それから少しして、私の肩から顔を上げた犬ちゃん。

彼の顔はまだ少し涙目だったけど、どこかスッキリしたような感じだった。


「…大丈夫?」

「…大丈夫びょん…いつまでも泣いてらんねーし。」

「ふふっ。そうだね。」


照れて視線を逸らす犬ちゃんは、何だかとても可愛くて…!

私は思わず見惚れてしまった。

と、その時…


「おい、スズー!!どこいんだー!?返事しろー!」

「! 隼人!?」


地上から、突然私の名前を呼ぶイケメンボイスが聞こえてきた。

恐らくいなくなった私を探しに来てくれたんだろう。

あの声の感じだと、だいぶお怒りの状態で…


「…スズ、あいつらに何も言ってこなかったんれすか?」

「うん…」

「なら早く戻った方がいいびょん。」

「でも「オレなら大丈夫。だから行くびょん!」

「…分かった。」


そう言って渋々ながら頷き、戻ろうと後ろを振り向くと、降りる時に使ったロープが消えていた。

…いや、違うな。"消えた"っていうか、"解けた"って言った方がいいかも。

地上に結んでた部分が解けたらしく、私と地上を繋ぐものがなくなってしまっていた。


「どうしよう。これじゃ戻れないんだけど…」

「…オレに考えがあるびょん!」

「え、何?」

「んーと…あ、あった。そこにある"コングチャンネル"取ってくらさい。」

「あ、これ?」

「そーそー。それをオレの口の中に入れるんれす。」


犬ちゃんの言う通り口の中に歯を入れると、手足が瞬く間にゴリラのように変化した。

今の彼なら縛ってあるロープを引きちぎって、ここから逃げられる…

でもそういう素振りを全く見せず、相変わらず縛られたままの犬ちゃん。


「…犬ちゃん、今の犬ちゃんなら簡単に逃げられるよ?逃げないの?」

「逃げないし。」

「…何で?」

「…信用してくれたから。」

「え?」

「スズは…チャンネルつけてもオレが暴れないって思ったから、渡してくれたんでしょ?」

「うん。」

「だからオレは、そんなスズの気持ちに応えたいんれす。」

「犬ちゃん…!」

「ししっ。スズ、涙目になってる〜!」

「な、なってないから…!」

「ほら、泣いてないで早くオレの足に乗るびょん!」

「あ、足?」


何をするのか不安になりながらも、犬ちゃんの足に座る私。

これで一体どうやって地上に上がるのかしら…


「オレがこのまま蹴り上げて、スズを上に送るんす。」

「なるほど!んー何かケガしそうだけど……よろしく!」

「あい!」

「…あと……ありがとっ!」

「…友達助けるのは、当たり前のことっしょ?」

「! うん…!じゃあ…またね、犬ちゃん!」


私の言葉に可愛らしい笑顔を向けてくれた後、犬ちゃんは私を無事に地上へと蹴り上げてくれた。

そして地上に降り立った私を迎えてくれたのは…

予想を遥かに超えた怒りレベルの隼人坊ちゃまだった。


「あ、いた!!スズ…お前、今までどこいたんだよ!?」

「え、あの…ちょ、ちょっと…わ、忘れ物しちゃって…」

「ったく…」

「あの…ご、ごめんなさい。」

「…謝るぐらいだったら、1人でフラフラすんじゃねーよ。」


そう言いながら私の肩に頭を乗せた隼人は、心底疲れている様子で…

こんな状態になるまで、探してくれたんだね。


「…ありがとう、隼人。」

「…べ、別に。」


きっと赤くなってるであろう隼人の顔は見えなかったけど、私の顔も同じぐらい赤いからこれで良かったのかも…!


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私は今、隼人と一緒に皆がいる場所へ向かっている。

散々迷った結果、私は歩きながらさっきの犬ちゃんとの出来事を隼人に話した。

仲間なのに隠し事なんて、何か嫌だったから…


「…というわけなんです。」

「なるほどな〜」

「……やっぱ怒ってる?」

「へ?何でオレが怒んなきゃいけねんだよ。」

「いや、だって…味方が敵を助けるのって、やっぱルール違反でしょ…?」

「まぁ確かにルール違反かもしんねーけどよ……スズがそうしたいと思ってやったんなら、オレはいいと思うぜ?」

「隼人…」

「それに…そんなことぐらいで、オレはスズのこと怒ったりしねーよ。

 だからこれからも自分の思った通りに動けよな!あっ、ただし…1人では動くな!おめーは何かと危なっかしいんだからよ。」


そう言ってフッと笑顔を見せる隼人は、ものすごくカッコ良くて…!

本当年下とは思えないほどの色気が溢れてるわけ。

だから私は思わず隼人に抱きついてしまった。


「顔もカッコ良けりゃ、言うこともカッコイイんだからー!!」

「バカ!お、おまっ…離せっつの!!」

「ふふっ!隼人ちゃん照れてる〜!」

「! う、うるせんだよ!アホスズ!!」


そんな感じでツンデレな彼をからかいながら歩いていると、何やら向こうから声が聞こえてきた。

私の耳に狂いがなければ、あれはビアンキの声だ…!


「千紫毒万紅!!」


その言葉と共に、どうやら敵が倒れたみたいで…

ビアンキが戦ってるってことは、相手はM・M…だよね。

もう戦い終わったんだ…!


「ビアンキー!!」

「! スズ!無事だったのね!」

「うん!心配かけてごめんなさい。ビアンキこそ、ケガ大丈夫?」

「えぇ、大丈夫よ。私はスズとリボーンが無事なら、それでいいの。」

「ビアンキ…!」

「スズ〜急にいなくなるから、ビックリしたんだぜ?」

「武。ごめんね…」

「スズがいねーと、何か落ち着かねーんだ。だから…もう離れんなよ?」

「! は、はい…!」

「全く…もう1人でフラフラしちゃダメだよ!?…オレ、スズがケガするの嫌だからね?」

「ツナ…うん、約束する!」

「スズの肩が1番乗り心地がいいんだ。もうどこにも行くんじゃねーぞ。」

「了解しました!リボーン様!」


少しいなくなっただけで、こんなにも心配してくれる仲間がいる。

それってすごく幸せなことだよね…!



しかしそんな幸せをぶち壊す奴がやってきた。

見た目だけでなく中身も最悪な、変態バーズの登場である。



to be continued...



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