"いつでも傍にいるからね…碇"

スズに名前を呼ばれた時、自分がガキだった頃のことを思い出した。

桃から逃げてた俺を拾ってくれた天麻と、その仲間たちのことを。

俺にとって、初めてできた最高の仲間。

ずっと…ずっと一緒にいれると思ってた。

あの日、桃に襲撃されるまでは…

辺りが落ち着いた頃、俺を逃がしてくれた天麻たちを捜して森を進んだ。

木も草も全部が灰になった荒地の真ん中に、顔の区別もつかねぇぐらい焼け爛れた仲間が転がってた。

こんなツラい思いするなら…もう仲間なんて…ほしくない…

そうか…俺は…俺はまた…仲間を失うのが怖いんだ…

今左手に感じてる温もりと、天使みてぇな笑顔が…目の前からなくなるのが嫌なんだ…

俺は、今までと呼び方を変えて、また1つ歩み寄って来てくれたスズの手を強く握り返した。





第59話 華厳の滝跡地研究所➈





「矢颪!まだ戦う気あんなら参戦してこい!」

「……スズ。ケガ、治してくれるか?」

「うん!もちろん」


スズが治療している間、矢颪は自分自身と向き合う。

あの日以来冷えきっていた己の心を、再び熱くしてくれた一ノ瀬仲間

あの日仲間を失ってから1歩も進めていなかった自分を、優しく受け入れてくれたスズ仲間

自分を仲間と言ってくれる彼らのために戦いたい…!

矢颪の真っ直ぐな想いに応えるように、今は亡き仲間・梶木天麻から1つの鍵が手渡された。


------
----
--


一ノ瀬が相手にしているのは、高速で動く双子の桃太郎。

ただでさえ2対1で不利な戦いであるのに、相手の動きが早過ぎてまともに攻撃ができずにいた。

そんな彼を守るように、突如バイクが走り込んで来る。

驚く一ノ瀬とスズの前に現れたのは、血蝕解放である雷速・改に跨った矢颪であった。


「矢颪…!」

「(あれが碇の本当の血蝕解放…!)」

「何あれ、兄さん」

「バイクだな、弟よ」

「お前メチャクソかっけぇバイク乗ってんじゃん!」

「四季…俺は…仲間しか乗せねぇ主義だ…乗ってくれるか?」

「! ヘボい運転すんじゃねぇぞ!」


そう言いながら互いに拳をぶつけ合う一ノ瀬と矢颪を、スズは優しい笑顔で見つめていた。



- 141 -

*前次#


ページ:

第1章 目次へ

第2章 目次へ

第3章 目次へ

第4章 目次へ

第5章 目次へ

第6章 目次へ

短編 目次へ

章選択画面へ

home