね。

トリップ前は普通の子でも、トリップした後はちょっと身体能力上がってるとかさ!

それが確認できれば、もうちょっと興奮してくるかも…!


そこで私は、自分に以前とは違う何かが身についていないかの確認を始めた。

何かビームらしきものが出ないか…

トリップ前には出来なかった逆立ちや側転が出来るようになってないか…

周りが驚くほどの跳躍力やダッシュ力がないか…

そりゃもういろいろやってみたんだけど、結果はすべて残念なものだったんだ。


「(つまり私は、この世界に来る前と何も変わらないままトリップしちゃったと…)」


自分の姿を見れば、パジャマ代わりに来ていたジャージ姿。

今回の神様は、私の着ているものさえ変えてくれなかったってことか。

これじゃ興奮できないよね…


まぁ、いきなり"特殊能力"なんてもらっても戸惑うだろうし、私にはこういう感じの方がちょうどいいのかも!

そう前向きに思考が落ち着いたところで、私はふらりと公園の出入り口の方へ足を向けた。


「(ここでボーっとしててもしょうがないし、とりあえず歩いてみるか…)」


幸いなことに靴は履いてたし、天気もいいし、いろいろ考えるのは後にしよっ!



公園の前には、結構大きな道路が広がっていた。

そこを歩いてるのは散歩中のおじいちゃん・おばあちゃんとか、さっきのママさん達みたいな子連れの人とか、私と同じ青春真っ盛りの高校生もいる。


「(こんなに明るい時間に高校生がいるってことは、今日は土曜日かな。)」


そんな予想をしつつ、ふと視線を左の方に向けた瞬間…!

私は自分の心臓が、これまでにないぐらい早くなっているのを感じた。


「(えっ、ちょ、ちょっと待って!!あれってもしかしなくても…!)」


視線の先には、楽しそうに話しながら歩く3人の男子中学生の姿。

一番背の低い子を真ん中にして、左に一番背の高い子、右に2人の間ぐらいの身長の子…

私は彼らの名前を知っている。

左から山本武、沢田綱吉、獄寺隼人だ。


頭の中でその名前が出てきた途端、今まで冷静だったのが嘘のように興奮状態になり、REBORNの世界に来たんだっていう実感もムクムクと湧いてきて…!

どうにかして声をかけられないものかと考えまくって、1歩前に足を出したところ…

地面の窪んでいた部分に足を引っ掛け、そのまま膝で道路に着地したのです。

これがまた地味に痛くて、まさか彼らが既に自分の目の前にまで来てるなんて思わなかったんだ。


「! い、痛い…」

「だ、大丈夫っスか?」


その言葉と共に私の視界に入ってきたのは、スッと差しだされたキレイな右手だった。

持ち主の顔を確認すれば、それは紛れもなく山本武、その人で…

目の前で転んだ見知らぬ人に対しては絶対見せないだろ!というレベルの爽やかスマイルを向けてくれていたんだ。

ここで私の興奮メーターは見事に振り切った。


"ありがとうございます。"と言いながら彼の右手を握り、立たせてもらう。

そしてその右手を離さずに、むしろ両手で包み込んで、私は自分の興奮を言葉にして伝えてしまったんです。


「…やまもっちゃん!ヤバい、本物マジでカッコイイ!!その爽やかスマイル最高っ!

 獄寺くんも!君は本当に中学生なの!?美しくて、色っぽくて直視出来ないよっ!

 そしてツナ!何なんだ、君は!もうどうしようもないぐらい可愛い!!癒されるっ!」

「「「! な、何でオレらの名前知って…」」」


いくら興奮メーターが振り切っても、やっちゃいけないことはあるよね。

名前呼んで、おまけに初対面で"カッコイイ"だの"癒される"だのって…

これじゃストーカーとして警察に突き出されても文句は言えない。

挙句の果てに手まで握っているとあっては、余罪としてセクハラも追加される可能性がある。

だって自分が彼らの立場だったら、間違いなく目の前の奴を変人だと思うもん。



こんな具合に、私の彼らとの出会いは最悪なものだったんだ。

でも物語は、まだまだ始まったばかり…



to be continued...



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